▲前回放送はこちらでもお聴きいただけます!
■オープニング・トーク
宇野 時刻は午後11時30分を回りました。皆さんこんばんは。評論家の宇野常寛です。っていうかね、結論から言うともう安すぎですね。83%オフ! 定価2300円が399円ですよ。何かっていうと、僕の本ですね。僕の代表作『リトル・ピープルの時代』が電子書籍版で何と83%オフの399円。これねー、参りましたね。これってほとんどね、ブックオフの100円本並の値崩れですね。いやー、電子書籍とはいえ、こんなのありかよって思うんですよ。ぶっちゃけ、このタイミングでの値下げって、おそらく出版社的には村上春樹がノーベル賞を取ったとき対策だったと思うんですよ。電子書籍って月極めとか週極めとかで特価セールってやってるんですけど、それで11月のラインナップに僕の本を入れていたと思うんです。絶対ね、春樹がノーベル賞取ると踏んでたと思うんですよ。取った時対策で置いてたと思うんですよね。でも、取りませんでしたよね。春樹はノーベル賞を取らなかったけれど、僕の本は83%オフになったわけなんですよ。この事をどう捉えていいかよく分からないですね。
これ、どういう本かと言うと、ちょっと自分で言うのもなんですけど変な本で、ちょうど2011年の震災の年の8月に出した本なんですよ。「東日本大震災と村上春樹と仮面ライダーと情報社会」っていうのが、問題設定というか、テーマなんですよね。もうちょっと言うと、『リトル・ピープルの時代』っていうタイトルから分かるように、前半は村上春樹論なんですよ。リトル・ピープルっていうのは村上春樹の代表作の一つ『1Q84』に出てくる、超自然的な存在ですね。現代社会における悪の象徴みたいなものですよね。まあ、その『リトル・ピープルの時代』と題していますからね、前半は村上春樹論で、村上春樹の初期作品から最新作まで結構細かく読み込んでいくんですよ。で、さんざん色んなことを論じた結果、「このテーマはこれ以上村上春樹を語っていても一切結論は出ない。よって、俺はこれからひたすら仮面ライダーについて語るぜ!」みたいなことで、いきなり仮面ライダー論になって、その後ずーっとライダー論が続くっていうね、我ながらすごい、めちゃくちゃ熱い本なんですよ。で、その本がいま、超安くなっているってことなんです。
もう、まさに村上春樹の学生運動時代から現在までの40年間と、仮面ライダーの40年間の歴史を重ね合わせると、戦後日本の文化の本質が見えてくると。そういう内容なんですよ。本当に、こんな本を書くのって世界中で僕しかいないと思うんですよね。自分で言うのもなんですけど。その僕の代表作がいまならなんと、399円。これね、普通怒りますよね。「なに勝手に人の本ディスカウントしてるんだ」と。でもね、皆さん気づいてると思いますけど、僕一切怒ってないじゃないですか。なぜかというと、この本って震災をテーマに書いたんで、印税全部寄付することにしているからなんですよ。1年目はあしなが育英会みたいな震災遺児ですね、地震でお父さんやお母さんを亡くしちゃった子供たちの支援機構に寄付してたんですけど、その活動期間が終わっちゃったんで、今は赤十字社に寄付しているんですけどね。なので、全部寄付することにしているんで、いくらディスカウントされても僕ノーダメージなんですよ。これね、意外な発見。だからこんなに超絶ディスカウントされてもガンガン宣伝出来るんですよね。ぶっちゃけ、僕にどうせ1円も入んないだったら、もう全部0円でダウンロードでもいいんですけど、それだと出版社が潰れるんで、皆さん399円で買ってください。
評論家だから、僕のことが気に入らないって人もたくさんいるんですよ。評論家って、意見がアイデンティティなんでね。意見っていうと、当然反対意見が出てくるじゃないですか。だから僕のことを気に入らないって人もいっぱいいると思うんですけど、この本はいくら買っても僕に1円も入らないので、なんか「宇野の事は嫌いでも、『リトル・ピープルの時代』は嫌いにならないでください」みたいなね(笑)。そんな感じで、僕みたいなオタク野郎が気に入らない人もぜひとも読んでみてください! それではJ-WAVE「THE HANGOUT」今夜もスタートです!
