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デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』。今回からは改めて『トランスフォーマー』について、玩具としてのプロダクト展開を歴史的に辿っていきます。
日本のタカラとアメリカのハズブロ社の2社によって作り上げられた「トランスフォーマー」シリーズは、日本とアメリカ、それぞれの美学の綱引きによって移り変わっていきました。
今回はその中でも「合体戦士」に着目し、合体にまつわる日米の価値観の違いをひもときます。

池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝
トランスフォーマー(5)「合体するロボットたちの主体とリーダーシップ」

 こんにちは、池田明季哉です。前回からかなり間が空いてしまいました。実はこの間、1年住んでいたイギリスから日本へと帰国していました。そしてイギリスに滞在した経験を元に書いた小説が電撃大賞で賞をいただき、その出版に追われていました。『オーバーライト──ブリストルのゴースト』というタイトルで、4/10に発売され、続編である『オーバーライト2──クリスマス・ウォーズの炎』が10/10に発売されています。慌ただしい日々を送っていましたが、おもちゃ遊びを欠かしたことはなく、改めておもちゃの可能性を整理していきたいと思っています。よろしくお願いします。

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 今回からは、トランスフォーマーの展開について補足していきたい。
 ここまで「G1」と呼ばれる初期トランスフォーマーのリブランディングがどのような想像力で行われたかを推察し、そしてハリウッド映画版が美学の上でどのように行き詰まったかを整理してきた。いわば原点と現在地点の双方から挟み撃ちにするかたちで、トランスフォーマーが描いてきたイマジネーションを分析してきた。
 しかしこれはトランスフォーマーというブランドが歩んできた35年以上の長い歴史の、あくまで両端にすぎない。その歴史のなかで「魂を持った乗り物」の想像力もまた、大きく変遷してきた。補足をしてなおすべてを語りきることはできないが、特に重要だと思われるアイテムやシリーズの宿した想像力について、メディアでの描かれ方と突き合わせながら確認していきたい。
 トランスフォーマーは、日本文化とアメリカ文化の両義性に本質があると定義した。そしてトランスフォーマーの想像力もまた、日本のタカラとアメリカのハズブロの関係に象徴されるように、日本的な美学とアメリカ的な美学の綱引きによって移り変わっていった。長い歴史を持つぶん、提出されたデザイン・語るべき文脈もまた膨大である。そのすべてを網羅的に紹介できないことは心苦しいが、重要な想像力を持つアイテムをピックアップして、その想像力について論じていきたい。

合体戦士は強いか、弱いか

 1984年にスタートしたトランスフォーマーはそのラインアップを拡げ、1985年には1つのロボット形態に2つのマシン形態を持つ「トリプルチェンジャー」であるブリッツウィングやアストロトレイン、また複数のトランスフォーマーが合体する「合体戦士」である「ビルドロン巨人兵 デバスター」といった、印象的なキャラクターが登場した。

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▲ビルドロン巨人兵 デバスター。6体のロボットが合体する。(出典:『トランスフォーマージェネレーション デラックス ザ・リバース:35周年記念バージョン』 (メディアボーイ)P13)

 まず、この「合体戦士」の受け止められかたについては触れておきたい。「複数の主体を持ったロボット/マシンが合体すると、さらに強くなる」という文化は、1970年代の数々の日本ロボットアニメをはじめ、タカラにおける玩具発のシリーズとしては「ミクロマン」、そしてそれを引き継いだ「ダイアクロン」の時点ですでに確立されていた。デバスターの原形となった「ダイアクロン 建設車ロボ」もまた、こうした想像力を下敷きにしていると見ていいだろう。

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▲ダイアクロン建設車ロボ。(出典:『ダイアクロンワールドガイド』(ホビージャパン)P72)

 ところがデバスターには、明確に異なった特徴がある。確かに合体によって強力な力を得るのだが、合体する6人の意志がバラバラのため、知力が下がっているという弱点が与えられているのである。


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