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記事 35件
  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第35回「男と食 6」【毎月末配信】

    2018-01-31 07:00  
    540pt

    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。食通で知られる敏樹先生が今回選んだテーマは「河豚」。河豚の名店から意外な味わい方まで、あらゆる角度から語ります。
    男 と 食  6   井上敏樹
    前回、冬と言えばジビエである、と書いたが、もうひとつー冬と言えば河豚である。私に言わせれば河豚ほど日本的で不思議な食べ物はない。あれほどの猛毒を持ちながら、その身は格調高く玄妙だ。だが、河豚は松茸と並んで、その名前で食べられている食材でもある。多くの場合、河豚を食べた、松茸を食べた、と言う事実に満足するのである。私も若い頃、そうだった。味も分からないのに、ただ、河豚を食べて『おれも大人になったもんだわい』と悦に入っていたものだ。私が河豚に目覚めたのは、理由あって、一週間ぶっ続けに河豚を食ってからである。八日目に、私は禁断症状に襲われた。あ~、河豚が食いたい……あの味が恋しい……と、それはもう、喉を掻き毟るような渇望であった。皮肉な事に、河豚を食べるのをやめて初めてその味が分かったのだ。そのものの不在においてそのものの味が現れるというのが、いかにも河豚らしい。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第34回「男と食 5」【毎月末配信】

    2017-12-29 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。前回に引き続き、今回も食がテーマです。食通の敏樹先生を唸らせた滋賀県の名店から、話題は各国の女性文化へと及びます。
    男 と 食  5   井上敏樹
    前回、滋賀の名店『比良山荘』の熊鍋について書いたが、熊と言えば、もう一件、忘れられない店がある。やはり滋賀ー余呉湖の畔にある『徳山鮓』である。最近ではテレビや雑誌でちょいちょい紹介されているので、ご存じの方も多いだろうが、本来、徳山鮓の名物は鮒ずしである。鮒ずしと言うのは鮒を米で漬けて発酵させたもので、強烈な匂いと酸味で好き嫌いが分かれる。私はこれが大好きであちこち食いまくったが、徳山鮓のものは最も洗練された味わいである。まるでチーズだ。主人の腕と工夫もあるだろうが、余呉湖のニゴロ鮒の質がいいのだろう。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第33回「男と食 4」【毎月末配信】

    2017-11-30 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。食通が待ち焦がれているというジビエの季節がやってきます。様々なジビエ食材の中でも月の輪熊が一番のお気に入りだという敏樹先生は、その美味しさに舌鼓を打つのでした。
    男 と 食  4   井上敏樹
    さて、冬である。冬となると食いしん坊はうずうずして来る。ジビエの季節だからである。ジビエと言うのは要するに冬眠前の脂の乗った獣の事だ。鹿、猪、鴨や鳩や熊が主だった所で、そういった獣を猟師が鉄砲で狩るのである。最近ではアライ熊まで供する店があるらしいが私は食べた事がない。なにしろアライ熊である。『さあ〜、今日はアライ熊を食うぞ〜』と言う気分にはなかなかなれない。デートにしたってアライ熊では、相手がよほどの食べ手ではない限り微妙な空気が流れる事、受け合いである。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第32回「男と食 3」

    2017-10-27 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。今回は敏樹先生が出会った「最悪の店」のお話です。年に数回無性に食べたくなるというお好み焼き。しかし、そこには少し暗い思い出が……?
    男 と 食  3   井上敏樹
    前回は困った料理人について書いた。今回は私の記憶にある最悪の店について書いてみたい。私がまだ小学生だった頃の話である。母親と弟と三人で、親戚の家に遊びに行った帰り、地元の商店街に新しい店を発見した。お好み焼きの店である。店先のウインドに各種お好み焼きの蝋のサンプルがテラテラと光っている。そう言えば母は着物を着ていたような記憶があるので、法事かなにかの帰りだったかも分からない。夕食を作るのが面倒だったのだろう、とにかく私たちは店に入った。ガランとした店内に、客は私たちだけだった。片隅にマンガ雑誌が積まれ、高い所にテレビが点けっ放しの、極く普通の店である。私たちが席に着くと、奥の方から女将が水とメニューを運んで来た。女将、と言ってもセーター姿に髪を引詰めにしたまだ若い女だった。暖簾に『サッちゃんの店』とあったから、多分、サッちゃんである。色白、小顔、雛人形のようで、いい感じだ。私たちがお好み焼きと焼きソバを注文すると、サッちゃんはカラカラと木のサンダルを鳴らし、奥の方に戻っていく。しばらくすると男の怒声が聞こえて来た。サッちゃんが消えた店の奥からである。そしてがちゃんっと何かが割れるような音。空きっ腹を抱えた私と母と弟は黙って顔を見合わせた。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第31回「男と食2」【毎月末配信】

