「人間嫌い」

 人間嫌いの主人公アルセストがよりによって自分が一番嫌いな類いである社交界の女性セリメーヌに恋心を抱いてしまうという矛盾を描いたモリエール作の恋愛悲喜劇だ。書かれたのは1600年代。おそらく「人間嫌い」という言葉を定着させたのもこの作品ではなかっただろうか。思春期の頃、ぼくが自身が抱えていた言語化できない思いが「人間嫌い」と呼ばれるものであることを自覚したのも。