Omasuki Fightの北米MMA抄訳コラム「MMA Unleashed」――今回のテーマは
「大統領はMMAプロモーター …本当は怖いチェチェンの官製MMAバブル」!



チェチェン共和国の首都、グロズヌイにはMMA団体が2つ存在する。1つは、日本の水垣偉弥など、UFC離脱組を続々と獲得して勢力を拡大中のAbsolute Championship Berkut(ACB)、そしてもう1つが、2015年に旗揚げされたWorld Fighting Championship Akhmat Fights(WFCA)だ。そしてこのWFCAの主宰者は、なんとチェチェンの第3代首長(大統領)、ラムザン・カディロフ(40)なのである。日本でいえば、安倍首相がRIZINをプロモートしているのと同じということになるから異常事態である。しかもこのカディロフ、まるでプーチン大統領とデイナ・ホワイトを足して2で割ったような、独裁者然とした強烈な人物のようだというからたまらない。

WFCAのエースであり、カディロフお気に入りのファイターは、なんといっても現在はUFCに参戦中のマゴメド・ビブラトフだ。2014年にACBでバンタム級チャンピオンになったビブラトフに目を付けたカディロフは、この選手を海外で活躍させたいと考え、米国のWSOFに送り込んだ。ビブラトフはWSOFデビュー戦で初代フライ級王者決定戦に出場、ボスの期待に応えて見事に勝利を収めている。

カディロフは、Instagramを使ってビブラトフの米国デビューのプロモーションに自ら精を出した。WSOF出陣前には、次のような熱いメッセージを投稿している。

ベアウルフ(熊狼)よ! 一歩一歩踏みしめるようにケージに向かえ。一歩進むごとに、余計な感情や思考、予見の殻を脱ぎ捨てよ。そんなものは、キミの脳を迷わせ、魂を薄め、スピードを緩ませるだけだ。ケージに入れば、老獪(ろうかい)な狼や熊のごとき、天賦の能力やスキルに自信を持って、あの落雷のような打撃を繰り出してくれ。そして、精一杯の集中力で、対戦相手をゆっくりと、しかし確実に、かつ言い訳ができないほどに、それでいて誇り高くフィニッシュしてほしい。チェチェン国民に、チェチェン人が真剣勝負に鮮やかに勝利するところを見せてくれ。そうすれば、つい1分前まで対戦相手を応援していた者までもが、次のような歓喜の叫び声を上げることになろう。「アフマト・パワー!」(アフマトAkhmatは、カディロフのMMA団体の名称。チェチェン前大統領であるカディロフの父親の名前でもある)



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