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記事 2件
  • 池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 序章(後編)「変身サイボーグ──戦後日本という母から生まれた新たな可能性」【不定期配信】

    2017-09-12 07:00  
    540pt


    デザイナーの池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。G.I.ジョーが描いた理想の男性性について論じた前回に引き続き、20世紀末に花開いたボーイズトイ文化の原点とも言える変身サイボーグと、そのデザインがもたらしたユニークな身体性について語ります。

     序章の前編では、20世紀におけるアメリカ的な男性性の変遷をまとめた。G.I.ジョーというおもちゃを通じて浮かび上がってきた20世紀アメリカにおける理想の男性像とは、最強の肉体と最強の知性を持つ「軍人」であった。そしてそのイメージは、20世紀後半においてフィクションのスーパーヒーローに引き継がれた。スーパーヒーローは悩み苦しむ弱い心をさらけ出し、それまでのハードボイルドな男性像を更新したことで人気を博したものの、身体性においては軍人的マッチョイズムから逃れることはできず、アクションフィギュアの体型はむしろ筋肉が極端に強調されたものへと変化していく。  時を同じくして、日本にもG.I.ジョーの遺伝子を受け継ぐおもちゃが登場する。それがタカラ社(現タカラトミー社)による、日本ボーイズトイ文化の原点とも言える傑作、「変身サイボーグ」である。後編においては、戦後まもない40年代半ばから70年代に至って変身サイボーグが誕生するまでを振り返り、これから語ろうとしている「世紀末ボーイズトイ」の位置付けを明確にしたい。
    おもちゃ大国と軍国主義の挫折
     戦前から戦中においては、アメリカと同じように、日本における理想の男性性もまた概ね軍人と結びついていた。  日本は昭和に入った1920年代の段階ですでにおもちゃ産業が大きく発展しており、世界恐慌による不況への対応として、おもちゃの輸出が真剣に評価されていたほどだった。おもちゃの領域においては、クールジャパン的な発想はこの時点で既に生まれていたと言える。  このとき流行していたのは、やはり戦争おもちゃだった。日清戦争から日露戦争、そして第一次世界大戦に勝利することによって列強に並んだ日本において、少年たちは兵士や兵器に憧れ、おもちゃもそれに応えるものが作られていった。戦争によってメディアとなるおもちゃこそ作られなくなったものの、この流れは第二次世界大戦に至ってピークを迎える。そして敗戦と同時に、大日本帝国軍が理想としたような名誉を重んじ国家に殉じていくような男性性は、一旦徹底的に否定されることとなるのである。  こうした戦前から戦中の日本における理想の男性性の問題は、男性学的には極めて重要である。しかし他の多くの文化と同じように、おもちゃ文化もまた戦前〜戦中から分断されることによって戦後の文化が発展していった。そのためここではあまり詳細に分析することはせず、代わりに戦後のおもちゃ文化について論を進めていきたい。

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  • 【新連載】池田明季哉 "kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝 序章(前編)「G.I.JOEとスーパーヒーロー──20世紀を戦った偉大な父とその子供たち」【不定期配信】

    2017-08-09 07:00  
    540pt


    今回から、デザイナーの池田明季哉さんによる新連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』が始まります。20世紀末に登場したボーイズトイの歴史をめぐりながら、21世紀における男性の「かっこよさ」について考えます。今回は、G.I.ジョーの描いた理想の男性性の変遷をまとめ、日本のボーイズトイへ与えた影響を考えていきます。

     子供の頃のおもちゃのことを、覚えているだろうか。
     そう言われて、全く何も思い出せないという人は稀だろう。買ってもらえたもの、買ってもらえなかったもの、大切にしていたもの、捨ててしまったもの、なくしてしまったもの、今でも大切に持っているもの……さまざまなおもちゃの思い出が、誰の心にもきっとあることと思う。
     この連載では、そんなおもちゃのデザインを通じて、21世紀における男性の「かっこよさ」について考えていく。
     主に登場するのは、80年代から90年代ーー20世紀末に流行した、主に幼稚園から小学生までの男子をターゲットにしたいわゆる「ボーイズトイ」と呼ばれる日本のおもちゃ群だ。
     トランスフォーマー、ミニ四駆、SDガンダム、ゾイド、ビーダマン、ミクロマン、勇者シリーズ……20世紀末に子供時代を過ごした現在30歳前後の世代ならひょっとすると懐かしさを感じるかもしれないし、有名なおもちゃも含まれてはいるが、このリストの全てで遊んだことがあるという人はそれほどいないだろう。

    ▲トランスフォーマーより「コンボイ」(画像出典)

    ▲ミニ四駆「シャイニングスコーピオン」 (画像出典)
     私は多くの人と同じように幼少期におもちゃに慣れ親しみ、そして多くの人とは違って大人になった今もおもちゃで遊び続ける、おもちゃファンのひとりだ。そろそろ2歳になる娘の父親でもある。だからこの20世紀末のボーイズトイという世界が、一般的に「おもちゃ」という言葉からイメージされるものとは大きく異なる、著しく狭い領域であることもよくわかっているつもりだ。
     この連載で紹介するおもちゃの多くは、教育を目的とした積み木のような知育玩具ではなく、あるいはアンパンマンや仮面ライダーのような、映像メディア上の存在を写し取ったキャラクター玩具でもない。メディアミックスされつつもプロダクトを中心として展開し、それゆえに独自の表現を発展させていたユニークなデザインのおもちゃ群である。男の子たちの欲望に徹底して応えていった結果、これまでになかった新しいデザイン文化がおもちゃの世界を舞台に花開いたのが、20世紀末というタイミングだった。
     こうしたおもちゃのデザインについて考えることで、私はひとつの「やり残した宿題」を解くヒントを見出したいと思っている。20世紀の男性が解くべきだった、そして未だ解かれていない難問。それは「21世紀の男性にとって、『かっこいい』とは何か」ということだ。もし「かっこいい」という言葉が曖昧すぎるなら、「成熟のイメージ」と言い換えてもいい。どのように大人になり、社会と関係していくべきなのか。21世紀になって曖昧になってしまったそのイメージをよりはっきりしたものにするヒントを、20世紀末のボーイズトイを振り返ることで改めて発掘していきたい。
     序章では、まずは前提として本連載で扱うおもちゃの範囲と位置付けを確認しておきたい。この前編では、おもちゃ自体の社会的位置付けと、20世紀までのおもちゃが担ってきた男性性について確認する。次回の後編では、世紀末ボーイズトイの原点となったエポックメイキングなおもちゃを紹介しつつ、この連載で扱うおもちゃを定義づけていく。
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