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勇者シリーズ(5)「伝説の勇者ダ・ガーン」(前編)|池田明季哉
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勇者シリーズ(5)「伝説の勇者ダ・ガーン」(前編)|池田明季哉

2023-10-24 07:00
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    デザイナー/ライター/小説家の池田明季哉さんによる連載『"kakkoii"の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝』
    今回は「谷田部勇者」シリーズ最終作にあたる『伝説の勇者ダ・ガーン』について分析します。ある意味ではChatGPTをはじめとするAIモチーフの先駆けとも考えられる、ダ・ガーンの新規性とは?

    池田明季哉 “kakkoii”の誕生──世紀末ボーイズトイ列伝
    勇者シリーズ(5)「伝説の勇者ダ・ガーン」

    ■憧れの器となった「隊長」

    『勇者エクスカイザー』『太陽の勇者ファイバード』に続く勇者シリーズの3作目となるのが『伝説の勇者ダ・ガーン』(1992年)である。勇者シリーズ全8作品のうち最初の3作品を、アニメーションを担当した監督の名前から「谷田部勇者」と分類できることはすでに述べた通りだが、『伝説の勇者ダ・ガーン』はその最終作品ということになる。
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    ▲『伝説の勇者ダ・ガーン』のポスター。地球が背景に置かれている。
    勇者シリーズデザインワークスDX(玄光社)p59

    本稿では、トランスフォーマーを日本的にローカライズさせた「トランスフォーマーV」から勇者シリーズの基礎構造を確立した「エクスカイザー」に対して、「ファイバード」はそれを引き継ぐかたちでその想像力を深化させたと考えた。スターセイバーとジャン少年の関係は「父子」であり、エクスカイザーは戦うロボットと少年に相補的な役割を持たせていた。ファイバードにおいてそれが「兄弟」と定義されたことから遡って、エクスカイザーも構造的には兄弟的な関係性と言えるだろう。

    一方、ダ・ガーンではこの構造が変化する。主人公の星史少年は、オーリンと呼ばれる不思議な宝玉に選ばれた存在である。そして本作の勇者ロボであるダ・ガーンは、古代から地球にある「勇者の石」に眠っていた超常的な(「伝説の」)存在であり、それがたまたま近くにあったパトカーと融合した結果、ロボットの姿を得る。星史少年は地球の生命力「プラネットエナジー」を吸い尽くそうとする侵略宇宙人オーボス軍と戦うことになり、そのために世界中に眠る勇者の石を見つけ、そこに眠る勇者たちを目覚めさせていく使命を帯びる。

    星史少年は勇者たちを率いる「隊長」であり、勇者たちに命令しながら戦うことになる。ここに至って、ロボットと少年の上下関係は逆転する。星史少年は指揮官であり、勇者たちはその指示に従って戦う。星史少年の采配のまずさによって勇者たちがピンチに陥るエピソードもあれば、星史少年が成長していくことによってチームはその能力を高めていくこともある。このことは勇者たちが「キャプテン」「大将」「隊長」「酋長」と異なる呼び方をすることによってことさら強調される(「酋長」という意外な言葉選びについては後述する)。

    「ダ・ガーン」は、ロボットが主体的な任務を帯び、それを少年がサポートするという構造を脱却している。もちろん地球を救うという使命そのものはダ・ガーンも共有しているが、少年の側に主体があり、ロボットはそれを拡張する存在として従属している。

    これは星史の造形にも見てとることができる。「エクスカイザー」のコウタ少年は「子供」として描かれていたし、「ファイバード」のケンタ少年が「火鳥兄ちゃん」と対置されていたことはすでに述べた。これまで少年たちが「身近さ」を、そしてロボットたちが理想像として「憧れ」を担ってきた。しかし星史少年は違う。親のいない家にひとりで暮らし、鏡に向かって身だしなみを整え、「よし!」と笑顔を作りさえする。少々やんちゃで軽はずみな性格ゆえにヒロインに世話を焼かれてはいるが、危機となれば自らヒロインを抱きかかえ救い出す。勇者シリーズにおいて星史は、少年そのものが憧れの器となったはじめての主人公なのだ。このことは、ウルトラマンを思わせるヒーローらしい戦闘スーツのデザインや、ひかる・蛍・ピンクといったタイプの違う美少女たちがヒロインとして現れてくることからも補強されるだろう。

    これは想像力の問題である以前に、商品企画の対象年齢の問題と不可分であることは述べておかなくてはならないだろう。一般に子供の成長は速く、従って興味も移ろいやすい。そのため子供向けのシリーズはふたつの選択を迫られる。ひとつは対象年齢を固定し、同じテイストの内容を繰り返すことでユーザーを入れ替えていく方法。もうひとつは対象世代を固定し、子供たちの成長に伴って対象年齢を挙げていく方法である。勇者シリーズは(少なくとも谷田部勇者の時点では)明確に後者の戦略を選択していた。実際物語の中においても、コウタ少年が小学3年生だったのに対し、ケンタ少年は小学4年生。対して星史少年は小学5年生と設定されている。星史少年はユーザーの成長とシンクロし、「身近さ」と「憧れ」を同時に宿した、より成熟した存在として置かれているのである。

    ■プロンプトを待つ生成AIとしてのダ・ガーン

    しかし商業的な背景から出発したその設定は、単なる設定を越えて玩具における想像力の記述を更新してもいる。第一話において、覚醒したダ・ガーンを星史は警戒する。ダ・ガーンはそんな星史に命令することを求める。星史はそれを無視するが、結局はダ・ガーンに助けを求める。ダ・ガーンは助けに応じ、敵の状況に対して柔軟に対応、敵を撃破しふたりを救助する。

     
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    最終更新日:2024-11-13 07:00
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