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【夢と夕陽】 ⑲ ファンが見つめるXというバンド
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【夢と夕陽】 ⑲ ファンが見つめるXというバンド

2014-09-23 02:40

     
     2010年  夏。
     
     電話の向こうから聴こえてくるTAIJIの声はとても明るかった。
     
     「…そうなんですよー。だからさぁ、津田さん、絶対観に来て欲しいんだよねぇ。」
     
     「そうだったんだ・・・。いや、最高じゃんか。すごいじゃん、たいちゃん。。ああ……俺、めちゃ嬉しいよ、それ。」

     「ははは、そうでしょ、そうなの。だから、絶対観に来てね。待ってるから。ああ、津田さん、ちょっとさぁー、としくんに代わるから…」
     
     TAIJIから電話を代わったTOSHIは笑いながら、そういうわけで、久しぶりにTAIJIも出るんで、是非観に来てやって下さい、チケットを用意しておきますからー、と、これまたとても明るい声で僕に説明した。
     
     了解、ありがとう、すごく楽しみにしてる、そう言って電話を切った僕は、明るいTAIJIの声に安心した。
     
     ちょうど半年前の冬、僕のアトリエへ突然遊びに来てくれたTAIJIは元気で、作品と音にこだわる、いかにもTAIJIらしい音楽的な話をたくさんしてくれたけど、身体がベストじゃないからさぁ・・・と話す時だけ、とても寂しそうな表情を浮かべていたからだ。
     電話の向こうから聞こえた元気な声には、これから18年振りに昔のメンバーとライブをやるんだ、という喜びがこもっていた。
     
     きっとTOSHIと楽しく話していて、その流れで盛り上がりながら、僕に電話をして来たんだろうな、そんな状況も鮮やかにイメージできたから、僕は暖かい気持ちに包まれた。
        懐かしい、あの頃の記憶と重なるからだ。
     
     (そうだ、TAIJI、その調子だよ。気持ちが明るくなれば、身体もきっと今より良くなる…)心でタイジにそう伝えて、日産スタジアムの公演を僕は心待ちにした。
     
     8月14日。野外のライブらしく、湿気を帯びた真夏の暑い空気が、広い会場でライブを待ち望む6万人の期待を包み込んでいた。
     
     開演間近、関係者から渡されたチケットを係員に見せ、誘導してもらった僕は驚いた。
     
     その席が、今まで経験したことのない、限りなくステージに近い席だったからだ。

     確かにスタッフであった頃は、会場のどこにいようがフリーパスだったけれど、一度観客が入場したら、観客のためのエリアはファンの神聖な場所として、近づくことはなかったからだ。
     
     席につくと、僕は公演前のステージを、後ろを振り向いて6万人がぎっしり詰まった広い会場を、次に上を仰いで夕暮れが近づく空を、そして周りを見回して近くの席にいる興奮を抑えきれない表情のファン達の様子を、そしてまたステージを…
     
     そうやって、何度も何度も、会場全体の雰囲気を確認した。
     
     そして、いよいよ本格的に世界展開をスタートした新しいX JAPANのライブと、18年振りにメンバーと共にステージに立つTAIJIに期待しながら、僕の意識は瞬間、ちょうど20年前の1990年にタイムスリップしていた。
     
     
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