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編集者・ライターの長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。前回は思想家の山口揚平さんに「意識をコントロールし、情報を有機化する方法」についてお伺いしました。今回登場いただくのは、僕のリクルート時代の大先輩である石山洸さんです。石山さんはリクルート時代にAI研究機関「RIT(Recruit Institute of Technology)を立ち上げるなど、リクルート社員であればその名を知らない人はいない人工知能のトップランナー。現在はエクサウィザーズの代表として、超高齢化社会に代表される数々の社会問題をAIの利活用によって解決することに取り組まれています。 「実は、人工知能の父であるマービン・ミンスキーも『考えるを考える』を考えていた」ーー。取材の冒頭でそう教えてくれた石山さんは、「シングルイシューは本質的に複雑系である」といいます。また、最近モデル化したという「4S理論(SENSE-SCIENCE FICTION-SHARE-SHIFT」のフレームワークもご説明いただきました。石山さんが”現代の空海”と呼ばれる所以に迫っていきます。
長谷川 この連載『考えるを考える』では、日本のような問題が複雑化した社会のなかで、「いかにシングルイシューを見定めるのか」、「そもそも思考とは何か」について探っています。まず初めに、石山さんにとっての「考える」とはどのような営為かお教えいただけますか?
石山 「人工知能の父」と呼ばれるマービン・ミンスキー先生が、実は私たちの会社の前身であるデジタル・センセーションで長らく顧問を務めていたんです。そしてミンスキー先生が人間の特徴としてよく言っていたのが、まさに「Thinking about thinking(考えることについて考える」。まさにこの連載と同じテーマですね。
長谷川 数ある社会問題のなかでも、石山さんが代表を務められる会社「エクサウィザーズ」ではAIの利活用を通じた超高齢化社会に付随する課題解決に取り組まれています。石山さんがなぜこのイシューを選んだのか、その背景から教えていただけますか?
石山 「超高齢化社会」は何も日本に固有の社会問題ではありません。時間軸として先に日本に来るのはたしかですが、やがて他の国にも訪れる現象です。そのため、先に日本でこの問題を解決しておけば、必ずグローバルでも役に立ちます。
それこそミンスキー先生が提唱されていた「ダンベル・セオリー」という概念にも通じることですが、人間の思考はすぐに「先進国/途上国」のように二元論でモノを捉えようとします。実際には、両者の間に共通する課題もあるでしょうし、もっと複雑な構造の場合もあります。
長谷川 石山さんが「超高齢化社会」を選ばれた理由は、解決したときのインパクトが大きいからでしょうか?
石山 「超高齢化社会」と一口にいっても、認知症の方の問題なのか、それを支える社会的な保険制度の課題なのか、イシューはシングルではないのです。個人がいかにケアされるのか、介護拒否をどうするのか、社会保障費をどうコントロールするのか。ミクロからマクロまで極めて複雑系の様相を呈するのが「超高齢化社会」に他なりません。
長谷川 一つの大きなイシューは複雑に枝分かれする問題群を内包しているということですね。
石山 その問題を捉える視点によっても見え方が変わるでしょう。例えば、ライフネット生命の出口治明会長と対談させて頂いた際に、出口さんが女性登用についておっしゃっていたことですが、消費を牽引しているのは女性なので、女性ウケする商品を開発するために、プロダクトマネージャーに女性を登用することが必要だと。女性が登用されないことには、そもそも消費が増えないので、マクロ経済が停滞する。ダイバーシティの問題よりもマクロ経済学的な視点で語られていました。一つの問題には必ず複数の視点があるという事例ですね。
長谷川 あるシングルイシュー一つをとっても、人それぞれで違う思考体系や認知の仕方で見え方が全く異なるということですね。
石山 あるシングルイシューも内実は、複数のイシューが重なりあっています。その重なり合ったイシュー同士の間にいかにコミュニケーション可能なトレーディングスペースを作り、全体として複雑な問題を解くのかが鍵になるということです。
マービン・ミンスキーは「考えるを考える」をどう考えたか
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最終更新日:2024-11-13 07:00
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