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「誕生日プレゼント」
コメ0
草の根広告社 4ヶ月前
消費に幸せを感じる時代の終焉を強く感じ始めたのは2008年の年末。リーマン・ショックから三ヶ月が経った師走のことだった。大晦日に日比谷公園で開設された炊き出しに長い行列ができていた。多くは派遣切りに遭った人たちだった。同世代と思しき人も少なくなかったと記憶している。 東京で暮らしていた。毎日のよう...
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「世界がこんなにも美しいなんて」
コメ0
草の根広告社 5ヶ月前
空が青い。湿度が下がってきたおかげだ。空気中の水蒸気が減って薄い空色だった夏空が秋の色を纏っている。 さわやかな秋晴れの朝をランドセルを背負った娘と手を繋いで歩いていく。もう二年生だ。そろそろひとりで登校させた方がいいんだろうなと思いつつ、心配症なのと、一緒に歩くことのできる季節の短さを思うと...
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「言葉にできないこと」
コメ0
草の根広告社 5ヶ月前
茜色に染まる海上に三日月が浮かんでいる。その真上で金星が輝いている。逆光の中に富士山のシルエット。ぼくはベランダでビール片手に妻と娘とその景色を見つめている。秋の涼風が肌を撫でていく。
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「あの夏はもう帰らないのだろうか」
コメ0
草の根広告社 5ヶ月前
8月の終わり、お世話になっている千葉県の農家さんから新米が届いた。「今年も一等米でした」 うれしそうな報告が添えられていた。ここ数年、高温による品質と収量の低下を心配していたので自分のことのようにうれしかった。
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「悲しみは半年遅れでやってくる」
コメ0
草の根広告社 5ヶ月前
土曜の午後、ひとり自宅で仕事に向かっていたとき、虚を突かれたように喪失感が襲い掛かってきた。ふと窓の外の眩しい陽射しに目をやったときだった。
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「この町で生きている。この町で生きていく」
コメ0
草の根広告社 8ヶ月前
週末、葉山の住宅街にあるビストロで食事をした。この町で暮らすようになって14年。もっとも多く通ったフレンチレストランだ。コロナ前までは記念日のたびに訪れていた。妻と二人で。妻の両親も交えて。娘が小さかった頃はベビーカーですやすやと眠る寝顔を見ながらランチを。様々な記念日に料理とワインで大切な人と...
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「田舎暮らしってのんびりしているんでしょう?」
コメ0
草の根広告社 9ヶ月前
田舎暮らしってのんびりしているんでしょうとよく言われる。田舎暮らしと呼べるほど田舎に住んでいるわけでもないのだけれど。海辺の町で暮らして14年目。実感としては都会で暮らしていた頃より忙しい。 ある日の行動をそのまま書いてみる。
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「どこへも行かない」
コメ0
草の根広告社 9ヶ月前
ゴールデンウイークのある一日、朝から娘と妻とビーチカヤックをした。家から歩いて数分のところにある浜辺だ。134号線を歩いてレンタルショップまで行く。娘が渋滞の車列を見て「運転もしなくていいから良かったね」と言ってくれた。昨晩遅くに仕事先から帰ったばかりだった。車を運転して一日掛かりで海に行かなけれ...
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「ひとりで生きているわけじゃないという実感がぼくをこの世界に繋ぎ止めているのかもしれない」
コメ0
草の根広告社 10ヶ月前
その朝は海水温の上昇を実感させられるような大雨だった。娘を車で学校まで送ってから車を家に戻してバスで仕事に向かう。コロナ禍では通勤は専ら車だったがここ一年ほどはずっと公共交通機関を使うようにしている。移動中に原稿が書けること。自動車事故のリスクから解放されること。もうひとつは地球環境に対する配...
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「少子化の本当の原因」
コメ0
草の根広告社 12ヶ月前
娘と娘の友達が畑を手伝ってくれた。草毟りをお願いしたら夢中になってやってくれた。二人と妻に任せてぼくはひたすら耕す。耕しているとカブトムシの幼虫を掘り起こしてしまう。土に戻す前に娘たちに見せてやる。「すごい」小さな命に目を輝かせながらまた草毟りに戻っていく。児童労働が禁じられている時代にこんな...
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「2024年1月17日」
コメ0
草の根広告社 13ヶ月前
午前5時40分過ぎ、NHKで東遊園地の追悼式典が生中継されていた。灯籠で作られた「ともに」という言葉。能登半島地震の被災地を始め、幾多の自然災害などで悲しみを背負ったすべての人たちへの連帯のしるし。 午前5時46分、「黙祷」のアナウンスとともに手を合わせた。
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「忘れてしまっただけなのかもしれない」
コメ0
草の根広告社 13ヶ月前
ぼくらは忘れてしまう。 1月7日。町中から集められた正月飾りが焔に包まれ、立ち上る白煙となって冬の蒼穹に消えていくのを見ながらふとそんなことを思った。波の音が聞こえる。お囃子が聞こえる。支柱となっている竹がパチンと勢い良く弾けた。傍らには空を見上げている娘の横顔。何を思っているのだろう。そして忘...
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「2024年正月雑記」
コメ0
草の根広告社 13ヶ月前
2023年12月31日 仕事を終えて午後7時半頃、横浜にある妻の実家へ。疲労回復の為に本番の前日は飲まないと決めている。アップルタイザーで乾杯。鴨鍋を頂きながら紅白歌合戦を見る。娘は「最後まで見る」とがんばっていたが9時過ぎには眠ってしまう。
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「繰り返していく季節の中で」
コメ0
草の根広告社 15ヶ月前
2023年の秋はクライマックスから始まった。ようやく秋らしい季節に入ったなと感じた途端に晩秋だった。日中は半袖で過ごしていた先日までの夏日が遠い日のことのようだ。気温の変化にまだ頭も体も追いついていない。けれど富士山には少し前から雪が降り積もっていたし、夕焼け空はそれ以前から秋の様相だった。
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「2023年11月4日」
コメ0
草の根広告社 15ヶ月前
七五三参拝の前夜、地元の神社で秋の宵宮が催された。香ばしい匂いを漂わせる屋台とお囃子の奉納。境内に続く階段で友達とうれしそうにはしゃぐ娘の写真を撮ったものの、Tシャツにビーサンという服装のせいで夏祭りにしか見えない。11月としては14年振りの夏日。晩秋とは言い難い、夏のような夜だった。ぼくらが男らし...
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「本当は丸くないのかもしれない」
コメ0
草の根広告社 15ヶ月前
海辺で暮らしていると不思議な光景に出くわす。浜辺は晴れているのに沖では雨が降っているという現象だ。雨と晴れの境目がわかることもある。見通しの良い場所ならではの光景だ。
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「ぼくはいまここにいる。」
コメ0
草の根広告社 15ヶ月前
娘と同級生を水泳教室が行われている市民プールに送り届けた後、レッスンが始まったのを見届けから再び車を走らせた。教室が終わる一時間後までに夕食の買い出しなどを済ませるのだ。一時間前まではひとりで原稿に向かっていたことを思うと肉体はここにあるのに意識は別のところに存在しているような。あるいは自分の...