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今朝のメルマガは、イベント「遅いインターネット会議」の冒頭60分間の書き起こしをお届けします。
本日は、株式会社日立製作所フェローの矢野和男さんをゲストにお迎えした「多様化する〈幸福〉とテクノロジー」の後編です。「ハピネス関係度」という幸福の数値化が可能になったことで、どのような変化が起きていくのでしょうか。そして、with/afterコロナ時代における幸福追求のあり方とは何なのでしょうか。(放送日:2020年8月25日)
※本イベントのアーカイブ動画の前半30分はこちらから。後半30分はこちらから。
【本日開催!】
10/6(火)矢島里佳「〈伝統のアップデート〉でなにをもたらすか」
全国の職人と共にオリジナル商品を生み出し、伝統工芸を新しいかたちで暮らしの中に提供する矢島里佳さん。
「伝統や先人の智慧」と「今を生きる私たちの感性」を「混ぜる」のではなく「和える」というコンセプトを掲げた
“0歳からの伝統ブランド aeru”をはじめ、独自のスタイルでの〈伝統のアップデート〉の取り組みが目指すものについて、じっくりと伺います。

生放送のご視聴はこちらから!

遅いインターネット会議 2020.8.25
「幸福」の数値化によって社会はどう変わるのか|矢野和男

「幸福」という新たな物差しとは

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牧野 このアプリケーション「Happiness Planet」を約3週間、4,000人に使っていただいたところ、「HERO」の数字、すなわち持続的に変え得るハピネスの数字が、標準偏差100%のうち、33%向上しました。実はこれと業績との換算式が学問的に知られていまして、この換算式に入れると、10パーセントの営業利益向上に相当するということで、大変大きな数字になるわけです。

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 実際に去年からいくつかの会社で有償で使い始めて、これはいけるということで、7月に「ハピネスプラネット」という会社を作りました。これは組織俯瞰マップという、組織全体を2軸で表現したものに、ある組織の4つのチームのポジションをマッピングしたものです。今月はどうだった、来月はどうなるか、といったことがリアルタイムに評価できます。

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 もうひとつは「孤立した人を作らない」ということが組織のオペレーションとしては非常に大事なんです。孤立した人がパフォーマンスが出ないとか不幸になる、うつ病になるということではないんです。孤立した人がいると、その人だけじゃなく、職場全体のパフォーマンスが下がってしまう。ここで雨模様と表示されているのはそういう孤立した人ですが、このアプリではセンサーを使って、そういう人をケアして、現場をよりよくするためのツールも提供しています。

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 あと、リモートワークになったときに、計画的、意識的な会議や報告はメールや電話やウェブ会議などでできますが、雑談的なものが非常にやりにくくなっています。雑談的なものが少なくなると、先ほどの4ヶ条すべてが下がるんです。そうなると、問題やトラブルや、ちょっとした調整が必要なことが放置されたりして、組織全体がうまくいかなくなってしまうんですね。

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 そこで、このアプリの中に「プチ報連相」という機能を入れました。一般的なSNSも、社内SNSでも、やたらドミナントな人が発信して、ほとんどの人が発信せずにリードオンリーになりがちなんですが、この機能は非常に平等性を重んじていて、1日1回しか発信できないんです。先ほどの4ヶ条に基づいて、ちょっとした気付きや、チャレンジしようとしていること、昨日見た面白かった映画とか、そういうことを通して、チームの一体感を高めている。我々も毎日活用していますし、日立でも社員700人でこれを活用して、リモートワークを活性化するという取り組みをやっています。

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 いわゆるハピネスは、従来の宗教や哲学ではなく、データやサイエンスに基づいて計測し、オリンピックの記録のように常に改善できるもので、そのための鍵が計測と可視化です。そのプラットフォームとなっているデバイスはスマホなので、10億人以上の人が持っていて、アプリをダウンロードすれば生産性の改善にもつながっていく。この幸せ、および幸せをドライブしている尺度は、「ディグリーエッヂ」といって、日本語で言うと「ドエッヂ」になっちゃうので一応英語にしてるんですが、あらゆることのものさしになると思っています。

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 例えば、就職するときには幸せを生んでいるような会社に入りたいでしょうし、取引先としてもそっちの方がいいと思います。また、サービスを受けたり、導入したり、改善しようとするときにもこういう定量的な尺度が役に立ちます。

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 あるいはマンションを買うときに、間取りとか駅からの距離よりも、そのマンションに住んでいる人が、お互いに周りの人を幸せにするような人たちなのかということのほうが大事ですよね。他にも、小売、融資、保険でも、幸せな人を優遇しポイントをつける小売、あるいは幸せな人への融資の金利を下げたり、保険料を下げるといったことをすれば、定量的なインセンティブによって世の中の幸せの度合いを上げていくことができるかなと思っています。

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 というわけで、20世紀はモノをきっちり送り出すこと自体が大事だったので、人を機械の部品のように扱うような仕組みができてしまったのですが、いよいよそういうことを見直す契機がコロナ禍によって訪れたのかなと思っています。人というものを、自らの幸せを求めたり、誰かを幸せにすることで幸せを得たりする、心を持った存在として真正面から捉えることで、企業や社会の動かし方を見直す時なのではないかと思っています。

withアフターコロナ時代における幸福の追求とは

長谷川 ありがとうございます、矢野さんの話を受けて、宇野さんいかがでしょうか?

宇野 非常に刺激的なお話でした。矢野さんにたくさん伺いたいことがあるので、スライドを振り返りながら聞いてもいいですか?

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 いちばん最初に深堀りしたいと思ったのは、スライドの5枚目ですね。ここで、「幸せ」という言葉が初めて出てきますが、この幸せって何なんでしょうか。今のお話の範囲では、幸せとは「人間が高いパフォーマンスを発揮できる心理状態にあること」みたいな定義になるんでしょうか?

矢野 ちょっと違うと思いますね。確かに結果的にはパフォーマンスが高いことになります。ただ、幸せには色んな定義がありますが、私は先ほどの生化学的な現象というのが非常にわかりやすい定義だと思っています。

宇野 ある人間が特定の状態になる生化学現象を幸せという、その定義でずっとお話されていて、それは一貫していて共感するんですが、言葉を扱っている人間として僕個人の意見は、ここで「幸せ」という言葉を使わない方がいいんじゃないかと思っているんですよ。つまりこの状態にあったとしても、自分のことを幸福だと思わない人がいるのではないかというのが、僕の率直な疑問なんですけど、そこはいかがですか?


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