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記事 3件
  • 2023年4月28日号:ニュースに一言

    2023-04-28 11:19  
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    ●コロナが一段落し、全国の観光地に旅行客が戻って来ているようです。京都にも外国人観光客が多数訪れ賑わいをみせています。いまのところアメリカやオーストラリア、香港などからの来日が多いようでみなさん穏やかに日本を楽しんでいますが、5月8日の水際対策撤廃により、また中国人観光客が大挙して押し寄せ、街が騒がしく汚くなくなると思うと憂鬱な気分になります。
    旅行者は外国人だけではありません。日本人も巣ごもりをやめ各地に繰り出すようになりました。その後押しとなっているのが国の推し進める「全国旅行支援」ですが、一方でお金が足りないから社会保険料を上げると言っておきながら、すべての国民でなく一部の個人旅行に国が援助金を出すという極めて不公平なものに税金を使う施策には違和感しかありません。
    コロナ禍で時短や休業を要請した飲食店には協力金という名の多額の“税金”が注ぎ込まれ、中には通常営業より利益増となったところもあったようです。それに対し、旅館や土産物屋には何の支援もなく開店休業状態で赤字が膨らむばかりでした。百歩譲って今度は旅行者を増やして観光業者を助けるためと言うのならまだ我慢もしますが、割引条件に未だに“ワクチン3回接種”とあるのだけはどう考えても納得できません。ワクチンで感染が予防できないことは「全国旅行支援」を企画したときから分かっていました。さらに3月にはWHO(世界保健機関)までがワクチンの効果に疑問を呈し、3回以上の接種を推奨しないと打ち出しているのにです。
    ワクチンを大量に買い込んでおりなんとかさばかなくてはならない、あるいは製薬会社にこれからも継続購入すると約束しているからやめるわけにはいかないのかは知りませんが、メリットよりデメリットの方が大きい代物を国民に強いる政府にはうんざりです。今日もテレビからは「ワクチン打て、打て」のCMが流れてきます。これはどうみても「旅行支援」ではなく「ワクチン支援」です。


    ●兵庫県警加古川署が署内に安置していた男性の遺体を取り違え、別の遺族に引き渡していたというニュースがありました。これは霊安室の上下2段構造の冷蔵庫に安置されていた66歳と69歳の2人の男性うち、上段の66歳の男性のお迎えが来たのにもかかわらず下段の遺体を引き渡してしまったものです。
    いったいどんな管理をしていたらこんな間違いが起きるのかと思ったところ、なんとこの2人は偶然同じ名字だったというのです。遺体が納められた袋には氏名が記載されていましたが、係員は名字だけを見て「これだ」と判断したようです。我々一般人が接触する“遺体”はほとんどが親族ですので、他人のそれには少なからず緊張が伴うものです。しかし、日常的に遺体を目にする霊安室の職員にはそれが欠けていたのかもしれません。仕事にはミスがつきものとはいっても、対象が「ご遺体」だけに慎重の上にも慎重を重ねてもらいたかったものです。
    1週間後に捜査員が霊安室に入った際、下段の冷蔵庫が空になっているのを不審に思い確認したことで取り違えが発覚しましたが、その時には引き渡した遺体は既に火葬されていたそうです。ここで解せないのは、違う人間を引き取った遺族が顔を見たら一目瞭然なのになぜ間違いに気付かず荼毘に付してしまったのかということです。まさか納体袋を開けることなくそのまま火葬場に運んだのか、あるいは引き取り手は顔さえはっきり分からないほど疎遠な親戚だったのか、いずれにせよ故人が深い悲しみに包まれた葬儀で見送られることはなかったでしょう。さらにもう1人の方は引き取り手さえ現れず。
    今回の60代男性は2人とも自宅で死亡しているところを見つかりました。どちらも病死と判断されています。人生最後の瞬間を誰にも看取られずたった1人で、そして葬儀さえ満足に執り行われず。彼らの人生を考えると、なんともやるせない想いでいっぱいになるニュースでした。