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宇野 あらためましてこんばんは。評論家の宇野常寛です。J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」月曜日、始まりましたー。Twitterで結構反響がありましたね。
「同じKindle版でも元の価格で購入した僕ら涙目」
あ、ありがとうございます! いや、2300円払って買ってくれた方々の悲痛な声がTLを賑わせてますね。これはtwitterネーム、千秋クリストファさん。
「初版で買いましたよ。『リトル・ピープルの時代』」
いやー、本当に申し訳ないです。皆さんが余分に払った2000円は何だったんでしょうね。2000円あったら結構コンビニで贅沢出来ますよね。最近のデフレ居酒屋だったら1.5食分ぐらいの金額ですよね。本当にすみません。あのー、何て言ったらいいのかな、この399円のを買ってくれた皆さんは、浮いたお金でちょっと贅沢してください。つけ麺屋に行って全部盛りにするとかね。なんかこう、小さな幸せをね、得てくれたら著者として本当に本望です。
▲宇野常寛『リトル・ピープルの時代』(Kindle版)が今なら399円!
(※Kindleはスマートフォンの無料アプリでも読めます)
はい、この番組は夜更かし族の皆さんのたまり場です。ツッコミや質問も大歓迎! 皆さんの積極的な参加も超絶お待ちしております。ハッシュタグは#hang813です。メールの方はこの番組のウェブサイトのメッセージボタンから送って下さい。番組ウェブサイトではYouTubeLiveでスタジオの様子を同時生配信中です。そして、毎週月曜日は、番組終了後、ニコニコ生放送のPLANETSチャンネルで延長戦をやります。番組内で語りきれなかったことなどさらにディープに語ります。
というわけで宇野常寛がナビゲートJ-WAVE「THE HANGOUT」今夜の1曲目は僕の代表作『リトル・ピープルの時代』にちなんでこの曲を選びました。それでは聞いて下さい。『仮面ライダーW』のOPテーマ、上木彩矢 w TAKUYAで「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」
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宇野 「さあ、お前の罪を数えろ」。はい、お送りしましたのは『仮面ライダーW』のオープニングテーマ、上木彩矢 w TAKUYAで「W-B-X 〜W-Boiled Extreme〜」でした。
■フリートーク
宇野 あらためましてこんばんは、J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」月曜担当の宇野常寛です。今日もたくさんメール頂いております。これはですね、ラジオネーム、決死のガイラーさん。なんかすごいHNですね(笑)。
「先週の宇野さんの、意識が高くて深く考えている人間の目が輝く社会にしたい、というお話にとても共感しました。自分はいま、学生のための政策立案コンテストを主催する学生団体に所属している、いわゆる意識高い系の学生です。自分としては『税と社会保障』『地方創生』など、将来の日本の形を定めるような問題が政治領域で取り扱われてる一方、大半の若者の政治意識が低いのが現状です。宇野さんはこの現状についてどう思われていますか? 解決策として考えられていることがあれば、教えてくださると幸いです」
えーっと、僕の考えはわりとシンプルですね。意識が高い人間を増やす、という発想に立っている限り、世の中は良くならないですね。いろんな事情があったりして、誰もが意識高くなれないですし、人間って、意識高い状態を維持することができないじゃないですか。意識高い状態っていうのはなかなか持続しないんですよ。だって、24時間のうち、意識高くいられるのってせいぜい2,3時間ですよね。はっきり言ってしまうと、そこに結構無理があるんですよ。意識高い人を増やす、という方向で考えているかぎり、「なぜ大衆は目覚めないのだ」とか、「なぜ意識低い人間が多いんだ」っていう悲観論にしかならないんですよね。そこで、「そんな世の中で、希望を捨てない俺カッコいい〜」みたいな話にしかならないんですよ。
