香港の社会運動家・周庭(アグネス・チョウ)さんの連載『御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記』。8月30日の朝、周庭さんは無許可の集会への参加容疑で逮捕されました。翌日には保釈されたものの、拘置中は香港警察によるこれまでにない理不尽な扱いに晒されたといいます。(翻訳:伯川星矢)
御宅女生的政治日常――香港で民主化運動をしている女子大生の日記
第30回 突然の逮捕から保釈、そしてドイツ・オーストリアへの旅
香港の活動はまだ続いています。香港人はまだ「五つの要求」を求め、政治的・暴力的な弾圧に反抗しています。現時点(9月18日)で、この活動によって、すでに1400人以上の市民が逮捕され、100人以上が起訴されています。
そして8月30日、わたしは逮捕されました。
8月30日の朝、わたしはまだ自宅の部屋で寝ているところを、騒がしい音に起こされました。部屋を出た瞬間、5人の警官がわたしを「お待ち」していて、6月21日の警察本部前のデモに参加した容疑で逮捕すると説明されました。その時すでに、わたしの仲間であるジョシュアは逮捕されていました。
わたしは近所の警察署に連れて行かれ、その後、警察本部に移送されました。そして起訴、午後に裁判所に連れて行かれ、保釈されました。
拘留期間中、なにか理不尽な対応をされたかと言うと、持ち物検査をされる際に、婦人警官にズボンを脱ぐように言われました。わたしはデモに参加した容疑で逮捕されたのであって、薬物所持の疑いなどではないはず。なぜ、ズボンを脱がないといけないのか? わたしは過去に2回、逮捕されていますが、このような要求はこれまでにはなかったことです。
でも、逮捕された他の仲間たちに比べれば、わたしが受けた仕打ちなんて全然大したことではありません。多くの人が逮捕後に殴られ、血まみれになって、裁判所にいけない人もいます。警察に怒鳴られて、「ゴキブリ」呼ばわりされた人もいる。セクハラされ、警官に「警察はストレスでいっぱいなんだ、女性逮捕者と性行為したいと思うようなことがあっても仕方がない」と言われた人もいる。女性逮捕者が男性警官に胸を触られたこともありました。
これらは間違っているし、決して当たり前のことでもありません。でも、ここ数ヶ月の間に、警察は気が大きくなって、制御ができなくなり、法による束縛も一切効果がありません。
香港は、完全に警察都市になってしまいました。
現在、わたしとジョシュアは保釈期間中の身なので、裁判官に決められた保釈条件を守らなければなりません。
・夜間外出禁止:毎日23:00から7:00までの間は家にいないといけません
・接近禁止:警察本部付近に立ち入ってはいけません
・出域禁止:外国に行くことができません
ただし、3つ目の保釈条件に対しては申し出を行い、もともと予定されていたわたしのドイツ・オーストリアへの渡航、ジョシュアの台湾・ドイツ・アメリカへの渡航の許可は貰えました。
わたしはドイツのマインツで開催されたWorld Federation of Taiwanese Associations(台湾同郷連合会)の年次フォーラムに出席し、いろんな学者や記者の方たちと一緒に、約500人の参加者の前で、台湾と香港の市民社会が目の当たりにしている中国の脅威について話し合いました。
台湾と香港はある意味では運命共同体です。中国政府はいずれ台湾でも一国二制度を実施したいと、何度も発言しています。あと数ヶ月で台湾は大統領選挙を迎えます。香港の政治情勢は、台湾の大統領選挙の結果を左右する重要な鍵のひとつとも言えます。
ドイツに行った後、私はオーストリアに向かいメディアのインタビューを受けました。ちょうどその頃、オーストリアは9月29日の選挙を控えている時期で、 街中に選挙ポスターが貼ってあって、どのテレビチャンネルも選挙フォーラムの番組を放送していました。オーストリアでは、香港とは全く違う雰囲気を味わえました。
もともと、わたしは今年の年末には日本を訪れ、香港問題に関するインタビューをしようと考えていました。でも、保釈条件により、今年は行くことが難しいかもしれません。
日本にいる皆さんも引き続き、香港の民主化運動へのご関心と支持をお願いします。
(続く)
▼プロフィール
周 庭(Agnes CHOW)
1996年香港生まれ。社会活動家。17歳のときに学生運動組織「学民思潮」の中心メンバーの一員として雨傘運動に参加し、スポークスウーマンを担当。現在は香港浸会大学で国際政治学を学びながら、政治組織「香港衆志」に所属している。
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