    ●バスやタクシーの車内に設置されている運転者の名札がなくなるというニュースがありました。国土交通省は現在、バスやタクシーの車内に運転者の名前を掲示することを道路運送法により事業者に義務付けていますが、今夏をめどにそれをやめるというのです。
    わたしは移動に際し、いつも自家用車を自ら運転していますが、新幹線で東京に行ったときはもっぱらタクシー移動です。たしかに料金メーターの横には運転手さんの名前と顔写真が掲示されていますが、それはタクシー会社がサービスの一環で独自にやっているものとばかり思っており、法律で定められたものだったとは知りませんでした。
    もし、わたしが運転手だったとして、後ろにいる乗客に自分の名前を知られているのとそうでないのとでは緊張の度合いが違います。プロドライバーとして常に安全運転を心がけていても、少しでも変な運転をすれば「百田っちゅう運転手はとんでもない走りをする」なんて通報されかねないと思うからです。その意味では名札の掲示は運転手の自戒を促すのに有効ですが、それよりもデメリットの方が大きいというのです。
    現在では女性の運転手も増えており、氏名が特定されることによりストーキングされることがあるだけでなく、乗車態度を注意された客が逆恨みしてあることないことを運転手の実名入りでネットにあげるなんてこともあるようです。残念なことに乗客の安全安心のための措置が逆に運転手を危険にさらすことになっているのです。
    改正後は車両の識別番号などで乗客が利用した車両を把握できるようにするそうで、お互いの安心のためには仕方のない妥協点なのかもしれません。名札の廃止といえば、販売店や飲食店でも同様の理由から廃止が進んでいるそうです。接客業でありながらマスクで顔の半分を隠したうえで匿名希望にしなくてはならないとは、世知辛い世の中になったものです。


    ●犯罪に“良い”も“悪い”もなくすべて憎むべきものですが、職業柄特に不愉快なのは本の万引きです。書店の利益率は一般的に3~5%ほどといわれています。ですから1冊の本が万引きされると、その損失を埋めるためには20~30冊売らなくてはならないのです。活字離れが進む中、書店員さんのご苦労を想うと万引きした本を懐にほくそ笑む輩は絶対に許せません。
    哲学書1冊を盗んだとして兵庫県警尼崎東署が、窃盗の疑いで32歳の無職の男を現行犯逮捕したというニュースがありました。この男は書棚から取り出した本をリュックサックに入れるとことを店長に見つかり通報されたのですが、哲学書を盗むとはさぞかしインテリ男かと思いきや「本を売った金をパチンコで使おうと思っていた」などと供述していると聞いて呆れました。この男は自分で読むためではなく転売して現金化するために盗みを働いていたのです。哲学書が定価3520円ということで「これなら半値でも1500円以上になる」と、安価な雑誌や文庫本を避けて狙いをつけたのでしょう。書店中を本の中身ではなく裏表紙の価格を確認しながらうろつく姿を想像すると、滑稽さを通り越して哀れささえ感じます。
    32歳の若者が仕事もせずにパチンコ代を稼ぐために万引きとはなんと情けないことでしょう。5000円稼ぐのにいったい何冊の本が必要なのか。毎回毎回店員に見つかる危険を冒しながら盗むことと、1日バイトすることのどちらが精神の安定のためにいいのかは考えるまでもなくわかるはずです。もっともそれさえも分からないのが32歳無職の無職たる所以かもしれませんが。肩書の無かった無職の彼に、今回「前科者」という不名誉な称号が付いてしまいました。本当に自分の人生はこれでいいのか。自身に問うために彼には哲学書を売るのではなく読むことをお勧めします。


