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脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第9回「男と酒」 ☆ ほぼ日刊惑星開発委員会 vol.331 ☆
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本日は、平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家の井上敏樹先生のエッセイをお届けします。今回のテーマは「男と酒」。
酒豪として知られる敏樹先生。井上家とお酒との関係、そして井上敏樹流のお酒の楽しみ方・付き合い方とは――?
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男 と 酒
井上敏樹
酒が好きだ。そういう血筋である。私の父はアル中で死んだ。母もアル中だった。祖父は脱サラして焼酎の会社を興したがすぐに駄目になって現在では考えられない仕事を始めた。煙草の吸殻を拾う仕事である。吸殻をほぐして僅かな葉を集め新しい煙草を作るのである。昔はそういう仕事があったのだ。曾祖父は群馬に沢山の山を所有していたらしいが全て売り払って酒に代えた。もちろん自分で飲むためである。
アル中の父は肝硬変で何度も入退院を繰り返した。それでも父は酒を飲み続けたが、追い詰められると稀れに何日か禁酒をした。禁酒をして苦しむ父を前に母は平気で酒をあおっていた。父の言葉は大抵理不尽この上なかったが、お前には思いやりがないと母を責めるその言葉は珍しく正しかった、と言える。肝硬変で父が死んだ後、書斎を整理していた私と弟は天袋に何本ものジンの空きビンを発見した。きっとひとりでこそこそと、心ゆくまで飲んでいたのだ。ジンは酒好きが最後に飲む酒である。味わって飲むものではなく、ただ酔うために作られた酒なのだ。ナイフに似ている。弟は学校の教師だが酒を飲み過ぎて声をなくした。喉頭癌になったのである。我が一族にとって酒は友であり呪いである。今のところ私は健康である。酒によって失ったものと言えば金ぐらいだ。酒で散財するのは、私に言わせれば真っ当な行為だ。酒と共に金が消えていくのは、なんだか自然な感じがする。風に花である。ちなみに金をなくすのに一番似合わないのはギャンブルである。なぜならギャンブルは金を増やそうとする行為だからだ。
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