消費があぶり出す新しい政治性の見取図
原田曜平×速水健朗×宇野常寛
『ヤンキー消費とフード右翼
――新しいブルーカラーと郊外文化のゆくえ』
現場レポート
☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 ☆
2014.3.13 vol.029

『ヤンキー経済』で生活保守層の登場を指摘した原田曜平と『フード左翼とフード右翼』で食の消費から政治意識を炙りだした速水健朗。司会・宇野常寛を交えて三者が語った「新しいブルーカラーと郊外文化のゆくえ」とは?

3月9日の夜、おなじみ高田馬場10°CAFEで開催された本イベントは、
夜遅い時間にも関わらず超満員。
あふれんばかりの聴衆を前に白熱した議論は、延長に延長を重ね、
10°CAFE側の断固たるストップが出るまで続いたほどだった……。

この記事ではトークの内容をダイジェストでお届けします!
熱い議論を動画で見たい方は以下からどうぞ(PLANETS会員は無料で試聴できます)。

【前編】
【中編】
【後編】
 
◎文:真辺昂
 
 
「『フード左翼とフード右翼』と『ヤンキー経済』はいわばコインの裏表」
 
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▲原田曜平さん
 
「僕は普段、若い人向けのビジネスをしていて、ずっとどうやって若者に消費させるかについて考えてきました。それで『地方の若者の方が消費意欲があがっているんじゃないか?』と思いはじめて、それが『ヤンキー経済』を書こうと思った最初の動機ですね。調査をしていくうちに〈ジモト/なかま〉を極端に愛する若者像が見えてきて、僕はそれを〈マイルドヤンキー〉と名づけました。そして彼ら〈マイルドヤンキー〉の消費傾向やライフスタイルを若者の協力を得ながら調査する形で、この本ができました。」(原田)
 
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▲速水健朗さん
 
「『ヤンキー経済』でもっとも重要なのは〈マイルドヤンキー〉って言葉を創ったことですよね。巷にはヤンキー論ってたくさんあるけど、原田さんの『ヤンキー経済』は、従来のヤンキーとはまったく異なる新しい消費層(=マイルドヤンキー)を明確に浮き彫りにしている。みんな、ぼんやりと〈ジモト/なかま〉的な若者像を感じてたけど、イマイチその存在を捉えきれていなかった。原田さんはそのポイントをうまくついたと思う。僕の『フード左翼とフード右翼』は、『食文化をみることで都市の富裕層の思想傾向を分析してみよう!』という本で、『消費傾向から政治的立場を切り出そう』と試みているという意味で、『ヤンキー経済』と裏表になっていると思う。」(速水)

「僕はお二人の本を読んで、『これ、どっちも俺のことじゃん』と思いました。原田さんが名づけた〈マイルドヤンキー〉たちの『同年代のやつらとダラダラ/外に出たくない』的心象に僕は少なからず共感するし、一方で速水さんの『フード左翼とフード右翼』の概念で整理すると僕の食文化の変遷はまさにフード右翼からフード左翼への転向なんですよね。そこで問いたいんだけど、果たして僕の消費傾向から政治的立場って判断できるのかな?という疑問がある」(宇野)

この宇野の問題提起を皮切りに議論は白熱。以降「消費傾向と政治的立場はどう相関するのか?」というテーマでトークは進み、「フード左翼はさらに2系統に分けられる」「リバタリアンとオールド左翼が共にフード左翼である問題」「『頭の悪いフード左翼=放射脳』説」など、さまざまな話題にまで及んだ。
 
 
「ほとんどの企業は〈マイルドヤンキー〉の子たちををわかっていないと思います。」(原田)
 
「現代のヤンキーの特徴は、一言でいうと『脱アウトロー化』だと思う。これは重要な変化で、僕はここに2つの漫画作品を挙げることによって議論に補助線を引きたい。一つ目は高橋ヒロシの『クローズ』で、読んでいてびっくりするくらい〈先生〉や〈女性〉といったアイコンが出てこない。『クローズ』は、ヤンキーからアウトローとしての意味が失われた『脱アウトロー』の世界観なんですよね。二つ目は去年最終回を迎えた『頭文字D』で、あの作品で描かれていた90年代の走り屋のコミュニティとそのメンタリティは、原田さんが指摘している〈マイルドヤンキー〉の世界観を先取りしていたのではないか。」(宇野)