    ●外部からの苦情で企業や団体が謝罪に追い込まれる事案が相次ぐ昨今ですが、今度は滋賀県が開催する競艇場「ボートレースびわこ」がターゲットになったというニュースです。
    謝罪理由は公式YouTubeチャンネルの番組内で不適切な発言があったというものですが、その内容が出演者の「この番組を盛り上げるために全力で金を賭けてやってるんです」と聞いてわけがわからなくなりました。ボートレースはいうまでもなくギャンブル(金を賭けるもの)です。その公式チャンネルの出演者が番組を盛り上げるために「金を賭ける」と言うことのどこが悪いのでしょう。批判者は「依存症対策に配慮できていない」と怒り心頭のようですが、番組の視聴者はそのほとんどが競艇ファンです。そんな人たちは出演者が言おうが言うまいが放っておいても舟券を買うでしょう。それともビールメーカーが浴びるほど飲ませて売り上げ増につなげたいのに「飲み過ぎに注意」、消費者金融がじゃぶじゃぶ貸し付けたいのに「ご利用は計画的に」と申し訳程度の小さな字で書くように、今回も小さな声ででも「掛け金はお小遣いの範囲で」などと言えばよかったのでしょうか。
    謝罪の最後には「今後は管理体制を強化し、出演者、運営一同、『ボートレースの楽しさを伝える』という本来の趣旨に則った番組作りに精進して参ります」と綴っていますが、いったい何を言っているのやら。
    ボートレースファンの一番の楽しみは舟券が当たることにほかならず、ただ水面をぐるぐる回るだけのボートのどこに“楽しさ”があるのでしょう。「射幸心を煽って申し訳ない」とそこまで平身低頭謝るのなら、そもそも射幸心を煽ることで成り立つギャンブル(ボートレース)なんて開催しなければいいのです。苦情が来たから「とりあえず謝ってほとぼりが冷めるのを待とう」なんて安直な解決策は感心できません。
    そして苦情を申し立てた人たちにも言いたい。今回の番組は一部の愛好家が自ら選択して視聴するYouTubeチャンネルのものでしたが、マニアだけでなく老若男女すべての国民が見るテレビからは毎週「今度の日曜は○○賞」とGⅠレースを告知するCMが流れてきます。あなたたちは全視聴者を煽る中央競馬会と、それを嬉々として放送するテレビ局にも文句を言っているのですか、と。

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  • 2023年4月21日号:ニュースに一言

    2023-04-21 12:42  
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    ●コロナが一段落し、全国の観光地に旅行客が戻って来ているようです。京都にも外国人観光客が多数訪れ賑わいをみせています。いまのところアメリカやオーストラリア、香港などからの来日が多いようでみなさん穏やかに日本を楽しんでいますが、5月8日の水際対策撤廃により、また中国人観光客が大挙して押し寄せ、街が騒がしく汚くなくなると思うと憂鬱な気分になります。
    旅行者は外国人だけではありません。日本人も巣ごもりをやめ各地に繰り出すようになりました。その後押しとなっているのが国の推し進める「全国旅行支援」ですが、一方でお金が足りないから社会保険料を上げると言っておきながら、すべての国民でなく一部の個人旅行に国が援助金を出すという極めて不公平なものに税金を使う施策には違和感しかありません。
    コロナ禍で時短や休業を要請した飲食店には協力金という名の多額の“税金”が注ぎ込まれ、中には通常営業より利益増となったところもあったようです。それに対し、旅館や土産物屋には何の支援もなく開店休業状態で赤字が膨らむばかりでした。百歩譲って今度は旅行者を増やして観光業者を助けるためと言うのならまだ我慢もしますが、割引条件に未だに“ワクチン3回接種”とあるのだけはどう考えても納得できません。ワクチンで感染が予防できないことは「全国旅行支援」を企画したときから分かっていました。さらに3月にはWHO(世界保健機関)までがワクチンの効果に疑問を呈し、3回以上の接種を推奨しないと打ち出しているのにです。
    ワクチンを大量に買い込んでおりなんとかさばかなくてはならない、あるいは製薬会社にこれからも継続購入すると約束しているからやめるわけにはいかないのかは知りませんが、メリットよりデメリットの方が大きい代物を国民に強いる政府にはうんざりです。今日もテレビからは「ワクチン打て、打て」のCMが流れてきます。これはどうみても「旅行支援」ではなく「ワクチン支援」です。


