全国ツアーに入るまでにメンバーとたくさん会って話しておこう、と考えた僕は、タイミングをみては色々な現場に出かけていった。

 そのうちに、だんだんバンドの生態のようなものがわかってきた。
 
 リハーサルはどのように始まり、終わった後はどうなるのか。

 打ち合わせはどのように行われるのか。
 
 メンバーが個々の動きをする時、どんな組み合わせで行動をするのか。
 
 メンバーとスタッフの関係はどんな雰囲気なのか。(インディーズであっても、Xにはマネージャーやローディー、テクニシャンなど、多くのスタッフがいて行動を共にしていた)
 
 どんなタイミングで、どう酒を飲む状態に突入するのか。
 
 そういった、バンドならではの生態のようなものは、Xというバンドが人を惹きつける不思議な魅力をそのまま物語っていた。
 
 そう、その生態を観察しているだけで楽しいのだ。
 
 メンバーがピュアな人間性をそのままむき出しにして行動するため、常に笑が絶えない一方で、常に怒号が炸裂する危険も潜んでいる。
 
 「事件」のようなことが何かと起きがちだし、それが収まるまでの様子がまた興味をそそられる。

 ただ、何が起きてもそこにはちゃんとした理由があるから、そのストーリーを追っていくと、また新たなバンドの性質やヒストリーが見えてきたりする。
 
 そんな風にバンドの生態を少しずつ理解しながら、メンバーとは音楽的な会話を進めていった。