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【対談】上妻世海×宇野常寛 『遅いインターネット計画』から『制作』へ(中編)
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【対談】上妻世海×宇野常寛 『遅いインターネット計画』から『制作』へ(中編)

2019-01-09 07:00
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    今朝のメルマガは、文筆家/キュレーターの上妻世海さんと宇野常寛の対談の中編をお届けします。否応なしにネットワークに接続されタイムライン化する世界認識の中で、〈身体〉に基づいたノード的な存在として自立するためにはどうあるべきか。〈制作〉と〈ランニング〉から、模倣論・メディア論へと議論は広がっていきます。
    ※本記事は2018年10月27日に青山ブックセンター本店で行われたトークイベントを記事化したものです。
    ※本記事の前編はこちら

    ☆お知らせ☆
    ただいま青山ブックセンター本店さんにて、宇野常寛責任編集『PLANETS vol.10』特集を展開していただいています!
    特典として「遅いインターネット」計画に関する宇野のロングインタビュー冊子がついてきます。いま冊子が読めるのはこちらの店舗さんだけ。ぜひお立ち寄りください!

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    ▲対談直前の上妻世海さんと宇野常寛

    ネットワークに流されない〈身体〉の構築

    上妻 『PLANETS Vol.10』(以下P10)で面白かったのが、後半にいろんな人のインタビューが載っていて、必ずしもメディアで注目されているわけではないけれど、宇野さんが面白いと思う人たちが集められている。こういう人たちがどんどん出てくる世の中になるといいと思っているんです。必ずしも大衆受けしなくとも、「制作」はそれ自体意義のあるものですし、もしかしたら、いつか、どこかで、結果的に社会的にも重要な価値を持つかもしれません。そういう人に早い段階で焦点を当てるような機能、あるいは勇気付けるような機能が雑誌には求められますし、とはいえ、かなりそういう質を持った雑誌は少なくなってきているようにも思えますが、P10ではそれに成功していたと思っています。
    先ほどまでは「身体制作」≒「制作」であるという図式を提示していたのですが、一度その段階を経てしまうと、次に制作者は、隠喩としての「走ること」を通じて「身体制作」を行うこととその外在化として作品化することのギャップにも向き合わなければなりません。そのレベルになって、ある意味、生活を整える目的でのランニングという側面が際立ってくる。P10では第一段階である「身体制作」≒「制作」の段階から第二段階であるその分離までを幅広く扱っていると感じました。分離とはいえ、もちろんそれは切り離せないものではあるのですがそのコントロールが重要になってくる。P10での例で言えば、「身体制作」はロボットを作ってる女の子にとって、継続的可能な制作のための、ある種の準備運動になってくる。

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    ▲『PLANETS vol.10

    宇野 準備運動というか環境整備みたいなものだと思うんだよね。彼ら彼女らにどんな気持ちでインタビューしたかというと、僕を中心とするPLANETSのコミュニティに接続することで、上妻さん的な意味での制作環境を整えて欲しいと思った。それは単に、批評家としての僕に刺激を受けて制作が捗るとかではなくて、P10に参加して知識を共有することで、ランニングによって世界の見え方が変わるように、閉じながら同時に開いているような環境に身体を置いてくれるといいなと思ってやっていたんだよ。
    それはインターネット第一世代への僕なりのアンサーになっているんですよね。彼らはリアルとバーチャルを対立項として捉えていて、だからこそリアルにバーチャルが侵入することに快感を覚えていたし、秋葉原の巨大ビジョンで踊る初音ミクに未来を見たわけだよね。もちろん僕もボカロカルチャーにリスペクトはあるけど、ただ、そこに関して限界を感じていたことも確かなんだよね。
    実際に、あれから10年経って起きたのは、もうすこし複雑で面白い、そしてタチの悪い現象で我々の日常の中に、かつてバーチャルと呼ばれていたものが侵入して、そのことによって我々のリアルな空間が多重化している。我々の身体はすでに情報化されきっている。そして以前は虚構的な空間にあったものが、カジュアルに持ち歩ける日常の一部になり、そのことで批判力を失っているんだよね。それって押井守が『イノセンス』で突き当たった行き詰まりと全く同じなんだよ。
    サブカルチャーの世界でいうと、アニメからアイドルへと中心点が移る地殻変動がまさにそれだった。その結果、みんなが文化的に豊かになったかというと、半分はそうだけどもう半分はそんなことはない。我々がタイムラインを延々と見続けているときのように、一見、多層的で多様ではあるけれど、どこにも切れ目のない、のっぺりとした世界が広がるようになってしまった。
    それに対して、物書きやハイカルチャーの担い手の多くは、ネットワークから切り離されて再び孤独に戻れという。しかし、繰り返しになりますが、これはアナクロニズムへの回帰に過ぎない。
    僕が、上妻用語でいう「制作」、宇野的にいうと「走るひと」の立場に立つのは、かつて虚構と呼ばれていたものが批判力を持たなくなったこの世界に対して、いかにして多様性や拡張性を回復するかを考えているからなんだよね。

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    ▲この人と始める〈これから〉のはなし


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    最終更新日:2024-11-13 07:00
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