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90年代は遠きにありて思ふものーーネオ・ヴィジュアル系の奮闘と哀愁(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第15回)
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90年代は遠きにありて思ふものーーネオ・ヴィジュアル系の奮闘と哀愁(市川哲史×藤谷千明『すべての道はV系に通ず』第15回)

2018-06-21 07:00
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    80年代以降の日本の音楽を「V系」という切り口から問い直す、市川哲史さんと藤谷千明さんの対談連載『すべての道はV系に通ず』。2000年代中期に勃興したネオ・ヴィジュアル系は、先達の様式美を取り入れた大衆性で人気を集めますが、その一方で、かつてのV系にあった〈業〉は抜け落ちていました。V系カルチャーの2000年代以降の変質について語ります。(構成:藤谷千明)

    ヴィジュアル系を「自ら名乗る」世代

    藤谷 前々回、蟹めんまさんをお呼びしてネット以前以後の、ヴィジュアル系におけるファンカルチャーの変化の話をしましたけど、あの時期はV系バンドそのものも色々な意味で地殻変動が起きた時代だったと思うんです。例えばサイコ・ル・シェイム(02年にメジャーデビュー)以降、〈大型新人がメジャー・デビュー〉的な風潮は減っていったような気がします。

    市川 ごめん、アレは大型新人だったんだ? シーンの停滞ぶりを逆説的に象徴したかのような終末感に、私は涙を誘われました。あのコントっぽい風体がまた、空虚だったんだこれが。

    藤谷 ちなみに再結成してます。

    市川 あ、そ。

    藤谷 2002年にはcali≠gariが、03年にはMUCCがそれぞれメジャー・デビューしました。どちらも熱狂的なファンを抱えているバンドですが、〈そこからお茶の間に進出!〉的なバンドではありませんでしたし、シーンそのものの主戦場がインディーズに移っていったというのが、私の中でのゼロ年代初頭の空気感ですね。

    市川 世間的にはブームが終わっていたなか、それでもインディーズがV系にとって一種の〈避難場所〉として機能していたと。それがゼロ年代以降のいちばんの特徴である、「V系を演りたくてやってるんだ!」的な自発性に繋がっている気がするね。外部の視線がないから社会現象までは至らないけれど、幸か不幸か偶然〈身近感〉が生まれたというか。

    藤谷 マイナー感半端ないっスね、そう言われちゃうと。

    市川 それ以前に、やはり自らV系と名乗るニュー・カマーたちの出現が、やはり私には衝撃的だった。だって20世紀の先人たちは決してV系バンドと呼ばれたかったわけではなく、その過剰な雑食性の赴くままに自己陶酔してたら、いつの間にか勝手にそう呼ばれるようになっちゃった。だから〈V系〉と自ら名乗ることに、抵抗と違和感があるんだよ。

    藤谷 たとえばtheGazettEあたりが、邦ロックやメタルのフェスに出る場合に「僕らV系バンドが〜」と自己紹介するみたいな?

    市川 なんでそうなっちゃったんだろうねえ。

    藤谷 10代の頃から聴いて育ったもの、そのシーンでバンドとしてやってきたことの誇りというか自負というか、を〈あえて切り捨てる必要がない〉ですよ。私自身、ヴィジュアル系以外の仕事もやっていますけど、「藤谷さん、ヴィジュアル系のライターですよね?」と言われて、わざわざ否定する必要はないと思いますもん。

    市川 うん、藤谷さんの世代だからそうなわけで、ここらへんに時代の経過と蓄積が見えて感慨深いな。

    〈普通の人〉と多様化するシーン


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