編集者・ライターの僕・長谷川リョーが(ある情報を持っている)専門家ではなく深く思考をしている人々に話を伺っていくシリーズ『考えるを考える』。今回は、リクルートホールディングス(2018年4月より、Indeedに出向中)でエンジニア/データサイエンティストを務める、風間正弘氏にお話を伺います。社外プロジェクトとして、予防医学者・石川善樹氏と共に、レシピのビッグデータをAIで解析して食材同士のつながりを可視化し、新たなレシピを考案するツール「Food Galaxy」の開発も手がける風間氏。レコメンドエンジンによる最適化が進んでいく世界で、AIと人間が協同し、クリエイティビティを発揮していくことは可能なのか。人文知と工学知を掛け合わせ、世界への解像度を高め続ける風間氏の思考に迫ります。(構成 小池真幸)
レコメンドエンジンの開発が主軸。データサイエンスからWeb開発まで、リクルートで最先端テクノロジーを実装
長谷川 お久しぶりです。風間さんは、僕の前職・リクルートの先輩でもあります。一度、ミーティングをご一緒したこともありましたよね。
風間 ありましたね。当時は株式会社リクルートテクノロジーズで、データサイエンス業務を手がけていました。
長谷川 たしか、会社で表彰されていましたよね。
風間 そんなこともありました。とあるサイト上でのレコメンドエンジンに、他のサイトのデータを横断的に活用する仕組みを構築したことを評価していただけたんです。サービスごとにデータの質や粒度が全然違うのを、うまく結びつけるのが難しかったですね。
長谷川 どのように結びつけたのでしょう?
風間 記事のクリックログをはじめとしたユーザーの行動データや、別のサービス上にたまっているデータをうまく活用することで結びつけました。
長谷川 その成果を、学会に持って行って発表されたともお聞きしました。
風間 そうですね。レコメンド関連の学会で発表しました。世界中の研究者からのフィードバックが欲しかったのと、学会での実績を作れば自分の履歴書代わりにも使えるようになるかなと思って。
長谷川 その後、2018年4月に現在のIndeedに異動されたと。
風間 自ら手を挙げました。データサイエンスの技術だけでなく、全般的な開発スキルをもっと身に付けたいと思ったんです。研究を重ねるうちに、「レコメンドエンジンの改良が、常にベストな選択肢とは限らない」と気付きました。パターンの色やUIを変えたりした方が、より大きな成果が出ることも多い。あらゆる要素を考慮して施策を設計できるようになりたいと思い、当時の自分に不足していた開発スキルを身につけられる環境を志向しました。
また若いうちに英語力も磨きたかったので、グローバル企業であるIndeedは最適な環境だと思ったんです。
長谷川 異動してから一年近く経ちますが、感触はどうですか?
風間 勉強になることばかりです。今までほとんど触れたことがない種類のコードを、イチから勉強しながら書いています。仕事の一環として、同僚からフィードバックをもらいながらコードを書いているので、日に日にスキルが向上している感覚がありますね。
また所属しているチームの7〜8割は外国の方というグローバルな環境で、その点でも望んでいた環境に身を置けているといえます。
長谷川 具体的な業務内容についても教えていただけますか?
風間 最初はエンジニアとして、画面開発やWeb開発を手がけていましたが、現在はレコメンド開発にも携わっています。求職者の方にマッチする仕事を、画面上やメールでレコメンドするアルゴリズムを構築中です。
長谷川 レコメンド技術といえば、中国が強い印象があります。運営会社のByteDanceをはじめ、中国のAI技術の発展ぶりは凄まじいですよね。
風間 中国は本当に勢いがありますね。AIの国際学会に参加しても、中国人の参加者数が1番多かったりしますよ。特にByteDanceは、動画内のユーザーの姿勢判定や、美脚や細い顔に見せるためのリアルタイムでの画像変換など、かなり先進的な技術を開発している印象があります。
生きたデータを分析し、直接ユーザーに還元したかった。アカデミアの道を捨て、リクルートに就職した理由
長谷川 レコメンドアルゴリズムのコアでもある、機械学習に関心を抱くようになったのはなぜでしょう?学部生時代は東工大で、機械学習とは全く関係のない研究を手がけられていたと伺っています。