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『ザ・ホワイトタイガー』──「歌って踊らない」インド映画から見つめ直すカースト制度|加藤るみ
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『ザ・ホワイトタイガー』──「歌って踊らない」インド映画から見つめ直すカースト制度|加藤るみ

2021-06-08 07:00
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    今朝のメルマガは、加藤るみさんの「映画館(シアター)の女神 3rd Stage」、第17回をお届けします。
    今回ご紹介するのはNetflixオリジナル作品『ザ・ホワイトタイガー』です。一部地域では現在も根強く残るインドのカースト制度。本作は身分の差に苦しむ青年・バルラムが差別意識を持つ上流階級の人々に立ち向かう姿を描きます。
    るみさんは本作を観て、単なる「サクセスストーリー」とひとことで言い表すことはできない、深く胸に突き刺さるものを感じたようです。

    加藤るみの映画館(シアター)の女神 3rd Stage
    第17回 『ザ・ホワイトタイガー』──「歌って踊らない」インド映画から見つめ直すカースト制度

    おはようございます、加藤るみです。

    この前、人から「結婚して何か変わったことある?」と聞かれて、小一時間くらい考えていました。
    結婚前は東京に住んでいたので、そりゃあ住む場所は変わったといっちゃ変わったけれど、そういうことじゃないよなあと考えてました。
    もっとこう、内面的なことだろうと思っていて、ひとつ思いついたのは、お花を飾るようになったことでした。
    結婚する前は、お花を貰ったら慌てて飾るくらいで、そもそも自分でお花を買ったことなかったなあと。
    お花を買うようになってから、それまでは気にしたことすらなかった季節のお花を知るようになって、見たことはあるけど名前は知らなかった花の名前を覚えて、お花屋さんに行くのも楽しみのひとつになりました。

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    私の夫は、"ぶりっこ"という言葉がよく似合う人なんですけど、お花を飾ると「うわぁ〜! 可愛い〜!」と喜ぶんですよ。
    その時にすごく心が満たされたような気持ちになるので、私はお花を飾りたくなるんだと思います。
    おそらく、夫のぶりっこは才能で、いつもその可愛らしいリアクションに羨ましいなあと思うほど。
    あざとさが一切ない純真なぶりっこであるから、凄いんですよね。
    夫とは反対に、私は昔から「冷めている」とか、まろやかに言うと「落ち着いてる」と言われてきたタイプで、お花の可愛さはもちろん、華やかな光景を見ても素直に反応できない性格でした。
    これは、おそらく思春期を捧げたアイドル生活の影響もあるかと思うんですよね。
    まだ無邪気に鼻くそをほじっていたい14歳の少女だったはずなのに、人生初の給料を貰って、まだ知らなくても良い"確定申告"の勉強をし、超女コミュニティで戦の毎日を送っていた生活が私をそうさせたのだと思っています。
    まあ、もともとの性格もあるかもしれませんが、今思うと、大人の世界を知るのが早すぎたんだと思います。
    同世代の女子が虜になるパンケーキを目の前にしても笑顔になるわけでもなく、無言で写メって秒で食べ、夢の国へ行ったとしても「カチューシャなんて頭が痛えよ」なんて思っていたのだから。
    夫のおかげかわからないですが、今ではパンケーキを食べる時は思いっきり笑顔になれるし、夢の国へ行ったら舞浜駅過ぎてもカチューシャ外さないレベルに人間らしくなれたとは思っています。
    長くなりましたが、何が言いたいかと言うと、結婚して変わったことは、「お花を映えのためだけでなく、人のために飾りたいと思えるようになったこと」なんだと思いました。
    これからの私に言っておきたいことは、自分にどんなに精一杯でも、一輪の花を気にかける心の余裕を持って生きなさいということです。
    これからも人生がんばれ、私。

    さて。

    今回紹介する作品は、『ザ・ホワイトタイガー』('21)です。

    インド出身の作家アラヴィンド・アディガによる、『グローバリズム出づる処の殺人者より』というベストセラー小説が原作で、Netflixが映画化した作品です。

    私はインド映画をオススメすると、「歌って踊るのがあんまり好きじゃない」と言われることが多々あります。
    確かに、インド映画といえばいきなり歌って踊り出すイメージがありますよね。
    約25年前に上映された『ムトゥ 踊るマハラジャ』('95)をはじめ、最近のヒット作では『きっと、うまくいく』('09)や『バーフバリ』('15)など。
    ちなみに、そのようなインド映画のことをボリウッドムービー(ムンバイの旧称ボンベイの頭文字"ボ"を取り、"ハリウッド"をモジった造語)というのですが、そもそもインド映画は「なんで歌って踊る映画が多いの?」と思う方がいるかもしれません。
    その理由は、インド都市部では"マサラ上映"といった、上映中に歌ったり、踊ったり、手を叩いたり、歓声を上げたりと、自由に映画を鑑賞するスタイルが当たり前とされているからなんですね。
    いわゆる、日本で言う"応援上映"です。
    歌って踊り、一喜一憂しながら映画に"参加"するのがインド流の映画の見方なんです。

    しかし最近では、そういったボリウッドムービーに加え、新たな魅力を発揮するインド映画も観られるようになりました。
    最近、いや結構前から、もうインド映画は歌って踊る"だけ"じゃないんです。
    なんていったって、映画の年間制作本数は世界ナンバーワンの映画大国インド。
    2017年のデータですが、年間約1900本ほどの映画を製作してるんですね。
    歌って踊るだけのインド映画のイメージを抱えている人は、早急にインド映画のアップデートをしてください。

    まさに、今回紹介する、『ザ・ホワイトタイガー』は、"歌って踊らない"インド映画なんです(アメリカとの合作ではありますが)。


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