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『James Brown』(ジェイムズ・ブラウン)

アメリカ合衆国のソウルミュージックシンガー・音楽プロデューサー・エンターテイナー。通称JB。
ファンクの帝王と呼ばれ、「ショウビジネス界一番の働き者」と称される。シャウトを用いたヴォーカルと、斬新なファンク・サウンドが特徴。


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<TSUYOSHI 評>

実は歌がうまい。JB好きなら当たり前のことかもしれないが、ちゃんと歌うとジェームス・ブラウンは歌がうまい。ルックス、ダンス、歌。どれを取り上げてもパンチが強くて個性的。パンチが強過ぎて見聞きする側からしたら意識が散漫しがちになる。たとえば歌に関しては、アジテート掛かった当たりが強くてリズムを強調した歌や奇声を想像すると思う。もちろんそれがJBなのだが、よくよく聴くと、とても歌心がある人がそれをしているだけなのが分かる。もはや古典『I Got You (I Feel Good)』(http://www.dailymotion.com/video/x2u8idl_james-brown-i-got-you-i-feel-good_music)とか。基本、ピッチ(音程)感がいい。メイシオ・パーカーが間奏のアルトサックスを若干低めのピッチで吹いてしまっても、次のヴァースではそれに引きずられることなく本来のピッチで普通に歌っている。そういうことに限らず色々とうまいのである。たとえば日本でも多くの方がこの曲をレパートリーにしていると思う。自分はうまく歌えた覚えがない。今までほかの方々の歌を聴いていいLiveだと思ったことはあるが、いい歌だと思えた試しがほぼない。だいたいがJBの曲のテンションに見合ったグルーヴ感やLive感がある歌ならそれでいい、みたいな感じで終わってしまっている。それほど、意外とJBの曲を歌うのは難易度が高い。

ファンク。ジェームス・ブラウンを語る上の要素のひとつである。ブーツィー、Pファンク、ロジャー、etc。ほかにも色々な流れのファンクがあるけども、原点はやはりジェームス・ブラウンと彼のバンドであるJB’s。みんな大好きディアンジェロも、ジェームス・ブラウンとJB’sがいなければ存在しない。彼のLiveを見れば一目瞭然。JBとPファンクのフレーズや決まり事のオンパレードである。そんなジェームス・ブラウンが原点であるファンク、まずJB’sのドラムによるタイトでバックビート有りきのリズム表現がなかったら今のファンクは有り得なかった。「もともと黒人は当然のように裏拍を感じるのだ」と昔どこぞの黒人ミュージシャンに聞いたが、おかげで当時は16ビートやその裏拍の概念が見えやすくなったのではなかろうか。たとえば『Funky Drummer』(http://www.dailymotion.com/video/x2m2aku_james-brown-funky-drummer-full-version-1970-hq_music)とか。パブリック・エナミーをはじめ、多くのヒップホップのアーティストがサンプリングしている有名なブレイク(5:22~)でもおなじみの曲。時折あらわれるメイシオのアルトサックスがまたいいノリを出している。


そう、重要なのはノリとかグルーヴとかで表現される感覚。これをいかに表現して聴く人を高揚させるか。そのため、ジェームス・ブラウンのファンクを説明するのにリズムの立ったフレーズのホーンの要素も必要不可欠。たとえばメイシオ・パーカーの1992リリースのライヴアルバム『Life On Planet Groove』(https://www.youtube.com/watch?v=x9fNIrpkEiE)。
名演。名グルーヴ。バンドも素晴らしい。唯一ギターが緩いのが残念だが。とにかくメイシオのリズムとグルーヴの居所が素晴らしすぎる。JB’s以前はホーンというものに誰もグルーヴの表現を求めていなかった。それをジェームス・ブラウンが求めたおかげで新しい概念の音楽が生まれたのである。

ジェームス・ブラウンのファンクに重要な要素をもたらしたものがもうひとつ。ブーツィー・コリンズというベーシストである。ほんの一年足らずしかJB’sに在籍していなかったブーツィーは、そのプレイによってジェームス・ブラウンのファンクの表現方法をガラッと変えた。ブーツィー以前とブーツィー以後のJB’sは別物になっている。というかブーツィーはその後”ファンク”の流れ自体を作っていったのだが。『Give It Up Or Turn It Loose』(https://www.youtube.com/watch?v=fEVnFGnjnGU)のブーツィーの”動く”ベースフレーズ。今となれば当たり前のベースプレイかもしれないが、当時初めて耳にした人々からすれば衝撃のプレイだったに違いない。


このように、関わった様々な人の才能や要素を取り込み、自身のフィルターを通してジェームス・ブラウンは”ファンク”を作り上げた。そしてその後のブラックミュージックにおいて彼の作った”ファンク”の影響がないものは無い。



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<西崎信太郎 評>

「マイケル・ジャクソン=ポップス」、「スティーヴィー・ワンダー=ソウル」、最近で言えば「ディアンジェロ=ネオ・ソウル」のように、ジェームス・ブラウンの音楽をカテゴライズするのであれば「ファンク/ソウル」になるのでしょうが、生き様や音楽性がそのまま1つ音楽ジャンルになってしまった音楽シーンの歴史上最も偉大な人物の1人。ジェームス・ブラウンの音楽ジャンルは、「ジェームス・ブラウン」というわけで。

どちらかというとっていうか、僕としてはジェームスと同世代(って言っちゃっていいのか。同じ'30年生まれという事なので)のレイ・チャールズやマーヴィン・ゲイの方が、ジャンル的には聴き馴染んだアーティスト。もっと言ってしまえば、ジェームスのイメージは「ミソンパおじさん(当時の日清カップヌードルのパロディCM)」の印象が強烈に残ってますがw
ただ、若き日のマイケル・ジャクソンが、ステージ脇でジェームスのステップを真似していたという話もあるように、ダンス・ミュージックの生みの親こそ、ジェームスになるのでしょう。ジェームスの映画のプロデューサーのミック・ジャガーも言っていましたが、正に「ジェームス・ブラウンの音楽に影響を受けなかった音楽は無い」という言葉は、同意出来ます。確かに、ことブラック・ミュージックに絞ったとしても、大なり小なりどこかにジェームスの影響を感じとれる。たった1人の男の生き様が世界を変えたんですよね。

シンプルゆえに、明快。詞の世界観も、フック・ラインでの歌い回しも、魂(ソウル)の叫びそのもの。"I Got You (I Feel
Good)"、"(Get Up U Feel Like Being A) Sex Machine, Pt.1"、"Super
Bad"にしても、一言で「ジェームス・ブラウン」。映画『ジェームス・ブラウン〜最高の魂(ソウル)を持つ男〜』、公開されて日本でもかなり盛り上がっていますね。早く観に行かないと。アロー・ブラックも縁者で出演しているんですね、益々楽しみ!