    ●兵庫県警加古川署が署内に安置していた男性の遺体を取り違え、別の遺族に引き渡していたというニュースがありました。これは霊安室の上下2段構造の冷蔵庫に安置されていた66歳と69歳の2人の男性うち、上段の66歳の男性のお迎えが来たのにもかかわらず下段の遺体を引き渡してしまったものです。
    いったいどんな管理をしていたらこんな間違いが起きるのかと思ったところ、なんとこの2人は偶然同じ名字だったというのです。遺体が納められた袋には氏名が記載されていましたが、係員は名字だけを見て「これだ」と判断したようです。我々一般人が接触する“遺体”はほとんどが親族ですので、他人のそれには少なからず緊張が伴うものです。しかし、日常的に遺体を目にする霊安室の職員にはそれが欠けていたのかもしれません。仕事にはミスがつきものとはいっても、対象が「ご遺体」だけに慎重の上にも慎重を重ねてもらいたかったものです。
    1週間後に捜査員が霊安室に入った際、下段の冷蔵庫が空になっているのを不審に思い確認したことで取り違えが発覚しましたが、その時には引き渡した遺体は既に火葬されていたそうです。ここで解せないのは、違う人間を引き取った遺族が顔を見たら一目瞭然なのになぜ間違いに気付かず荼毘に付してしまったのかということです。まさか納体袋を開けることなくそのまま火葬場に運んだのか、あるいは引き取り手は顔さえはっきり分からないほど疎遠な親戚だったのか、いずれにせよ故人が深い悲しみに包まれた葬儀で見送られることはなかったでしょう。さらにもう1人の方は引き取り手さえ現れず。
    今回の60代男性は2人とも自宅で死亡しているところを見つかりました。どちらも病死と判断されています。人生最後の瞬間を誰にも看取られずたった1人で、そして葬儀さえ満足に執り行われず。彼らの人生を考えると、なんともやるせない想いでいっぱいになるニュースでした。


    ●バスやタクシーの車内に設置されている運転者の名札がなくなるというニュースがありました。国土交通省は現在、バスやタクシーの車内に運転者の名前を掲示することを道路運送法により事業者に義務付けていますが、今夏をめどにそれをやめるというのです。
    わたしは移動に際し、いつも自家用車を自ら運転していますが、新幹線で東京に行ったときはもっぱらタクシー移動です。たしかに料金メーターの横には運転手さんの名前と顔写真が掲示されていますが、それはタクシー会社がサービスの一環で独自にやっているものとばかり思っており、法律で定められたものだったとは知りませんでした。
    もし、わたしが運転手だったとして、後ろにいる乗客に自分の名前を知られているのとそうでないのとでは緊張の度合いが違います。プロドライバーとして常に安全運転を心がけていても、少しでも変な運転をすれば「百田っちゅう運転手はとんでもない走りをする」なんて通報されかねないと思うからです。その意味では名札の掲示は運転手の自戒を促すのに有効ですが、それよりもデメリットの方が大きいというのです。
    現在では女性の運転手も増えており、氏名が特定されることによりストーキングされることがあるだけでなく、乗車態度を注意された客が逆恨みしてあることないことを運転手の実名入りでネットにあげるなんてこともあるようです。残念なことに乗客の安全安心のための措置が逆に運転手を危険にさらすことになっているのです。
    改正後は車両の識別番号などで乗客が利用した車両を把握できるようにするそうで、お互いの安心のためには仕方のない妥協点なのかもしれません。名札の廃止といえば、販売店や飲食店でも同様の理由から廃止が進んでいるそうです。接客業でありながらマスクで顔の半分を隠したうえで匿名希望にしなくてはならないとは、世知辛い世の中になったものです。


    ●犯罪に“良い”も“悪い”もなくすべて憎むべきものですが、職業柄特に不愉快なのは本の万引きです。書店の利益率は一般的に3~5%ほどといわれています。ですから1冊の本が万引きされると、その損失を埋めるためには20~30冊売らなくてはならないのです。活字離れが進む中、書店員さんのご苦労を想うと万引きした本を懐にほくそ笑む輩は絶対に許せません。
    哲学書1冊を盗んだとして兵庫県警尼崎東署が、窃盗の疑いで32歳の無職の男を現行犯逮捕したというニュースがありました。この男は書棚から取り出した本をリュックサックに入れるとことを店長に見つかり通報されたのですが、哲学書を盗むとはさぞかしインテリ男かと思いきや「本を売った金をパチンコで使おうと思っていた」などと供述していると聞いて呆れました。この男は自分で読むためではなく転売して現金化するために盗みを働いていたのです。哲学書が定価3520円ということで「これなら半値でも1500円以上になる」と、安価な雑誌や文庫本を避けて狙いをつけたのでしょう。書店中を本の中身ではなく裏表紙の価格を確認しながらうろつく姿を想像すると、滑稽さを通り越して哀れささえ感じます。
    32歳の若者が仕事もせずにパチンコ代を稼ぐために万引きとはなんと情けないことでしょう。5000円稼ぐのにいったい何冊の本が必要なのか。毎回毎回店員に見つかる危険を冒しながら盗むことと、1日バイトすることのどちらが精神の安定のためにいいのかは考えるまでもなくわかるはずです。もっともそれさえも分からないのが32歳無職の無職たる所以かもしれませんが。肩書の無かった無職の彼に、今回「前科者」という不名誉な称号が付いてしまいました。本当に自分の人生はこれでいいのか。自身に問うために彼には哲学書を売るのではなく読むことをお勧めします。