    2017-09-29 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。「食」には人柄が表れるという敏樹先生。馴染みの大将と弟子の関係を見ながら、自分と弟子の関係に思いを馳せます。
    男 と 食  2   井上敏樹
    『あなたがなにを食べているかを言ってみたまえ。あなたがどんな人間か当ててみせよう』と、どこかの美食家が言っていたが、これはなかなか説得力がある。 確かに食生活はその人間を表現する。筒井康隆の小説に誰かの吐瀉物を嘗めて吐いた人間の性格、職業、肉体的な特徴までを当てるというエピソードがあったが、そこまでは無理としても、まあ、相手の趣味嗜好、生き方のセンスのようなものはなんとなく分かる。さらに言うと『なにを食べているか』を『どんな店に通っているか』に変えるとなお分かり易い。だから私は誰かを店に招待する時はいつも緊張する。また、招待される場合も同様である。相手のセンスはもとより相手の自分に対する評価が分かるからだ。
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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第30回「男と食」【毎月末配信】

    2017-07-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。最近調子が悪いという敏樹先生。こんなときこそ美食だと西麻布の割烹で鮎を食しますが、その帰りに敏樹先生に話しかけた不思議な存在とは……?

    男 と 食    井上敏樹
    最近調子が悪い。鬱と言うわけではないが心が晴れない。これ、という理由があるわけではない。ただ、なんとなくだ。連日の猛暑の影響もあるかもしれない。アメリカのどこかでは気温が50度を越えているという。50度とは驚異である。蚊やら蠅やらも死ぬらしい。蚊や蠅がいなくなるのは結構だが、50度は嫌だ。こちらも死んでしまう。とにかくやる気が出ない。こころがどんより、頭がぼんやりである。私にとってこういう時の特効薬はひとつしかない。美食である。
    私は単純な人間だ。美味い物を食うと心に窓が開いたように光が差す。闇が払われ、人生は素晴らしいという啓示に打たれる。だが、一晩経てばそれも幻。またどんよりぼんやりに襲われる。だからまた美食となる。先日は西麻布の割烹に行った。今の時期はなんと言っても鮎である。今は輸送手段の発達で京都や四国から活きたままの鮎が届く。鮎は活きている事がとても大事で、死んだ鮎を焼くとハラワタが流れ出てしまうのだ。そうなっては台無しである。ハラワタのほろ苦い味と香りがケシ飛んでしまう。かの北大路魯山人も鮎に目がなかった。だが、魚を活かしたまま輸送するための発砲スチロールも酸素注入器もない時代である。魯人は人足を雇って鮎を運んだ。人足は天秤棒に鮎を入れた桶を吊るし汽車の中で水を揺らし続ける。そうやって水に空気を入れたわけだ。

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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第29回「男とアレルギー2」【毎月末配信】

    2017-06-30 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。小学生の頃、いじめの標的になっていた女の子。大学生になり、その子のことをすっかり忘れていた敏樹先生でしたが、アレルギーをきっかけに意外なかたちで再会を果たすことになります。

    男 と ア レ ル ギ ー  2   井上敏樹
    小学校の頃、クラスにあまりイケてないNという女の子がいた。美しくなく利口でなく不潔っぽい。だからみんなに苛められた。といっても肉体に苦痛を与える類の苛めではない。みんな上から目線でNを見下す、言わば視線系の苛めである。Nの家がまた貧しかった。おそらくは父親の手作りだと思われるが、トタン屋根のバラック小屋で暮らしていた。

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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第28回「男とアレルギー」【毎月末配信】

    2017-05-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。20代前半で生まれて初めてアトピーになった敏樹先生。その後、様々なアレルギーを経験することになりますが、最近敏樹先生を悩ませている意外なものとは……?

    男 と ア レ ル ギ ー    井上敏樹
    最近アトピーがひどい。脇腹やら鼠蹊部に蕁麻疹が出来てひどく痒い。痒みというのはなかなかの地獄だ。ある意味、痛みよりもタチが悪い。痒みにはなにかしら誘惑的な所がある。ボリボリバリバリと掻いていると思わず『あ~、気持ちいい~』と声を出してしまうのは私だけではないだろう。そうして結局肌を傷つけてしまって後悔する。そう分かっていてもやっぱり掻く。それくらい掻くという行為は快感を伴うのであって、だから悪魔的なのだ。肌を損なう事なく快感を得るにはシャワーを当てるのが良い。水量を最強にして熱めのシャワーを患部に当てると掻くのと同じ快感で、やっばり『あ~、気持ちいい~』と声が出る。誰かに聞かれたら困るような声だ。だから痒みが消えるとそれはそれで結構なのだがちょっと淋しい。『痒みよ、お前は一体どこに行ったのだ』と孤独を囲う事になる。生まれて初めてアトピーに襲われたのはまだ20代前半の頃で当時はなにがなんだか分からなかった。とにかくある日突然、両脚全体にびっしりと蕁麻疹が発症したのだ。『なんじゃこりゃ~』と思ったものの『ま、なにか変なものでも食ったんだろう』とさして気にせずボリボリバリバリやっていた。ところが一向に治らない。外で酒を飲んでいると発作的に痒くなり、慌ててトイレに駆け込みズボンを降ろし、『あ~、気持ちいい~』とやる。かと言って酒のせいとは思われない。酒を飲むと血流の関係でどんな蕁麻疹でも痒くなるのだ。そのうちにハタと思い当たった。 

