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三宅陽一郎 オートマトン・フィロソフィア――人工知能が「生命」になるとき 第五章 人工知能とオートメーション(自動化)【不定期配信】
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三宅陽一郎 オートマトン・フィロソフィア――人工知能が「生命」になるとき 第五章 人工知能とオートメーション(自動化)【不定期配信】

2018-06-07 10:00
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    ゲームAIの開発者である三宅陽一郎さんが、日本的想像力に基づいた新しい人工知能のあり方を論じる『オートマトン・フィロソフィア――人工知能が「生命」になるとき』。急速に人間を理解し始めた人工知能ですが、その思考様式は人間とは大きく異なります。これからの人工知能の分岐点にもなりうる現代の「第三次AIブーム」までの流れを三宅さんが分析します。

     本章では、人工知能によってもたらされる「自動化」(オートメーション)について扱います。コンピュータ上では、それまで人間がしていたことが次第に自動化されてきました。まず計算や複雑な数値計算が自動化され、かつては人工知能の重要な技術課題だった漢字変換もいまや誰も気に留めないほど自然な技術として実現しています。メールの自動分類も人工知能と言えます。また、インターネット上のeコマースの推薦システムや、大量の画像を自動分類するという技術もディープラーニングで実現しつつあります。エクセルの自動計算や定義も広義では人工知能と言えるでしょう。狭義では自律的な人工知能の思考による自動化と考えられます。このように、人工知能は長い時間をかけて人間の知的作業をオートメーション化してきたわけです。

     かつてはデジタルゲームのソフトを買うと、マップ作成機能が付いたものがありました。古くは『ピンボール』のコンストラクション・キット、さらに『ロードランナー』(ブローダーバンド)や『レッキングクルー』(任天堂)、さらに『エキサイトバイク』(任天堂)などです。これらは一つ一つの要素をユーザーが置いて行く必要がありました。デジタルゲームの人工知能には「キャラクター人工知能」と「プロシージャル技術」と呼ばれる二つの領域があります。ゲームAIは、ゲーム内で使う人工知能技術と、ゲーム作成に使う人工知能技術の二つに分けられますが、プロシージャル技術は双方で使われる技術です。

    プロシージャル技術は元々『Rogue』(1980年)のダンジョン自動生成に、そのあと『Elite』(Acornsoft、1984年)の星系・宇宙船生成、『不思議のダンジョン』(チュンソフト)シリーズ、『FarCry 2』(Ubisoft Montreal、2008年)の森自動生成へと応用されてきました。プロシージャル技術は、本来人間が作るべきであったものを人工知能が作っているという意味で人工知能技術なのです。また80年代の人工知能画家「アーロン」のように、人工知能が芸術を作る、という方向があります、それ以外にも、人工知能がヒット曲の作詞をする、人工知能が小説を書くなど、人工知能はより広い創造的分野に入りつつあります。

    ゲーム内でも、人工知能が使われることがあります。『Age of Empire』(Ensemble Studios)シリーズ、『The Witcher 3』(CD Projekt RED、2015年)では地形が自動生成され、『バトルフィールド」(DICE)シリーズはテクスチャリングが自動的に地表表面を彩ります。「Spore」(MAXIS、2008年) はフル・プロシージャルのゲームで、クリーチャーの形状自体と動作が自動生成されます。現代では、RPGの物語生成を自動的に行う開発が盛んになりつつあります。

    では、より包括的に人工知能とオートメーションの歴史を紐解いていきましょう。


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