    ●外部からの苦情で企業や団体が謝罪に追い込まれる事案が相次ぐ昨今ですが、今度は滋賀県が開催する競艇場「ボートレースびわこ」がターゲットになったというニュースです。
    謝罪理由は公式YouTubeチャンネルの番組内で不適切な発言があったというものですが、その内容が出演者の「この番組を盛り上げるために全力で金を賭けてやってるんです」と聞いてわけがわからなくなりました。ボートレースはいうまでもなくギャンブル(金を賭けるもの)です。その公式チャンネルの出演者が番組を盛り上げるために「金を賭ける」と言うことのどこが悪いのでしょう。批判者は「依存症対策に配慮できていない」と怒り心頭のようですが、番組の視聴者はそのほとんどが競艇ファンです。そんな人たちは出演者が言おうが言うまいが放っておいても舟券を買うでしょう。それともビールメーカーが浴びるほど飲ませて売り上げ増につなげたいのに「飲み過ぎに注意」、消費者金融がじゃぶじゃぶ貸し付けたいのに「ご利用は計画的に」と申し訳程度の小さな字で書くように、今回も小さな声ででも「掛け金はお小遣いの範囲で」などと言えばよかったのでしょうか。
    謝罪の最後には「今後は管理体制を強化し、出演者、運営一同、『ボートレースの楽しさを伝える』という本来の趣旨に則った番組作りに精進して参ります」と綴っていますが、いったい何を言っているのやら。
    ボートレースファンの一番の楽しみは舟券が当たることにほかならず、ただ水面をぐるぐる回るだけのボートのどこに“楽しさ”があるのでしょう。「射幸心を煽って申し訳ない」とそこまで平身低頭謝るのなら、そもそも射幸心を煽ることで成り立つギャンブル(ボートレース)なんて開催しなければいいのです。苦情が来たから「とりあえず謝ってほとぼりが冷めるのを待とう」なんて安直な解決策は感心できません。
    そして苦情を申し立てた人たちにも言いたい。今回の番組は一部の愛好家が自ら選択して視聴するYouTubeチャンネルのものでしたが、マニアだけでなく老若男女すべての国民が見るテレビからは毎週「今度の日曜は○○賞」とGⅠレースを告知するCMが流れてきます。あなたたちは全視聴者を煽る中央競馬会と、それを嬉々として放送するテレビ局にも文句を言っているのですか、と。

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  • 2023年4月15日号:ニュースに一言

    2023-04-15 14:14  
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    ●チャットGPTとはユーザーの質問に対し、AIがまるで人間のように自然な対話形式で答えるサービスです。たとえば「蜘蛛の糸の作者は?」には「芥川龍之介です」のように。さらに「芥川龍之介とはどんな人?」との問いには「東京大学を卒業した明治から大正、昭和にかけての日本の小説家で、主な作品に羅生門や鼻、河童などがあります。35歳の時に自殺しましたが、芥川賞というその名を冠した短編あるいは中編作品に与えられる文学賞があります」など非常に事細かく丁寧に教えてくれますので、これさえあればもう百科事典なんていらないでしょう。
    そしてこのチャットGPT のすごいのは“質問”だけでなく“依頼”にも応えてくれるところです。琉球大学の卒業式で、卒業生代表がチャットGPTの書いた答辞を読み上げたというニュースがありました。大学院生の代表は中国にルーツがある学生でした。彼は「外国人である私が日本語の文章を書く場合、数日かかるかもしれません」と前置きした後「今ではAIがわずか数分で書き上げることができます。そうです、この答辞の初稿もチャットGPTが私の代わりに書いてくれたものです」と言い出したのですから式の参列者は驚きました。
    送辞、答辞に指名された学生はその原稿を作ることに苦労します。過去のものを参考にし過ぎるとありきたりのものになってしまうし、自分の言葉にこだわり過ぎると重みがなくなるなどなかなかまとまりません。それがチャットGPTだと「卒業式の答辞を作って」とさえ入力すれば、コーヒーを飲んで待っている間に感動的な文章が出来上がるのですからこんな楽なことはありません。
    チャットGPTの特徴はいかにも生身の人間が書くような自然な文体ですから、今回も総代が自ら種明かしをしなければわからなかったことでしょう。電卓の発明で九九が言えなくても計算できるようになり、ワープロができて漢字を知らない人も文字を書け、遂には「てにをは」がわからなくても文章を作れるようになりました。便利になるのはいいのですが、技術の進歩により人間がここまで甘やかされると逆に怖いものがあります。
    近い将来、チャットGPTが書いた小説の読書感想文を宿題にされた小学生が、チャットGPTが作った感想文を自信満々に提出するようになるのかもしれません。


