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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第11編 『Janet Jackson』
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R&Bフリーク以外は置き去りにするR&B評 第11編 『Janet Jackson』

2015-07-23 11:38

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    『Janet Jackson』(ジャネット・ジャクソン)

    アメリカ合衆国のシンガーソングライター。9人兄弟の末っ子としてインディアナ州で生まれる。兄の1人はマイケル・ジャクソン。全世界で6000万枚以上の成功を収めている。


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    <TSUYOSHI評>

    3rdアルバム『Control』以降、ジミー・ジャム&テリー・ルイス制作のジャネット・ジャクソンの曲には捨て曲がほとんど見当たらない。単にジャム&ルイスが個人的に好きだからという色眼鏡はあるにせよ、一曲一曲のクオリティーがとても高い。無駄の少ないポップなメロディーライン。その一見簡素なメロディーを支える、くすぐったくなるほど格好良く素敵なコード進行。どの時代においても、ぱっと聴きでは似た感じだらけなR&Bのトラックのトレンドにしっかりと対応しながらも、しかしながら一聴してジャム&ルイスだと分かるオリジナリティー溢れるアレンジ。一音一音の磨き方が違う。感覚でモノを作らない、何から何まで『音』に意味があるように感じる。そこまでこだわらなくても音楽はできるのだが、こだわって作られた音楽は明らかに美しい。実質的にジャネットがどこまで曲の制作のパーセンテージを占めているかは分からないが、ともあれジャネットとジャム&ルイスが磨き上げ積み上げてきた音楽とその姿勢は、すでに人類にとっての偉大なる遺産だと言っても過言ではない。と言いつつ、5枚目のアルバム『janet.』収録の『Any Time, Any Place』(https://youtu.be/3HO9H1VMMOk)に限ってはR・ケリーのリミックスが素晴らし過ぎて。たまにそういうこともある。

    メロディーは一見簡素だと前段で言ったが、ジャム&ルイスのメロディーはかなり癖が強い。近年それは薄らいできてはいるが、スローなものやバラード系ではもはや手癖の域。手癖なスケール(音階)のラインは装飾フレーズなどオブリに関しても同様。絶対意図的に使っている。何十年も使い倒しているフレーズにもかかわらず、聴いている側は飽きない。それだけ中毒性の高いスケール(音階)であると言える。彼等が初期に手掛けたヒューマン・リーグ『Human』(https://youtu.be/s1ysoohV_zA)やアレクサンダー・オニール『If You Were Here Tonight』(https://youtu.be/R6_YdLAu5Zc)などが分かりやすいか。そしてジャム&ルイスの音楽性をより確かなものにしたジャネットの歌声。彼等が作るメロディーラインに乗るジャネットは、なぜだかとてもスムーズ。ジャム&ルイスをより高みに導いたという点で、彼女の歌声が果たしてきた役割はやはり大きかったはず。

    ジャネットの歌声は、それまでのR&Bやブラックミュージックではヒットしやすい声色では決してなかったように思う。ゴスペル出身のような太く力強い声ではないし、フェイクもしない。どちらかと言えばミニー・リパートン方面か。けれどそこまで声に艶がある訳でもない。派手な曲調のナンバーであれば、それこそ埋もれがちな歌声だったのかもしれない。しかしここでジャネットがかの”ジャクソン一家”ということが功を奏する。ご存知マイケル・ジャクソンなど、兄弟姉妹のほぼ全てがシンガーでありミュージシャン。特にマイケルとジャーメイン・ジャクソンの声色は異常なほど特徴的。ジャネットはこの兄2人と比べればそこまで印象深い声ではないが、他の姉妹2人(リビー、ラトーヤ)と比べればダントツに声はいいし歌もうまい。結局のところ、この恵まれた”ジャクソン一家”の声を活かしたジャム&ルイスのプロデュース能力が凄いということになってしまうのだが。しかしながらその結果、ジャネットの成功によって、R&Bやブラックミュージックの世界において”張らないシンガー”としての立ち位置が新たに作られることになる。ジャネットが成功しなかったら、アリーヤやシアラなど声を大々的に張らないシンガーはそう簡単にR&B界には存在し得なかったはずである。そして、アップからスローまで、あらゆる曲調にも埋もれない声に感じるように新しい発想で制作してきたエンジニアはじめ制作陣のクリエイティビティもまた素晴らしかったのだと思う。

    ”ジャクソン一家”の声という点で、ザ・ジャクソンズ『2300 Jackson Street』(https://youtu.be/3BNjmwDCZz4)を紹介したい。ラトーヤ以外の全員の声が聞ける曲。人々の耳に届く声を持つファミリーの凄さを感じてみて欲しい。

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    <西崎信太郎 評>

    衰えた姿を見せる前に、栄光を抱えて去る。もしくは、燃え尽きるまで走り続ける。引き際の美学。'08年作『Discipline』でキャリアが止まっている形となっているジャネットの印象は?三位一体であるジャム&ルイスとタッグを組んでリリースされた'87年作のサード・アルバム『Control』を、ジャネット自身は「実質的なデビュー作」として語っていましたが、『Control』リリース後の最低売上枚数となってしまった『Discipline』。'12年末には結婚、音楽活動も自然とフェードアウトするかと思っていた矢先。静寂の雨音が、突如滴る。

    ジャネットの新曲"No Sleeep"。ジャム&ルイスとのタッグ再び。ありきたりな言葉ですが、いちファンとしては、もう決別かと思っていただけに、このタッグの続きが見れるという事が単純に嬉しい。ジャネットの魅力を引き出せるのがジャム&ルイスというより、ジャネットとジャム&ルイスの三位一体で「ジャネット」なのかな、と(ジャネット以外にもS.O.S.バンド、アレキサンダー・オニールに代表されるTABUレーベルの諸作を手掛けたジャム&ルイスの作品は必聴)。年内に新作リリースの話も出ていますが、過去のジャネットとの対比ではなく、現シーンに対して、往年のタッグでどれだけ脱力した姿が見れるか、凄く楽しみです。

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