で、これを解決するには、人々が意識的に社会にコミットすることで世の中が良くなるという考えをやめて、何かこう、人間同士をつなぐ方法を考えたほうがいいんですよね。無意識のレベルでつないでいくとか、人間っていつのまにか繋がっちゃう生き物じゃないですか。でも、わりと政治とか、こういう議論が好きな人っていうのは「意識高い人が超すごい決断をして、自己責任で人々と繋がっていくと社会が良くなる」って考えがちなんですよね。でもそうじゃなくて、人間っていうのはほっといても繋がるんだから、それをどう暴走しないようにマネジメントするのかっていう発想に切り替えた方が、僕は良いかなっていうふうに思っています。
そもそもこの、意識高い、低いっていう分け方自体が、20世紀までの考え方といえば考え方なんですよね。僕もよく使っちゃうんだけど。これ、衆議院と参議院もそうじゃないですかね、ポピュリズムと熟議ですよね。あとは、テレビと映画とかね。メディア論でいうと、テレビと本とかの差もそうじゃないですか。意識高い人間は映画とか本が好きで、意識低い人間はテレビをダラダラ見るとかね。でも、結局人間っていうのはそのどちらでもないんですよね。ある時は意識高いし、ある時は意識低いんですよ。人間のそんなアナログな本性ってものにコミットするのが、インターネットだったりするわけですよね。インターネットって、テレビよりも意識低く使えるし、着信があったものだけに反応するだけって使い方も出来るし、自己発信ができるから、映画とか本よりもアクティブに使えるんですよ。もちろんその中間もできますよね。なので、20世紀の後半に、ようやく人間っていうのは人間本来の本性にそのままアクセスできるメディアを手に入れた、って考えた方がいいと思うんですよ。このテクノロジーを使って、社会を作り直していくっていうふうに考え直した方がいいんです。
いままではたぶんテクノロジーの限界で、超意識高い人間か、超意識低い人間かの、2種類しか考えることができなかったんですよ。だからメディアは映像でいうと映画かテレビしか無かったし、議会制民主主義も熟議によるエリーティズムかポピュリズムっていう、そのどっちか。参議院と衆議院のどっちかしかならなかったわけですよね。なので、発想を切り替えていくのが僕は大事だなというふうに思ったりもしています。はい、もう1通読んでいる時間はないわけですね。
はい、Twitterのハッシュタグの方は#hang813、メールの方は番組のHPから送って下さい。この後11時55分からはみなみのさわ……また間違えました(笑)、南沢奈央ちゃんのNIPPON SEKIJUJISHA "GAKUKEN" The Reason Whyのお時間です。そしてJ-WAVE「THE HANGOUT」各曜日のナビゲーターが毎週共通のテーマや旬のトピックを語る、シェアザミッションのコーナーもあります。そして、アナーキー・ミュージックシェアのコーナーでは、J-WAVEの他の番組では絶対かからないであろうアニメソング、特撮ソング、アイドルソング、映画やドラマの主題歌や劇伴などなど、アナーキーな1曲をリスナーの皆さんの選曲でお届けしちゃうコーナーです。メールの方、まだまだ受け付けております。そして、今夜から新コーナー、ワーカーズ・ディライトもスタートします。宇野常寛がこのあと深夜1時まで生放送でお届けします、深夜のたまり場「THE HANGOUT」ここで一旦お知らせです。
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宇野 J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」六本木ヒルズ33階、J-WAVE、Bスタジオから生放送です。月曜日は宇野常寛がナビゲーターを務めております。えー、もうちょっとメールいきますね。なんか今日はヘビーなメールが多いですね。ラジオネーム、もしプロさん。
