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コクヨにおける私の働き方改革 最終章:マネージャー編|坂本崇博
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コクヨにおける私の働き方改革 最終章:マネージャー編|坂本崇博

2020-08-12 07:00
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    2014年、昇格試験を受けてマネージャーへの道を歩みはじめた坂本崇博さん。それまで「早く家に帰ってアニメが観たい」というワガママで意識の低い動機で「My WX(私の働き方改革)」を進めてきた坂本さんが、なぜ管理職を目指したのか? そしてそこで直面した「燃え尽きそうなほどのギャップ」とは?
    自らの半生をサンプルに「私の働き方改革」の普遍化の手がかりをさぐる自己検証編、いよいよクライマックスです。

    坂本崇博『(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革』
    第9回 コクヨにおける私の働き方改革
    最終章:マネージャー編

     入社して十数年、新人研修、営業への配属、新規事業開発プロジェクトを通じて、早く帰ってアニメを観たいという「ワガママ(欲)」に動機付けられ、他の人とは異なるやる事・やり方・やる力で「道を外れる」ことにこだわり、My WX(私の働き方改革)を進めてきた私ですが、ここでまた大きな転機、いえ、大きな壁に直面します。
     その壁はこれまでで最も高く、手掛かりすら見つからない「管理職(マネージャー)としての私の働き方改革」という壁でした。
     その話に入る前に、「そもそもどうして私は管理職になったのか?」というところから振り返ってみたいと思います。

    「管理職・坂本崇博」──爆誕!

     2014年、私は管理職への昇格試験を受けることにしました。これに合格すると、「管理職資格」という位置づけになり、俗にいう「課長」としてチームのマネージャーとして仕事することができるようになるわけです。

     36歳での管理職受験はコクヨという老舗会社の中では比較的若いタイミングでしたので、周囲の先輩、上司から「まだ早い!」とか「もうチャレンジするの?」とか言われるかなと思いつつ相談を持ち掛けました。
     しかし相談相手から返ってきた反応は、「え? 坂本って管理職になりたいの?」というものでした。

     我ながらなんともひどい話なのですが、そのときはじめて私は、「なぜ私は管理職試験を受けるんだろう?」という問いに直面することになったのです。
     そして導き出した答えは、「会社のなかで管理職としてチームを持ち、チームの力を発揮して大きな仕事をして、組織にも社会にも貢献しながら、自己成長を図りたいから」という意識が高いものではもちろんなく、一言でいうと「“ギャップ萌え”だから」でした。

     よくある老舗企業の管理職のイメージは、メンバーシップを重視し、毎週定例会議という名の自分がお山の大将であることを確認する場を開き、従来のやる事・やり方・やる力に従ってメンバーを画一化していくチェック者というものだと思います。少なくとも私はどこかでそういうイメージを持っていました。
     一方で、私はこれまでの10数年間、メンバーシップに時間を費やすことよりも、やることをやってとっとと帰ることに情熱を注ぎ、従来と異なるやる事・やり方・やる力を探り、人と違ったことばかりやろうとする「外道社員」として働いてきました。

     私のイメージにある「王道の管理職」の姿に対して、自分自身が管理職になることで「これまでにない管理職としての外道」を見出して踏み出すことができるかもしれない。外道の探求者として、今このタイミングで私が管理職になるということは、とても魅力的な「道を外れる行為」だったのでした。

     そして、そんな私が管理職になる。そのギャップの大きさは、きっと多くの人にとって意外に受け止められるとも思ったのです。
     雨の日に不良が捨て犬に傘をさしてミルクをあげているような、もしくは日頃はおとなしい眼鏡っ娘が眼鏡をとると急に残虐な殺し屋になるような、そんなギャップの中に感じるそこはかとない「萌え」を私が体現できるかもしれない。萌えの探求者でもある私として、そうした萌え展開にもとても大きな魅力を感じたのです。

     こうして自分の内なる想いがクリアになり、一層管理職になることへの情熱を高めた私は、前述のなぜ管理職になりたいのかという問いにも胸を張ってこう答えることができるようになりました。

     「新しい道に進みたい、それにもえるからです」と。

     この想いを、あえて若干の誤字をしながら論文にしたためて提出したところ「実は熱い男だったらしい」という評価を得られたのか、無事最終面接まで進みました。

     そして面接では、「徹底的に自分を表現する」ことにこだわることにしました。なぜなら私の本質について誤解をされたまま管理職に昇格してしまっては、会社にとっても自分にとっても不幸ですから。

     そこで面接当日、多くの被面接者が待合スペースに、論文とこれまでの成果物(デザインした商品や、設計したオフィスの写真パネルなど)を持参して面接に臨む中、私は、大きな模造紙をつなぎ合わせて作った3mくらいの「巻き物」を持ち込みました。

     そして、よくある面接室、すなわち被面接者1人が椅子に座り、その1メール前くらいに長机をいくつか並べて5名ほどの面接官の部長や役員が座るスタイルの部屋に入り、いきなり自分の椅子を長机に寄せて、巻物を机の端から端までざーっと広げたのです。
     この時点で面接官は面食らったようでしたが、気に留めずに、「それでは、私の半生を巻物にしてきましたのでご説明します」と右端から左端まで、いかに道を外れつつ人生・そして仕事を進めてきたかを解説していきました。
     最後に「管理職になってもこの道を続けていくことを約束します。」と結び、「普通の管理職になろうとしている」と誤解がされないように最大の配慮をしたプレゼンテーションを終えました。

     そこからの質疑応答は、もやは「ブレスト」でした。会社としての変わりたい想いの強さと「何だかわからないけどまず試してみよう」という度胸を確認しながら、部長や役員と私とでどうすればこれから面白い会社として成長していけるかを語り合い、新しい事業のアイデアなんかも飛び出したりと、入社面接同様、とても面白い面接になりました。

     そうしてお互い偽りなく本音を出し合った末、「管理職 坂本」が誕生したのです。

     ちなみにコクヨでは、その年の昇格者を集めて新しいステージに立つことを祝い、気を引き締める「昇格記念訓話会&パーティー」が行われるという慣例があります。その席上で、私の面接の後に順番待ちをしていた先輩から「お前の番のときに面接室からやけに大きな笑い声が聞こえてきたのは何だったのか?」と問われ、「面接が面白かったので」と答えた通り、この昇格試験は、自分が「変」でありたいことを再確認するとともに、入社面接から10年以上たった今もコクヨが「変な会社」であることを再確認する機会にもなったと感じています。

    Mission Impossible:オフィス設計の専門家集団を「管理」せよ

     そうこうしていよいよ、私は所属する部署に新しく発足したグループのグループリーダーに任命されます。
     自ら進んで管理職試験を受けて管理職になったわけですから、組織を持つことは必然ですし、ギャップ萌えかつ変な管理職になるという野望を持った私にとっても1つの夢の実現だったわけですが、現実とのギャップは萌えるどころか大炎上でした。
     なぜなら、グループリーダーである私がグループで一番の若手だったからです。


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