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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第27回「男と男 再び」【毎月末配信】

    2017-04-28 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。仲良くなった高級鮨屋の大将は、昔少年院を出ていて……? 敏樹先生が聞いた、大将の若かりしころの「剛の者」たるエピソードの数々を披露します。

    男 と 男  再び   井上敏樹
    去年、なかなか面白い男に出会った。相手は鮨屋の大将である。B級グルメで有名な町にあって銀座並の店を構え、銀座並の高級鮨を握っている。白木のつけ台を隔て初めて大将と対面した時、私はそのただならぬ雰囲気に緊張した。大柄な体躯に彫りの深い顔、鋭い眼ー鮨屋というよりもイタリアンマフィアのようだった。何度か通ううちに一緒に飲もうという事になった。私は料理人と仲良くなるのが好きである。なにしろこちらを幸せにしてくれる尊敬すべき人々だ。特に鮨屋は、いい。握っている姿が祈りに似ていて美しい。そんな私の気持ちが伝わったのか、私たちはウマが合った。そしてその後も誘い誘われの関係が続き、大将は自分の来し方をぽつりぽつりと語るようになったのである。きっかけは私が『なぜ鮨屋になろうと思ったのか』と尋ねた時で、『少年院を出てなにか手に職をつけようと思ったから』というのが大将の答えだった。少年院、と聞いて俄然興味が湧いて来た。大将の方はなにか申し訳なさそうな口調である。もしかしたら私が引くとでも思ったのかもしれない。だが、こっちは仮りにも物書きである。引かず、食いつく。少年院に入るには色々と理由があるだろうが、詳しく聞いてみると大将の場合は同情の余地があった。

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  • 脚本家・井上敏樹エッセイ『男と×××』第26回「男と怪我3」【毎月末配信】

    2017-03-31 07:00  
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    平成仮面ライダーシリーズなどでおなじみ、脚本家・井上敏樹先生のエッセイ『男と×××』。ようやく歯の怪我から回復しつつある敏樹先生ですが、今回は過去の「骨折」にまつわるエピソードを語ります。

    男 と 怪 我 3  井上敏樹
    さて、一応、歯の報告をしておく。京都から帰って来て医者に行った。やはり想像通りだった。折った前歯群はそれなりに根づいてはいるものの不完全であるという。奥歯を使えば食事はなんとかなるが、前歯はいずれ根が死に脱落するらしい。そんなわけで結局インプラントにする事にした。来週、抜歯である。歯を抜き、土台となるインプラントを骨に埋め込み仮歯を入れる。その後、土台が落ちついたら本歯を嵌め込む。全ての治療が終わるのは五カ月後だと言う。先は長い。今回の事と言い、もしかしたら私は怪我をしやすい体質なのかもしれない。要するに不注意だということだ。私自身にはそんな自覚はない。寧ろ注意深い方ではないだろうか。夜道を歩いていて足音がすれば素早く振り向く。殺し屋かもしれないからだ。バレンタインに貰ったチョコは人に食わせてからいただく。毒が入ってるかもしれないからだ。とは言え思い当たる節もある。それは私の仕事に関する癖のようなもので確かに不注意を招くものだ。ある日、電話がかかって来たので出てみると相手は銀行である。あなたは昨日、ATMで金を降ろさなかったか、と尋ねて来る。確かに、と私。すると向こうは、あなたはその際金を取らずに立ち去ったのではないのかと畳かける。私はカチンと来た。いくらなんでも降ろした金を残したまま銀行を後にする馬鹿がいるものか。が、怒鳴りつける前に一応念のために財布を確認する事にした。財布は空っぽだった。そう言えば、と思い出した。私は銀行に行った時、仕事の事で頭がいっぱいだったのだ。次のストーリーの殺人事件がめまぐるしく頭の中で展開し、現実が見えていなかった。私が平身低頭電話の相手に謝ったのは言うまでもない。

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