「この間、有効求人倍率が久々にダウンしたというニュースがありました。アベノミクスや増税と急激にいろんな事があって、一時期より就職が楽になったように感じるのですが、今後どのように雇用が変われば世の中が良くなると思われますか?」
これもう、すっごく難しいテーマですね(笑)。これだけで3時間しゃべらないとケリがつかない気がするんですけど、僕の考えでは、仕事ってどんどん無くなっていきますよ。単純に、自動車の運転が自動化されるまで指折り数えて待つって感じですからね。なので、将来的には一握りの人間が、趣味で働きたい人間とか、クリエイティブな事をしたい人間だけが働いて、他の人たちがベーシックインカムで暮らす世の中っていうのはいずれ訪れると思いますね。まあ、僕らが生きている間に来るかどうかは分からないですけどね。なので、問題はむしろそういった世の中になった時に、人間ははたして、生き甲斐とかやり甲斐とか承認の問題とか、そういったものを解消できるのかどうかっていう事が、僕は大きな問題になってくるんじゃないかなと思います。これはもちろんすごく長期的な話で、短期的には、むしろ誰もが正社員になれた時代に無理やり戻すのか、それともフリーターでも世の中何とか暮らしていけるように社会保障をちゃんとするのがどっちがいいかですね。僕は後者の方が良いと思ってますけどね。まあでもこれは結局バランス調整の問題なんで、あんまり本質的な議論だとは思ってないですね。はい。次行きましょう。次はですねラジオネームこれは、イオリフリーダム・セロニアス時貞さん。
「宇野さんこんばんは。寒くなり、キムチ鍋と心が熱くなるようなヤンキー漫画の季節になりましたね。そこで、宇野さんおすすめのヤンキー漫画を教えて頂ければ幸いです。ちなみに私は『疾風伝説 特攻の拓』が好きです」
いや、僕はこれ『クローズ』一択ですね。もうね、高橋ヒロシ信者ですよ、僕は。あいつら、『クローズ』に出てくる鈴蘭(高校)とか武装戦線のやつらって、あんまりアウトローじゃないじゃないですか。不良じゃないんですよね。大人社会に反抗とかはしていないんですよ。だって、大人とかあの漫画にはほぼ出てこないですからね。あと、女子もほとんど出てこないじゃないですか。だから本当に閉じた世界の中で、結構権力争いをしてるだけなんですよね。あの狭さがね、逆にいいなと思っているんです。僕は「はみ出し者の俺カッコいい」みたいな感じもあんまり好きじゃないし、「大人に反抗してる俺カッコいい」ってのもあんまり好きじゃないんですよ。あの中で、男同士の美学と友情のためだけに戦ってるやつらが1番美しいと思うんです。なので、『クローズ』はもうね、美しさしかないですね。
っていうか僕は『クローズ』を大河ドラマにしたいんです。本当に(笑)。冒頭で坊屋春道が転校してきて、校舎に辿り着いてきて「俺は不良でもなければ、ヤンキーでもない」みたいな事を言うんですよ。で、「グレてもなければなんでもない」と。「単に喧嘩が好きで勉強が嫌いなだけさ。でもそれでいーじゃねーか」っていう名台詞を言うんですよね。それで第一話が始まっていくんですよ。あ、ちなみにいま僕は大河ドラマ『クローズ』第一話を妄想してますからね(笑)。こう、鈴蘭高校の校舎が映って、THE STREET BEATSの「I WANNA CHANGE」がBGMでかかるんですよ。「ワイルドサイドの友達に~♪」って。すみません、長くなりました(笑)。
はい、この番組はあなたの参加をお待ちしております。Twitterで皆さんから色々とツッコミや質問を下さい。ハッシュタグは#hang813です。メールの方は番組HPのメッセージからどうぞ。番組HPではYouTubeLiveのスタジオの様子を同時配信中です。J-WAVE「THE HANGOUT」、この後は南沢奈央ちゃんがお送りするNIPPON SEKIJUJISHA "GAKUKEN" The Reason Whyのお時間です。僕はまた後ほど戻ってきます。では、南沢奈央ちゃんにバトンを渡す前に1曲お聴きください。