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池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第二章 ミニ四駆(1)「皇帝(エンペラー)は地平(ホライゾン)に辿り着いたか」
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池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 第二章 ミニ四駆(1)「皇帝(エンペラー)は地平(ホライゾン)に辿り着いたか」

2018-03-15 07:00
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    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生ーー世紀末ボーイズトイ列伝』。トランスフォーマーを扱った第一章に続き、第二章ではミニ四駆を取り上げます。黎明期から第一次ブームを振り返り、漫画『ダッシュ!四駆郎』とその登場マシン「皇帝(エンペラー)」に託された成熟のイメージを読み解きます。

     おもちゃ、特に理想のイメージを象ったフィギュアの歴史には、子供が目指すべき理想の成熟のイメージが色濃く表れている。この連載ではその中でも、80年代〜90年代、20世紀末に日本で流行したいわゆる「ボーイズトイ」と呼ばれるおもちゃ群のデザインをヒントに、新しい男性的な美学「kakkoii」について考えてきた。

     ここまで、84年にスタートし、おもちゃ主導で展開したボーイズトイの金字塔とも言えるトランスフォーマーについて、日本のプロダクトをアメリカ向けに展開する際のブランドであったというその出自に注目し、それゆえに日本的でもアメリカ的でもある新しい主体のあり方についての想像力を宿したことを指摘した。

     トランスフォーマーは、自動車であるときには乗り物でありながら、変形すれば異星の機械生命体として乗り込むことができない存在になる。これによって、乗り手という主体に従う身体の延長であった自動車は、乗り手とコミュニケーションを行うことで乗り手を成熟に導く新しい想像力へと変化した。いわばトランスフォーマーとは、「乗り込めない乗り物」という矛盾をはらんだ存在であり、さらに言えばコミュニケーションを通じて主体が乗り手と入れ替わる「魂を持った乗り物」であったのである。

     今回は、トランスフォーマーとほぼ同じ時代に展開しながら、「自動車」というモチーフを別の形で発展させたおもちゃについて論じることで、この「魂を持った乗り物」という概念とその美学について掘り下げていきたい。

     そのおもちゃとは、タミヤ社のミニ四駆である。

    35年続くミニ四駆という「模型」

     ミニ四駆は、タミヤ社から発売されている、走行機能を持った模型の一種だ。モーターとバッテリーを搭載して四輪駆動で自走する。ステアリング機能は持たず、バンパーに取り付けられたローラーを利用して、専用サーキットの壁に沿って走行する。サーキットを走行させて速度を競うレーシングホビーとして楽しむのが基本的な遊び方となる。マシンを一旦スタートさせれば操作することができないので、事前のカスタムやコースに合わせたセッティングが、比重という意味では実際のモータースポーツ以上に重要になる。

    ミニ四駆は80年代初期にはじまり、35年以上支持されている長寿ブランドである。そのためその歴史とデザインの流れを整理しながら、個別のデザインとそこに宿った成熟にまつわる想像力について掘り下げていきたい。

     ミニ四駆はその歴史の中で、三度のブームを迎えたと言われている。区分についてはいくつか議論もあるのだが、この連載では1982年からの「黎明期(ミニ四駆誕生〜レーサーミニ四駆)」、1986年代からの「第一次ブーム(ダッシュ!四駆郎)」、1994年からの「第二次ブーム(爆走兄弟レッツ&ゴー)」、そして2012年からの「第三次ブーム(ジャパンカップ復活以降)」に分けて扱っていく。

    「実車の模型」から「RCの模型」へ

     ミニ四駆を開発しているタミヤ社は、もともと戦後に設立された建築材の加工会社であったが、60年代からはその技術を活かした精密なプラスチック製のスケールモデルメーカーとして知られるようになった。自動車や戦車といった実在の工業製品を、徹底的な取材に基づき一定の縮尺で精密に再現したタミヤ社の商品は、世界的にも高く評価されている。

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    タミヤ 1/12 ビッグスケールシリーズ No.32 ホンダ RA273。1967年に発売されて以来、幾度となく再販されている。大きなスケールを活かして、徹底的な取材に基づいて実車を精緻に再現した傑作キット。

     70年代からは動力模型にも力を入れており、無線操縦による模型自動車、いわゆる「RC」「ラジコン」のメーカーとして、こちらも世界中で人気を博している。

     80年代に登場したミニ四駆は、タミヤ社の製品の中では比較的新しいカテゴリーということになる。現在のタミヤ公式ウェブサイトのメインナビゲーションの項目は最も左にある「新製品」から「スケール」「RC」「ミニ四駆」の順番で並んでおり、これは時系列であると同時に、タミヤというメーカーが持つアイデンティティのプライオリティをも示していると見ることもできるだろう。

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    ▲2018年現在のタミヤ公式ウェブサイト

     現在でこそメインナビゲーションの一角を占めてさえいるミニ四駆だが、発売された当初はあくまでRCの廉価版という位置付けだった。「ミニ」四駆という名称は、当時人気を博していた四輪駆動のオフロード用RCモデルが実際の自動車に近い本格的な構造を持った比較的高価な商品であったことに対して、樹脂成形のパーツを中心とした簡素な構造を持った安価な商品であることを印象付けるために選ばれたものだった。

     最初期のミニ四駆は、基本的には実車をモチーフとした「走る模型」であった。1982年に発売された最初の「ミニ四駆」は、「フォード・レインジャー」と「シボレー・ピックアップ」の2台だったが、この頃のミニ四駆は安価な模型として相応のディフォルメがされてはいるものの、基本的に実車を精密に再現しようという方向性でデザインされていた。その後1984年には、「コミカルミニ四駆」という名称で、実車をモチーフにしながらも強いディフォルメを加えたモデルが続く。この段階では、まだサーキットを用いた本格的なレースは想定されていなかった。


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