それにしても、レコーディングというのは不思議な時間だ。

ライブ演奏にはライブ演奏の良さもあるけれど、スタジオレコーディングでは、大切な作品をイメージ通りきちんと届けるために、その作品が必要としている音を厳選して一音一音、レコーディングしていく。

イメージの通りに、そして場合によってはイメージ以上の音が録れることを期待しながら…。

前にも書いた通り、妥協を一切せず、望むレコーディングを徹底するとはいえ、無駄に時間をかけることは避ける方針だから、レコーディングに入る前に、アレンジの確認は済ませてある。

けれどレコーディングには不思議な力があって、特別に良いプレイを録っているうちに新たなイメージが湧き、アレンジが変わっていくこともある。

アレンジというのはジグゾーパズルのように絡み合っているから、そうなると様々な部分の再検証も必要になってくる。

でも、素晴らしいプレイをレコーディングできた事から生まれたイマジネーションを止めることは避けたいから、アレンジの変更にも果敢に立ち向かっていくことになる。

つまりレコーディングには、完成しているものを譜面通りに録るだけではなく、「創作」という一面もあるわけだ。

そうやって変更されたアレンジによって、作品は事前に創られたデモテープよりも遥かに素晴らしい仕上がりとなる。

ボーカル以外のオケが全て録り終わったあと、エンジニアに仮Mixをしてもらって聴く時の感動は格別だ。