    ●北海道小樽市の路上で、駐車中の車の運転席にいた40代女性の顔をドア越しに何度も殴るなどした37歳の男が逮捕されたというニュースがありました。暴行の疑いで逮捕されたこの男は被害女性が勤める保険会社の客で、滞納していた掛け金の支払いを催促されたことに腹を立てたようです。事件現場が男の自宅近くの路上ということですから、女性は郵便や電話では埒があかないと直談判に及んだのでしょう。
    保険は掛け金を支払う代わりにいざという時に保険金を受けとれます。ですから掛け金を払わない客は「即契約解除、その代わりなんの補償もしない」でいいのですが、保険の外交員はその多くを契約社員が担っており、掛け金の回収までがその責任となります。いくら契約を取ったところで一銭にもならず、入金があって初めて報酬が発生するのですから未回収は死活問題です。ですから今回の女性も危険を承知で単身乗り込んだのでしょう。
    男は開いていた窓から座席の女性の胸ぐらをつかんで揺さぶったり、拳で顔を何度も殴ったりしておきながら取り調べに対し「殴るつもりはありませんでした。手が顔に当たったかもしれません」なんてとぼけたことを言っていますが、彼は大の男が敵意をもって女性の顔に手を当てることを世間では「殴る」と言うのを知らないようです。真摯に仕事に向き合う女性に対し、理不尽な暴力を振るう男にはぜひとも厳罰を与えてもらいたいものです。
    ところで被害女性は傷害保険に入っていたのでしょうか。いつ何が起こるかわかりません。やはり保険は大事です。


    ●「青天の霹靂」いや「天国から地獄」と言った方がいいのでしょうか。楽しい思い出が一瞬にして悪夢に変わってしまった中国人男性のニュースです。この男性は恋人と“お泊りデート”をすることになり、奮発して浙江省杭州にある5星高級ホテル「コンラッド杭州」を予約しました。それも41階にあるデラックスルームです。
    タワーマンションもそうですが、高層ビルは一般的に上層階ほど値段が高くなります。その理由はいうまでもなく低層階に比べ格段に恵まれた眺望が得られるからです。夢のような一夜を過ごしたカップルは朝になりその素晴らしい景色を見ようと勢いよくカーテンを開けました。その瞬間、彼らの目に飛び込んできたのはホテルが誇る「スカイビュー」ではなく、ワイヤーに支えられて窓ガラスを拭いている清掃員の姿でしたから大変です。なぜなら寝起きの彼らは一糸まとわぬ素っ裸だったのですから。
    人間は突然の出来事に遭遇すると一瞬思考回路が停止し身動きが取れなくなるものです。微動だにせず見つめ合うカップルと作業員。部屋の中には、ただ彼女の「キャー」という悲鳴がむなしく響くだけでした。
    カップルも災難でしたが、それよりも可哀そうなのは窓ふきの作業員です。なにしろ部屋にいるカップルはバスルームに逃げ込む、あるいは家具の陰に隠れる、なによりカーテンを閉めるなどの行動を自由に選択できましたが、地上100メートル以上の高さに吊り下げられている彼には逃げ場はないのはもちろん、後ろ向きになる余地さえ与えられてなかったのですから。
    一流ホテルの客室内といえば、最もプライベートな空間が約束された場所です。そこでのアンビリーバブルな出来事に怒り心頭のカップルは、ホテル側に窓の清掃時間を事前に知らせなかった点を指摘して公式謝罪と宿泊費の払い戻し、精神的被害に対する補償を要求しました。日本のホテルなら真っ先に「申し訳ありません」ですが、このホテルの広報担当者は「天気のような、予測できない要因や宿泊客によって就寝時間も違うため正確な清掃時間を前もってお知らせすることは難しい」などと、いかにも中国らしい自己中心的な言い訳に終始するのですから呆れます。いかに世界的一流ホテルといえど、中国では「郷に入れば郷に従え」なのでしょう。そういえば「郷に入れば郷に従え」は「且道入鄉隨俗一句作麼生道」という中国由来のことわざでした。やはり本家はすごいわ。


