北島秀一・山路力也・山本剛志 共同責任編集
【目次】
□クロスレビュー「必食の一杯」
麺屋武蔵虎嘯@六本木「エビベジ冷やし中華」
■新連載:侃々諤々!
□告知/スケジュール
■編集後記
■巻頭コラム
「夏が終わる」山路力也
子供の頃から夏が嫌いでした。クーラーを好まない父親だったので、家にはクーラーが一つもなかった幼少期。いつも汗だくで扇風機の風で涼を取り、そうめんやスイカで夏らしさを感じる。大人になってクーラー漬けの生活になって、あまり汗をかかない生活になると、それはそれで子供の頃の夏を懐かしく思い、たまにはそういう過ごし方も良いかなと思ったりもしていますが、当時は本当に嫌だった。その刷り込みが残っていて、今も夏が来ると憂鬱になります。
そんな夏も終わりの兆し。もうすぐ8月も終わり、記録的な猛暑日が続き馬鹿みたいに暑かったのが嘘のように、ここ数日は過ごしやすい気候にもなりました。ラーメンの食べ歩きを始めた頃から、基本的に7月と8月はラーメンを食べないようにしているのですが、年がら年中ラーメンではなく時には離れることも必要だろうとか、炭水化物を摂らない時期を作ろうとか、色々な理由がある中でやはりこの暑い中でラーメンを食べるということが、暑い夏が嫌いな私にとって大きな理由のひとつです。
暑い中、熱いものを食べて汗をかきたくないのもありますが、夏の日射しと闘いながらラーメン屋さんに並ぶというのもなかなか厳しい。だから僕は基本的にラーメン店に夏場並ぶことはしないのですが、夏であっても人気店の前には長い列が出来、熱中症にならないか他人事ながら心配になります。最近ではお店側が整理券を配ったり麦茶を出したりと、並んでいるお客さんへの対応を考えているようですが、あくまでもこれは並ぶ側の責任問題。ラーメンを食べるために並んで倒れてしまってはいけません。そうなるとラーメンを食べるのも命がけ。私は申し訳ありませんが、そうまでしてラーメンを食べたいとは思わないのです。
そんな私ではありますが、夏になったら必ず食べに行くラーメン店があります。それは荻窪の「春木屋」です。武内伸さんの命日である7月13日は、春木屋でラーメンを食べるようにしているのですが、たとえどんなに暑かろうと、並んでいようと、この日に行ける年は必ず行くようにしています。夏用の水色の暖簾を潜り、茹で釜前のカウンターに座って熱々のラーメンを食べていると、あぁ夏が来たなぁと実感するのです。
そして夏の終わりが近づくにつれ、北島秀一さんのことも思い出さずにはいられません。9月1日が北島さんの命日。夏の始まりに武内さんが逝き、夏の終わりに北島さんも逝ってしまった。ますます夏が好きになれなくなりました。そんな夏ももうすぐ終わり、あっという間に一年が過ぎていきます。
□クロスレビュー「必食の一杯」
一杯のラーメンを三人が食べて語る。北島、山路、山本の三人が、今最も注目しているラーメン店の同じ一杯をクロスレビュー。それぞれの経験、それぞれの舌、それぞれの視点から浮かび上がる立体的なラーメンの姿。今回は今年2月麻布十番にオープンした、新福菜館の「中華そば」を山路と山本が食べて、語ります。
「中華そば(小)」550円