鷹鳥屋明さんの連載『中東で一番有名な日本人』。これまで就労・巡礼目的の渡航に限られていたサウジアラビアが、ついに観光ビザを解禁!音楽、漫画、アニメ、ゲームなどのエンタメを積極的に輸入し、開かれた国へと変貌しつつあるサウジ。現地で展開される最新のイベントの様子を報告します。
今まで「閉じられた国」と言われてきたサウジアラビア王国が。ついに観光ビザをヨーロッパ、アジアの国々で解禁しました。これまで就労ビザや巡礼ビザ以外では訪れることができなかったサウジアラビアですが、イスラームの聖地メッカ、メディーナという街を有し、大巡礼とよばれるハッジのシーズンに数百万人もの巡礼者が来る国に、なぜこのような非イスラーム教徒向けのビザが解禁されるようになったのでしょうか?
▲ビザ解禁のニュースは世界中に広がりました
過去の連載記事を読んでいる方はご存じだと思いますが、サウジアラビアは国家歳入のほとんどを石油の収入に頼るレンティア国家です。その仕組みから脱却するため、新しい産業の振興を目標に掲げ「サウジビジョン2030」という名前の元で国家大改造計画を行っております。この大改造計画は国際競争力の強化、GDPに占める海外直接投資の拡大、GDP比率に占める民間部門の比率拡大など、民間部門による国内経済の拡充が挙げられています。よくよく読めば実は軍事産業育成による部分も多く書かれています。これには理由があり、サウジアラビアの買う武器のほとんどはアメリカやヨーロッパ製で基本的に海外調達のため、この膨大な量の兵器購入は一種の大きな外貨流出になっています。そのため武器の内製化はサウジアラビアの大きな課題の一つであります。
もちろん「サウジビジョン2030」の中ではそれ以外の産業育成にも熱心です。特に過去の連載で何度も取りあげてきたエンターテイメント関連の育成にはサウジアラビアの皇太子殿下、ムハンマド皇太子の肝いりの施策でもあることから、特に力が入っていると言えます。
今後のサウジアラビアのビジョン2030に向けた動きを本当に簡略化して説明しますと、「オープンな国になることでより観光客が入ってくることにより、国内サービス業も活性化し、移民労働者の比率を下げて、自国のサウジアラビアの若者を活用することで失業率も解消。『開かれた国』という印象からサウジアラビアへの投資が進み国内産業育成、国内人材の育成も進み、国内のエンターテイメント業界も発展し、今までサウジ人が海外に落としていた娯楽費を国内に還流。ほかにも様々な産業育成も進み皆が健康的な国民となり、サウジアラビアが名実共に大国、強国となる、具体的には世界19位から15位の経済規模の国家となる」という目論見があります。今回のビザ解禁はその大きな一つのファクターであり、ビザを解禁することについて国内の反対勢力もあったと思いますが、ついに解禁に至りました。
▲サウジアラビア大使館の公式リリース内容
新しいイベントは様々な国とのコラボイベント尽くし
サウジアラビアのビザが解禁になった9月28日からの10日間で、2万4000人の旅行客が観光ビザでサウジアラビア現地を訪れました。観光客の1位は中国人で7391人、2位はイギリス人、アメリカ人などで、その後にマレーシア人やフランス人などが続きます。ここでも中国の存在感を強く感じます。ちなみに観光ビザの第一号も中国人だったと言われています。