(ほぼ)毎週月曜日は、大手文具メーカー・コクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として活躍する坂本崇博さんの好評連載「(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革」を大幅に加筆再構成してリニューアル配信しています。
働き方イノベーターの条件は、働くうえでの選択肢が広いこと。「意識が高くない」大多数の社員がさまざまな情報への感度を高め、選択肢を広げていく(オタクならではの)コツを紹介します。
(意識が高くない僕たちのための)ゼロからはじめる働き方改革〈リニューアル配信〉
第15回 選択肢拡張術 ①アンテナ脳を鍛える
あらすじ
前回、働き方イノベーターは「選択肢が広い」こと、そしてそのために自分の意図を明確に持ちながら、多様な事象にアンテナを張って「知っていることを広げている」ことを紹介しました。
今回は、そうした働き方イノベーターに私たちがこれからなるために、どうすれば多様な事象にアンテナを張れるようになるのかについて考えたいと思います。
キーワードは「脳」です。ちょっとした工夫で自分自身の脳をコントロールして、日頃実践できていなかった習慣を身につけるテクニックをご紹介したいと思います。
「もっとアンテナを張れ」という精神論からの脱却
社会に出ると「もっと世の中の情報にアンテナを張れ」と精神論的な指導がされることがあります。そうした指導に対して「どうやって?」と具体論を聞くと、たいていは新聞を読め、いろんな本を読め、人の話を聞けといった分かりきった答えが返ってきてモヤモヤすることはないでしょうか。
ただ、これは質問する側が悪いのかもしれません。「どうやってアンテナを張ればいいですか?」という質問だと、こうした答えになることもやむを得ないでしょう。
私は、アンテナを活発に張ることができていない人が発するべき問いは「どうすれば日頃できていない行動習慣を、自然にやれるようになれるか?」であると考えます。つまり、アンテナを張るという行為への着目ではなく、「普段できていないことができるようになる」ことに着目し、その自己改革を図るべきだと思うのです。
日頃からアンテナを張って様々な情報を収集できている「意識の高い人」は、そういった問いを立てるまでもなく、様々な情報をキャッチして自分の認知に加え、アイデア出しに生かしています。
しかし、私のようにそんなに意識高く生きてこなかった人間は、自分の興味のないことにわざわざアンテナを張るなんて「面倒だ」と感じるものです。もはやこれは習性・感性と言ってもよいでしょう。
ですので、たとえやりたい事がある程度明確になったとしても、日頃からアンテナを張るという行動に慣れていない私たちは、染みついた引き篭りの習性・感性を切り替えることに注力をしなければなりません。
無意識的に様々なことにアンテナを張る「脳を」鍛える
その一つとして私が実践していることが、脳をだます習慣づくり、名付けて「ドーパミン・コントロール」です。
脳研究の第一人者である東京大学大学院の池谷裕二教授曰く、「人のやる気は脳内で分泌されるドーパミンによって引き起こされる」そうです。
そして、ドーパミンは快楽物質とも言われます。一度何らかの行為でドーパミンが分泌される興奮状態を覚えると、無意識的に、つまり脳が勝手に「もっともっと」とそれを繰り返させようとするというのです。これが俗に言う「ハマる」という状況です。
たとえば、スマホゲームの「ガチャ」でレアキャラをゲットしたときなどがそうです。ギャンブル性が高いゲームで勝つことでドーパミンが分泌され、その行為を無意識的に、つまり脳が勝手に「好んで行う」ようになるのです。
以前、池谷氏と対談させていただく機会があったのですが、こうしたお話をお聞きしながら、私の中で、何か新しい情報を得るという行為に「ハマる」ことができれば、自然に新しい情報に注意を払う人間(脳)になれるのでは? と考えるようになりました。
そして、「何かにハマる」ことは私のような意識が高くないオタク層にとってはお手のものです。要は、ちょっとしたコスト(時間・お金・勇気)をかけてアニメを視聴したりグッズを購入することで「快感」を得てしまえばよいわけです。
たとえば、こう見えて私も10年くらい前までは美少女フィギュアなんてさすがに恥ずかしくて買ったことはありませんでした。自分の中で「超えてはいけない一線」のようなものがあったわけです。しかし、あるときUFOキャッチャーでもうひと押しで取れそうだった『ワンピース』のナミのフィギュアをついついGETしてしまいました。UFOキャッチャーで景品が獲得できた興奮と相まって、「フィギュアを所有する」という沼にハマってしまった私は、今もそこから這い上がることはできず、ゲームセンターでフィギュアを見つけてはついついお金をつぎこんでしまう「脳」になっていったのです。
話を戻すと、「アンテナを張る」という行為が習慣にない人は、一度でも良いので、アンテナを立てて情報収集して快感を得るという、「沼にハマる」ために一歩踏み出すことが大事ということになります。