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山田玲司のヤングサンデー 第316号 2020/11/16

「嘘」の使い方

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【男はブリーフか?】


その昔、どこかの高校生か誰かが「男はブリーフか?トランクスか?」という討論を真剣にやっているのをテレビで観た。


記憶が曖昧で実際どんな番組だったかは思い出せないのだけど、数人のチームに分かれて「自分が本当はどっち派なのか」は置いておいて「決められた方の下着」を「こっちがいいのだ!」と説得する。


その時僕は初めて「ディベート」というものを知った。


ディベートなるものは歴史が古く、自分の主張をぶつけ合う系もあるし、「言葉の競技」としてのディベートもある。


難しい話はともかく、その時の僕は「自分の本意でないこと」を主張する、という部分が気に入ってしまった。


そもそも人間は全部「自分の本心」を話しているわけではない。


その場の状況に合わせて「思ってもいないこと」をさもそれらしく語って生きている。


「営業」なんかの売り込みの仕事なんかは毎日がそんな感じだろう。


自分では買わない商品を「絶対に買うべきですよ」なんてやってる。



そんな嘘にまみれた生き方を強いられているので、始めから「嘘でいいんで説得した方が勝ち」という「言葉の競技」は気楽でいい。


「嘘言ってます」と言いながら嘘を言うのだから、これって逆に「嘘言ってない」のでは・・という何だかややこしい状態で面白い。


「面白い」が大好きで、人生に「面白い」を集めまくりたい僕は、いつかこういう「ディベート(言葉の競技)」をやりたいと思っていた。


それが今回ヤンサンでやった「へりくつこねよう・ヘリコネファイト」という企画でした。




【真面目が浮かぶ】


そんなわけで、実際にメンバーとバトルをしてみると更に面白い事がわかってきた。


うちのメンバーは基本的に自分に正直に生きているので「嘘」が苦手なのだ。


「客商売」のしみちゃんですら、自分の本意でない事を主張する時には「面白い感じ」になる。


予想通りヤンサン1の正直男「おっくん」がとにかく「嘘」がつけない。


前回の「ガンダムなんかいらない」というテーマの時は、大好きなガンダムを否定する事になって、悶絶しながら頑張っていた。


「平気で嘘をつく人達」を見ているより、はるかに好感が持てる。


今回僕も参戦してみて、自分の中の「真面目」が邪魔をしているのに気がついた。


そもそもが「嘘つきゲーム」でもあるのだ(本心じゃないのは言ってあるのだ)


説得できれば「根拠」が嘘でもいいというルールなのだ。


「本当です」といいつつ「変なもの」を高額で売りつけてる連中より罪は軽い。


相手が笑っちゃうような「大嘘」を真面目にぶつけていいわけだし、これって「自由度」やら「想像力」やら「遊び心」を存分に発揮できる競技なのだ。


例えば「19世紀のパリでは、ふんどしをつけているだけでモテモテになれた」なんて嘘をぶつけたとする。


それに説得力を持たせるために「当時フランスでは浮世絵が大ブームで、その中に出てくるふんどしなるものがとても魅力的に見えたパリジェンヌは・・」なんてやると更に面白い。


虚実入り交じりの「言葉の武器」がいい感じに仕上がる。

そういう「遊び」なのだ。

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【うそつきくらぶ】


そう言えば昔、精神分析学者の河合隼雄先生が「嘘つきクラブ」なるものをやっていた。