さて、確かに僕はレコーディング中のメンバーの気持ちや精神状態に気を配っていた。

そして、メンバーの緊張感を和らげるよう工夫していた。

ところが、そんな僕がそうやってメンバーのために色々やっているから、僕が経験豊かなベテラン・サウンドプロデューサーなのか、というと、全くそうではない。

そう、新人なのだ。

だから僕はレコーディングをうまい具合に進めていくために、それなりの努力をした。

何をしたのか。

レコーディングに関してわからないことがひとつもなくなるよう、あらゆることをエンジニアに聞きまくったのだ。

学生時代、プロのミュージシャンでレコーディングセッションの現場も経験していたことから、レコーディングの本質はわかっていた。

何がいい演奏なのか・・・も、おそらく基本的にはわかっていた。

けれど、僕がXのメンバーと共に向かい合っていたのは、トップクラスのミュージシャンやアーティストが日々演奏と収録をしている、日本のトップクラスのスタジオでのレコーディング。

たとえ本質がわかっていても、経験のほとんどない僕には、わからないことや知らないことが沢山あった。

だから、ひたすら聞きまくったのだ。

なぜそういうテクニックを使うのか。

なぜそのエフェクターを使うのか。

なぜその機材を選ぶのか。

なぜその手順でレコーディングを進めるのか。





そうやってひたすら質問を続けていくうちに、僕はだんだんわかっていった。