    ●素っ裸といえば、500年以上も全裸で立ち続けている男の話です。アメリカ・フロリダ州の小学校で、16世紀のミケランジェロの作品「ダビデ像」の写真を6年生の児童に見せたとして校長が解雇されたというニュースがありました。ダビデ像はルネサンスを代表する彫刻作品で、旧約聖書においてイスラエル王国の二代目統治者とされる「ダビデ」が巨人ゴリアテとの戦いに臨み、岩石を投げつけようと狙いを定めているその姿は全裸で一切どこも隠していません。もちろん“あそこ”もです。
    天才ミケランジェロの作品ですから筋骨隆々とした肉体や巻き毛の頭髪など、いまにも動きそうな精緻な造りです。もちろん“あそこ”もです。それを一部の親が「ダビデ像はポルノだ。子どもに見せるべきではない」と訴えるのですからわけがわかりません。校長によりますと、ダビデ像のような古典芸術作品を見せる時には、通常は事前に手紙で親に伝えていたそうですが、今回は伝達ミスが生じて6年生の保護者に届かなかったようです。それで何人かの親が苦情を申し立てたといいますが、なにより芸術作品を鑑賞するのに親の許可が必要なことに驚きました。
    同じヌード写真でも分厚い写真集に掲載されていれば「芸術作品」ですが、コンビニのビニールに包まれた大衆誌に載っていれば「エロ写真」となるようにその線引きは曖昧です。それにしてもダビデのチンチンを見てそのまま性に結び付けるなんて俗っぽいにもほどがあります。裸の写真をポルノと見るのか、芸術と見るかは人それぞれですが、ひとつだけ間違いないのは優れた芸術作品は見る者の心を豊かにするということです。そしてその礎は幼いころから優れた作品に触れることで培われます。自身の貧相な感性で子供たちのその機会を奪う親たちには困ったものです。
    きっと子供の頃に画集には目もくれずエロ本ばかり読んでいたにちがいありません。


    ●ポテトチップスやじゃがりこなどのスナック菓子でおなじみの食品メーカー、カルビーの2023年入社式に俳優の川口春奈さん、福原遥さんがサプライズゲストとして登場したというニュースがありました。これは2人が同社のCMに出演していることから実現したものですが、突然目の前に現れた人気女優に新入社員たちは大喜びだったそうです。
    企業が新入社員を迎えて最初にすることは彼らに「愛社精神」を植え付けることです。誰しも経験したことがある「好きな人のためなら頑張れる」のように、仕事に行き詰ったときのよりどころを「会社のために頑張ろう」に求めてもらうためです。今回のサプライズを新入社員の皆さんはどう感じたのでしょうか。きっと全員が「おおっー、すごい会社に入った」と思ったことでしょう。その意味では彼らが「カルビー」を大好きになるのに十分な演出でした。
    今年の新入社員の初任給は軒並みアップしていると聞きます。少子化の影響で労働人口が減る中、各社がどこよりも優秀な人材を確保しようとするものです。それは求職者にとってありがたいことですが、会社は大幅な賃金アップやテレビコマーシャルに多額の宣伝費を投入できる大企業ばかりではありません。そんな会社に入れるのは一部であって、ほとんどの新入社員は中小企業で働くことになります。
    よく「俺は会社の歯車に過ぎない」なんて自嘲気味に言うサラリーマンがいます。生涯フリーランスのわたしが言うのもなんですが、「歯車」大いに結構じゃないですか。どんな機械(組織)もその部品である歯車が正常に動かないと機能しません。さらにすべての職業が人間社会に必要なように、その歯車の役割はその会社だけとどまらず国の維持にも及んでいるのです。学生時代と違いこれからは税金を納め、社会保険料を支払う文字通りの「社会人」です。ひとりひとりが「この国を動かしているんだ」という気概だけは忘れないでいてもらいたいものです。そんなすべての新社会人に幸多かれと願わずにはいられません。

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