ここではね、毎週1曲、南沢奈央ちゃんに捧ぐ曲をお届けしています。今週は結構奈央ちゃんのブログからネタを拾ってきました。奈央ちゃんが『妄想って、凄いかもしれない』ってブログを書いてるんですよ。なんか、奈央ちゃんがたんこぶを作っちゃったらしくて、そのたんこぶについて可愛く妄想をめぐらしているんですよ。「どこかに頭をぶつけたかもしれない」「実は爪でカリカリやったら簡単に剥がせるシールなのかもしれない」「何かが寄生したのかもしれない」「寝ている間に宇宙人によってICチップを埋め込まれたのかもしれない」……いや、奈央ちゃんって本当にイマジネーション豊かですよね。なんか、大人になっても想像する心を忘れないなってところが、すごく可愛いなって僕は思うんです。ということで、夢見がちで想像力豊かな奈央ちゃんにピッタリな曲を選びました。それでは聴いてください。アニメ『スクライド』のOPテーマ、井出泰彰で「Reckless fire」。
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宇野 J-WAVE深夜のたまり場「THE HANGOUT」。あらためまして月曜担当ナビゲーターの宇野常寛です。いきなりまた変な事言いますけど、僕、一昨日かその前かな、都道府県知事同士の対談の司会とかやりましたよ。三重対岩手で、三重県の鈴木英敬知事と岩手県の達増拓也知事の対談の司会をやったんです。僕が10年くらいやっている「PLANETS」っていう雑誌の最新号をいま作っていて、来年の1月末に出るんですが、テーマが東京オリンピックなので、「2020年の東京と地方の関係を考える」っていうテーマで、たまたま他の仕事で一緒になった、岩手県の達増知事と、三重県の鈴木知事が、二人で意見を戦わせるっていう、そういった記事の司会をやったんですよ。
東京五輪って、いくら「地方創生」とか美辞麗句並べていても、事実上は「地方は置いていきます宣言」なんですよね。もう、東京一極集中で行きますよ、と。否応なくそうなるんだからしゃーないでしょ、って感じで、この先開発が行われていくわけですよ。実際に、重機とか建築資材が東京の湾岸の方に回っていて、東北の復興が遅れているわけですよね。だから、2020年のオリンピックに向けて、地方はこの先どうやっていくのかってことを今から真剣に考えないと、間に合わないと思うんですよ。で、僕はとりあえず金をぶち込むべきだ思ってるんですよ。特に東北に関しては。ただ単にお金だけぶち込めばいいわけじゃないけど、せめてカジノで儲けたお金を復興支金にするぐらいの事はやらないと、たぶん東北の人間は納得しないですよね、普通に考えて。あとは、オリンピックはお金がいろんなかたちでつきやすいイベントなので、いろんな方法でオリンピックの収益を上げて、それをどんどん東北にぶち込んでいくのがいいと思うんです。
対談をやっていて、結構、僕も含めて3人でしゃべっていたんですけど、面白い話が出たんですよ。それは、いま都道府県だけが物語の語り手になれるっていう、そういう話題なんです。これがどういう事かというと、国っていうものは大きすぎて、もう物語を語れないんですよ。理想とか、こんな社会にしたいってものをドラマチックに語ることが、難しくなっちゃうんですよね。なぜかというと、もう国家って大きすぎて、無数に存在するいろんな人の価値観とか、いろんな人が信じている物語っていうのを調整することしかできないんですよ。1億人とかが同じ列島に住んでいるとね、実際に。それに対して、市町村というのは生活に密着し過ぎて、理想や理念を語る余地がないんですよね。具体的に「保育園足りねえんだけど、どうすんの?」とか「川氾濫してんだけど、堤防作れよ」みたいなことしかなくて、あんまり「こんな社会にしたい」とか「こんな文化を育みたい」っていうことを考える余地が無いんですよね。でも、国家と市町村の、その中間である都道府県だったらそれがまだ可能なんじゃないのかってことを、僕らは話していたんです。
