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香港の利権を独占しているのは……?|周庭
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香港の利権を独占しているのは……?|周庭

2018-11-14 07:00
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    香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。再び民主派の議員が立候補資格が取り消され、政府と民主派との対立が深まる香港。政府による土地の独占、造成予定の人工島の危険性など、現在の香港が抱えている問題について語ります。(翻訳:伯川星矢)

    御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
    第22回 香港の利権を独占しているのは……?

    また一人、立法会選挙の候補者が立候補無効となりました。

    去年、6人の立法会議員が資格剥奪となり、その補欠選挙を行うこととなりました。そのうちの4回は今年の三月に行われました(私が立候補無効となった回)。
    今年の11月25日、前回議員資格剥奪となった劉小麗(ラウ・シィウライ)氏の代わりに、九龍西区に補欠選挙が予定されています。本来それは劉氏の議席であり、彼女自身も続投を希望していたため、今回の補欠選挙でも彼女は民主派を代表し、親中派と争う予定でした。

    しかし、劉氏は10月12日に選挙主任より立候補資格無効を言い渡されました。これは彼女が立候補する資格を失ったことを意味しています。
    劉氏は私が所属している香港衆志と同じく「民主自決」を主張しています。政府が彼女に送った立候補無効宣言の書類では、彼女の主張が香港憲法にある「基本法」に違反しているため、立候補資格が満たせていないことが理由として書かれていました。

    政府は、劉氏が2016年に香港衆志の共同声明で「民主自決」を主張し、「香港独立」を自決の選択肢として擁護すると主張したことを問題視しています。選挙主任は、この主張により劉氏が、中国が香港の主権を所有していることを認めていないと見做し、基本法の「香港は中華人民共和国の一部である」という部分に反していると認定しました。

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    ▲補欠選挙の街宣活動の様子


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    今回の立候補無効の処置は、明らかに政府から民主自決派への更なる弾圧であり、政治的な権利と人権の侵害といえます。
    中国政府は積極的な民主派を議会から追い出すため、共産党の支配下にある全人代(全国人民代表大会)で基本法解釈権を行使し、立法会議員就任時の宣誓項目を変更しました。その変更した内容で司法審査を行わせて、結局、六人の議員が資格剥奪となりました。劉氏は2年前に数万人の支持を集めて立法会議員となりましたが、もはや議事堂で市民の代弁はできません。そして、今回の立候補無効は彼女が今後、二度と立候補できないことを意味しています。

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    ▲香港衆志のメンバーも街頭に立ち香港市民と交流

    これまでの連載でも読者の皆さんに、香港人がいかなる弾圧を受けているかを紹介してきました。民主派が立候補を禁止されても、もう皆さんも驚かないし、これがいつもの香港だと思っているかもしれません。
    しかし、このような弾圧は、決して普通でも、正しいことでもありません!
    政権による弾圧はもちろん恐ろしい。でも、それ以上に恐ろしいことは、私たちがこの異常な状況に慣れてしまうことです。

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    今回はもうひとつ、香港の土地計画問題とその争点を、皆さんにお伝えしたいと思います。
    ご存知の通り、香港の住宅事情は高い・小さい・狭いという問題を抱えており、ある意味、世界的に有名でもあります。
    この間、香港の行政長官による施政方針報告で、香港のランタオ島付近に1700ヘクタール(東京ドーム約364個分)の大規模な人工島を建設することが発表され、それに反対する数万人の市民デモが行われました。私もそれに参加した一人です。

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    ▲反埋め立ての市民運動に参加しました

    ここで皆さんは疑問を抱くかもしれません。香港は住宅が不足しているのに、なぜ埋立地の建設に反対するのか。
    その理由の一つは、香港の住宅問題の原因は土地の不足ではなく、その分配がアンバランスで不公平だからです。多くの土地が高額な私営住宅、もしくはオフィス街の一等地として使われていて、政府はその土地を提供することによって利益を得ています。
    今の香港では、公営住宅、社会福祉施設、介護施設、病院などが不足しています。しかし、政府は不動産業界との癒着と利益のために、これらの社会問題を後回しにしています。

    そもそも、政府は未開発の空き地を所有しているし、不動産業界も多くの土地を持て余しています。なのになぜ、既にある土地の開発を進めずに、最初から新しい埋立地を作ろうとしているのか。たとえその計画によって人工島ができたとしても、本当にそれは一般市民の住居と民生の問題を解決するために使われるのか。

    それ以外にも、温暖化の進行によって水位が上昇している中、台風などの災害が起きれば、
    人工島に住む数百万の香港人が被災することになるでしょう。
    人工島の建設に反対している元天文台(気象庁)の長官は、日本の関西国際空港の浸水被害を例に挙げながら、香港で人工島を建設することのリスクを指摘し、環境の変化が全く読めない中で、このプロジェクトは博打になると話していました。

    香港人が直面している問題と困難は、中国共産党からの弾圧のみならず、様々な生活環境の問題も含まれています。これを機に、日本の皆さんにもご理解いただけたら幸いです。

    (続く)

    ▼プロフィール
    周 庭(Agnes CHOW)
    1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政党「香港衆志」の副秘書長を務める。

    『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』これまでの連載はこちらのリンクから。

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