「Mayer Hawthorne」
アメリカ合衆国ミシガン州出身のシンガー、プロデューサー。往年のソウルミュージックやブラックミュージックを懐古的にそのまま現代で再現するかのような音楽スタイルで人気を博す。
<TSUYOSHI評>
あまりメイヤー・ホーソーンに明るくないので、Apple Musicの上位曲順にチェック。
「Love Like That」
分かりやすい曲展開とギターやベースの音色のチョイス、ブレイク時などに現れるローランド初期TRシリーズの打ち込みモロ出し具合がただただあの頃のホール&オーツ。メイヤーさんにはダリル・ホールのような強烈な歌の個性は無い。そのかわりサウンド面に関してはとてもこだわりをもって音楽を制作していると思われる。彼はサウンド嗜好的にファンクの要素も持ち合わせていると思われ、そのためホール&オーツには皆無なグルーヴ感がリフに現れていて素敵。あとホール&オーツのような”いなたさ”が無く、ちゃんと計算されたフレーズやアレンジを施しているので、どこかしらスティーリー・ダンぽくも感じるのだが。なんにせよブラック・ミュージックの影響云々の前に、ブラック・ミュージックに影響を受けた白人のミュージシャンが作った音楽を上手く再現できるのはやはり白人の方なんだろうなぁと、この曲を聴いて感じた次第。
「Her Favorite Song」
クリス・ブラウンのFine Chinaがネットでリークされた後、この曲の特徴であるスプリングリバーヴのエフェクトを施した歪んだベースラインにインスパイアを受けたであろう曲達を一時期ちょいちょい耳にした記憶があるが、この曲もたしかそうだったような。とはいえこの曲に関してはファンク要素に終始することなく、ジェシー・ウェアによる清涼感ある歌声などによって独特な雰囲気の曲になっている。メイヤーさんの歌で成り立っている印象は薄い。サウンドありき。
「Crime feat. Kendrick Lamar」
ケンドリック・ラマーがカッコいい。
「Back Street Lover」
とにかくスティーリー・ダン。
「Make Her Mine」
カーティス・メイフィールド在籍時インプレッションズの『People Get Ready』をモータウン風味に。
「The Walk」
≒スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズの『The Tracks Of My Tears』。
「Shiny & New」
イントロが素敵。一瞬だけスタイリスティックスの『Betcha By Golly, Wow』が出現。我慢しきれず最後には”You make me feel brand new”って歌っちゃってるし。
「Maybe So, Maybe No」
イントロはダニー・ハサウェイのあれ。曲が始まるとストリート臭強めのアイザック・ヘイズ調。しかしいつの間にかスライ&ザ・ファミリー・ストーンな感じで終わる。
キリがないのでこの辺りで。ていうかオリジナリティー云々…は横に置いておいて、ただただメイヤーさんの音楽偏愛に敬服するばかり。私個人としてはメイヤーさんがやっているユニット”Tuxedo”のファンクな方向性が好みだが。数年前にEPで『Do It』(https://vimeo.com/111653437)とかがSoundCloudにアップされた時は軽く興奮したものである。
<西崎信太郎評>
着々と階段を上がっているこの感じ、今の音楽シーンでは本当に稀なタイプ。理解しやすい曲展開と、誰もが口ずさめるようなキャッチーなメロディ・ラインを、無尽蔵に生み出せるコンポーザーとしての能力がメイヤー・ホーソーン(以下メイヤー)の強さ。白人アーティストながら、70’s~80’sソウルにアプローチしたスタイルで各所から高い評価を得るメイヤー。「今最も好きなアーティスト」にメイヤーを挙げる人も多いのでは。そのきっかけがタキシードだった人も多いと思いますが。
今や、私のDJ時の鉄板曲。タキシードの”So Good”と”I Got U”。以前ニコ生にゲストで登場してもらったDJ Hiroking君主催のTokyo Soul Driveでも、タキシードをプレイすると爆弾を投下したかのような盛り上がりっぷり。決してライブ・アーティストじゃないんですけど、以前メイヤーのソロ・ライブをビルボード・ライブさんに観にお邪魔した時のパフォーマンスは、歌唱力云々ではない、ステージの空気作りが抜群に上手いと感じ、無意識の内に終始スタンディングでライブを見てしまっておりました。
話が飛びますが、かつての名NBAプレーヤー、アイザイア・トーマス(ドリブルの名手として知られる黒人選手)が、こちらもNBAのレジェンド、ラリー・バード(元祖3ポイント・チャンピオンとして知られる白人選手)を「彼は、白人だったから評価されているだけ。黒人だったら並の選手」と皮肉った発言をして当時話題となりましたが、メイヤーはいかに黒い音を奏でるかというより、白人の解釈によるソウルを上手く表現出来るアーティストかなと思うゆえに、スヌープ・ドッグ、カニエ・ウエストらからも評価されたのかな、と。
あと、意外と多いのが、メイヤーのファッションから彼の音楽に興味を持つというリスナー。しかも年配者ではなく、若年層からも絶大な支持を集めております。すみません、僕はスーツのディティールに全く詳しくないのですが、黒縁眼鏡をトレードマークとして、お洒落に着こなすスーツのコーデ術が「たまらなく最高」と、アパレル業界の方々がおっしゃっていたのがとても印象的。
今やグラミー賞にノミネートされる程の実力者。今年も来日公演が控えておりますので、遊びに行かれる方の弾けっぷりが楽しみです。