理想や理念を語って、こんな社会を作る、こんな文化を打ち出していきたいっていう物語を語れるのは、もう行政府では都道府県のサイズしかないんです。これって、単に規模の問題なんですね。大きすぎても無理だし、小さすぎても無理なんですよ。これ、なかなか面白い発想だと思います。そもそも僕がオリンピック特集の本を作ろうと思ったのは、オリンピックに対して冷めているからなんですよね。なんか、同じ日本人だから感動しろとか言われても、僕は全然ピンと来ないんですよ。これって、単に国ってサイズが大きすぎて、実感が持てないってところも大きいんですよね。なので、人が実感を持って、仲間だなと思えるサイズって、どれぐらいなんだろうとかね、物語や理念を共有できるサイズってどこなんだろうって事を僕はすごく考えるんです。で、もし国みたいなすごく大きい単位で物語を語るとかね、理念を語るんだったら、何か工夫がいると思うんですよね。だから僕は単に、テレビやそれこそラジオとかで言っている、こんな事がいいとかね、こんなものが素晴らしいっていう物語に共感するだけじゃなくて、ちょっとゲームっぽい事入れたらいいんじゃないかって思うんです。
例えば、「投票できる」とかですよね。もっと言ってしまえば「お金を賭けられる」とかですね。そうやってシステム的に関わりを強くしていったら、何か大きいものでも繋がれる気がするんですよ。ただ、そのままやっても国家っていうレベルでは無理だなってね、そんな実感もあったりするんですよね。なので、僕らは例えば、「ファンタジーオリンピック」とかを考えているわけなんです。知ってますか? 「ファンタジーベースボール」とか「ファンタジーサッカー」とかありますよね。自分の理想のプロサッカーチームとか、プロ野球チームとかを、決められた年俸の枠内で作るわけですよ。それが実際のリーグ戦で、試合で、自分の登録した選手が活躍した分だけポイントが入るというゲームなんですよね。で、それに応じて賞金がもらえたりするわけですよ。それをオリンピックでやったりすると。こういうことやったりすると、「オリンピックなんて他人事」って思ってる人も面白く参加出来るじゃないですか。単に見ているだけじゃなくて。そこでお金とか賭けていいと思っているんです。その代わり、賭けたお金の収益は全部寄付するっていうふうにやっていくのが一番いいと思うんですよ。水球なら水球の、陸上なら陸上の金メダルとか銀メダルとか全部当てて、10億ドルとか儲かったら、それは好きな所に寄付出来ますと。これ結構いいと思うんです。僕はこんな事をずっと考えていて、ちょうど僕の考えているテーマと、鈴木知事と達増知事の考えているテーマが非常に近くて、なんかすごく盛り上がった対談になりましたね。来年本が出るんで、もしできたら読んでくれると嬉しいです。はい。じゃあここで1曲お聞き下さい。続いてお送りする曲はNMB48の『結晶』です。
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宇野 はい、お届けしましたのは、NMB48で『結晶』でした。ちょっとね、この季節に聴きたい曲を選んでみました。
J-WAVE深夜の溜まり場「THE HANGOUT」。月曜日は宇野常寛がお届けしております。
メールいきましょう。これはですね、ラジオネーム惰弱野郎さん。
「先日、東京国際映画祭のコピー(『ニッポンは、 世界中から尊敬されている映画監督の出身国だった。お忘れなく』)が下品だと批判を受けましたが、たしかに最近日本を自画自賛する言葉がさまざまなメディアで急増しているように思います。ヘイトスピーチが問題になる中、我々は他国に対して偏狭だが、そんな我々を世界は尊敬しているはずだ、むしろ尊敬しろ! と言っているように受け取られかねない部分もあると思います。とはいえ、自分も日本文化を愛しているので、大半の日本人はもっと冷静ですよとアピールするくらいしか対策が思いつきません。宇野さんのお考えをお聞かせ下さい」
うーん、そうねぇ。僕はもう同じ日本人だから誇りが持てるっていう気持ちがよく分からないんですけどね。まあ、ヘイトスピーチうんぬんの問題っていうのは二つのレベルで対応しなければいけないですね。一つは、はっきり言って承認欲求の問題です。