2014年5月。
今から1年ほど前、僕はこの「夢と夕陽」の連載を始めた。
YOSHIKI CLASSICAL WORLD TOUR 2014 と、全世界ベストアルバムの発売がきっかけだった。
世界的な活動がいよいよ本格的になり始めたYOSHIKI、そしてX JAPAN・・・という現実が嬉しかったのと、メンバーと共に僕が人生を傾けた大切な作品、「BLUE BLOOD」が25周年を迎えた直後という感慨もあって、僕は「夢と夕陽」の連載でX JAPANとYOSHIKIの「輝く未来」について熱い想いを綴り始めた。
そんなある日、ニコ生番組を共に進行しているあくあ君が僕に話しかけ、とても重要なことを教えてくれた。
「それにしても、今 ART OF LIFE っていうのが感慨深いですよね。」
「えっ?どういうこと?」
「まず、海外で評価が高いですよね」
「えっ、ほんと!? そうなの? 凄いね、それは。嬉しいなあ・・・」
「クラシカルのソロコンサートで演奏したのが印象的でしたよね。」
「なるほど…」
「それに最近は、 X JAPANのライブでもART OF LIFEの演奏が当たり前になりつつありますけど。・・・以前は違いましたから」
「そうなんだ・・・。」
「ART OF LIFE発表直後に一度ライブがあったんですけど、それから解散まで、まるで封印されたように演奏されませんでしたから」
「そういうことか・・・。で、最近はART OF LIFEの演奏が多い、と・・・」
「はい。復活後、X JAPANのライブでは定番曲なんですよね」
確かに僕の中でも、特別な意味はないけれど、「ART OF LIFE」の存在は、心の奥深い所にしまってあった。
もしかしたら「ART OF LIFE」がそのまま、YOSHIKIのある時期の人生・・・だからかも知れない。
その後の様々な出来事を想うと・・・。
そこは、あくあ君の想いも同じだろう。
だからこそ、最近になって積極的に「ART OF LIFE」を演奏するYOSHIKIの姿勢に、何か特別なものを感じ取ったのだろう。
さらに、僕の知っているYOSHIKIなら、あれだけ演奏が大変な曲を敢えて選ぶ背景に、ファンやオーディエンスの熱い反応、という要素がないはずはない。
こういった事実に加え、YouTubeでのあらゆる国の人々からの熱いコメントや、ニコニコ動画、NAVERまとめの取り上げられ方などを重ね合わせれば、「ART OF LIFE」という作品が、国内を始め、海外のユーザーにも、今というこのタイミングできちんと評価されつつある、という見方は、おそらく間違いないだろう。
「ART OF LIFE」という、YOSHIKIの人生がそのまま生きた芸術作品となっている曲が、世界的に評価されつつある・・・。
これが事実なら、僕が心から待ち望んできた「YOSHIKIの生む100年残る作品が世界中に伝わり、X JAPANが世界的なアーティストとして多くの人々に夢を与える」という『YOSHIKIとX JAPANの輝く未来』は、そう遠くないだろう、と思ったのだ。
やがて僕が想いを連載に綴っているうちに、横浜アリーナ公演が始まり、その直後には、とうとう待望のマジソンスクエアガーデン公演が実現した。
最高のパフォーマンスを見せてもらったマジソンスクエアガーデン公演の興奮と、そこで得た強い確信をもとに、僕はさらに強い想いを込めて『YOSHIKIとX JAPANの輝く未来』について文を綴った。
10月に入ってからこのチャンネルでのニコ生も、再び快進撃を始めた X JAPANの動きに合わせて賑わいが増し、未来が見え始めた喜びを分かち合う人達のエネルギーが番組を暖かく包んでいた。
そして僕は、とうとうはっきりと「YOSHIKIとX JAPANの輝く未来」が現実となり、きちんと始まっていることを、文章で、そして声で伝え始めた。
そう、僕にはそれが確信に変わったのだった。
だから僕は、この連載の一区切りとして、第30回目にこう締めくくった。
『 僕は、X JAPANとYOSHIKIの輝く未来は、奇跡だと思う
その奇跡が今、実現し始めたのは、長い長い時間と
その時間に負けなかったメンバー、そして運命共同体の、人生の力ゆえだと思う
思えば、この奇跡と出会えたのも、たった1曲を聴いた瞬間から始まったのだ
それが音楽の素晴らしさだ
音楽に人生を賭けてきたTOSHI、PATA、HIDE、TAIJI、HEATH、SUGIZO
そして YOSHIKI・・・
7人のバンドは、日本で初めて世界的なバンドとなった
そしてその「輝く未来」を
バンドを支える運命共同体も
同じように手にすることができたのだ』
HIDEを失い、TOSHIが去った結果、時計の針を止めてしまった悲しい時を経て、途方もない苦しみから、ファンの声援によって復活を目指したYOSHIKIが、再びX JAPANというバンドを始動させたのは、悲しみが始まってから、実に10年という月日の果てだった。
けれどその10年間という長い時間は、誰も知らない間に、X JAPANというバンドの存在と、YOSHIKIという才能が生む100年残る名曲を、世界中に伝えていくゆりかごの役目を果たしていた。
1990年から1991年にかけてファンが起こした、あの奇跡と同じだった。
ただ、今回その奇跡は、世界的な規模で起きている。
言葉の壁を、国境の壁を、そして民族性の壁を超えて、奇跡が起き続けている。
そんな奇跡を支えている作品の、大事なひとつが「ART OF LIFE」である、という事実は、僕の心を強く打った。
理由はきっとわかって頂けるだろう。
そう、「ART OF LIFE」がYOSHIKIの人生そのものだからだ。
人生がそのまま作品になっているからだ。
そんな作品が、世界中で正しく評価され始めている・・・?
あくあ君からそんな見方を聞いた時、僕が心底嬉しかったのは、そのことがYOSHIKI自身をどれだけ勇気づけてくれるだろう・・・と感じたからだ。
僕にはわかる。