(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
2020年からのコロナ禍という危機をバネに、強制的に働き方改革が進展したようにも見える現在。たしかにICT活用が飛躍的に進み、テレワークの選択肢が当たり前になりましたが、それは本当の意味で一人ひとりの働き方を向上させることにつながっているのでしょうか? 「私の働き方改革」の観点から、改めて現状を整理します。
(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第5回 コロナ禍でも、「私の働き方改革」は進んでいない
あらすじ
コロナ禍によって世界は大きく変化したことは確実です。
個人や組織の働き方についても、ICT活用が大幅に進展し、テレワークが当たり前の選択肢になりました。
コロナ禍前に多くの企業が頭を抱えていた「ICT活用不足」「柔軟な働き方が浸透しない」といった難問たちは、これまでの働き方改革推進部署の努力をあざ笑うかのように、一気に解消されました。
果たしてコロナ禍で、働き方改革はもはや「過去のテーマ」になってしまったのでしょうか?
今回は、「私の働き方改革」の視点から、コロナ禍の変化について整理しながら、やはりまだまだ「私の働き方改革」には至っていないのではないかという投げかけをしていきたいと思います。
コロナ禍が生み出した新たな熱狂
最近こう聞かれることがあります。「坂本さん、コロナ禍によって強制的に働き方改革ができてしまった中で、働き方改革のコンサルティングってもういらないんじゃないの?」と。
私の答えはNOです。
2021年春、世界はCOVID-19(新型コロナウイルス)による経済社会の大混乱の最中にあります。疫病という外敵によってもたらされた社会経済活動の強制停止は、個人の生活、そして企業の生産活動に未曾有の被害をもたらしました。
通勤、登校、集会、外食など、これまで息をするように当たり前に営まれていた様々な活動が禁止や自粛に追いやられ、生活習慣の抜本的な見直しを迫られています。
そうした中で、意識が高い人たちは「ピンチはチャンス」と口を揃えわめき立て、「withコロナ時代のニューノーマルとは?」と問いを掲げ、毎日オンラインセッションを開催しながら、これからの世界を予測し合って「政府はこうすべきだ」「社会はこうなっていくべきだ」「コロナによって日本の働き方改革が強制的に実行されてしまった」と盛り上がっています。
この状況は、日本中で働き方改革がブームになった2016年前後の状況を彷彿とさせます。
当時も今と同じく、メディアの論客や経営者、コンサルタントたちがこぞって「働き方改革とはこうあるべし」と持論を展開して、政府や企業への提言を“あさっての方向”に向かって発信していました。違ったのは、その発信の仕方がオンラインセッションではなく、広い会場を貸し切りしたシンポジウムであったことくらいです。