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科学イノベーション挑戦講座第4回「見えない分子をイメージしよう」を実施しました
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科学イノベーション挑戦講座第4回「見えない分子をイメージしよう」を実施しました

2016-08-07 08:00

    この時期は定期テストの準備,採点,成績入力などで大変です。また学会での発表も控えており,動画製作の時間が取れません。期待されている方は,もう少しお待ちください。

    2016
    82()9001600に愛媛大学教育学部で,科学イノベーション挑戦講座第4回「見えない分子をイメージしよう」を実施しました。本プログラムの生徒・児童14名の他に,愛媛大学附属高等学校の高校生12名が,分子模型とICTをつかった分子の立体的なイメージの形成に挑戦しました。

    1 分子の形を立体的にイメージできるでしょうか?
    実施前に,プログラムの受講生と高校2年生合わせて26名に,分子の立体的なイメージについて聞いてみました
    質問「
    氷(固体)・水(液体)・水蒸気(気体)のときの粒子の様子(ならび方や粒子の距離)をノートに記入してください。下のように,大きめの四角を書いて,氷,水,水蒸気を粒子で表してください
    26名のうち,もっとも多かった回答は以下のものです(図1)。みなさんは,どのように考えるでしょうか?

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    図1 小中高校生でもっとも多かった水の三態変化のイメージ(中学生)

    事前学習動画で学習したように,水は他の物質とちがう能力を持っています。



    そのため,学校で習う理論と生活で見かける現象にはちがいが生じることがあります。水分子の粒子の大きさが状態変化で変わらないとき,水蒸気,水,氷の状態変化での粒子の距離は,そのまま中学校第1学年で学習する密度(単位体積当たりの質量)と関係しているはずです。目に見えない現象を,あたまのなかでハッキリとしたイメージにすることは意外と難しいのです。


    2 分子模型をつくって考えよう
    2−1 水分子を真横から見ると?
    分子模型を実際につくって分子のイメージをハッキリさせる方法は,中学校第2学年の教科書でも取り上げられています。本研究室では,新しい素材を使った分子模型として,スーパーボールをつかった分子模型製作を研究しています。
    受講生は,図2の水分子の絵から,水分子を横から見た図について想像しました。もっとも多かった予想を図3に示します。みなさんは,どのように考えるでしょうか?

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    図2 この分子を真横から見るとどのように見えるでしょうか?

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    図3 水分子を真横から見たときの予想(中学生)

    つぎに,分子模型を実際に作成して,真横から見るとほんとうはどのように見えるのかを観察しました(図4)。

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    図4 水分子の製作風景

    2−2 メタン分子を真上から見ると?
    教科書にも何度も出てくる水分子は予想しやすかったかもしれません。では,都市ガスの主成分,メタンはどうでしょうか。受講生は,図5のメタン分子の絵から,メタン分子を上から見た図について想像しました。予想を図5に示します。みなさんは,どのように考えるでしょうか?

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    図5 受講生の考えたメタン分子を上から見たときの図(a)高校生,(b)小学生

    26名の受講生は図5(a)が多く,図5(b)が少ない傾向を示しました,みなさんはどう考えるのでしょうか。人数が多い方が正しい?それは科学的な思考ではありません。この講座中にも感じましたが,もしかするとみなさんは多くの人が正しいと思うものを正しいと考えてはいませんか。科学の世界では,そのような考え方はしません。科学の世界は,自然のルールこそが正しいのです。どれほど私たちの常識に反していたとしても事実こそが正しいのです。だからこそ,科学者は事実,つまりデータを求めています。誰でも,おなじようにすれば,おなじ結果が得られることこそが事実です。では,人数が少ない方が正しいのでしょうか。これもまた科学的な思考ではありません。あなたが「なぜ」そのように考えるのか。これが科学的思考です。

    受講生は,分子模型を実際に作成して,上から見るとほんとうはどのように見えるのかを観察しました(図6)。図6から,水分子とメタン分子の予想が正しかったのかが確かめられそうです。

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    図6 完成した水分子とメタン分子

    3 ICTをつかって分子のイメージをしよう

    本研究室では,ICTをつかった化学教育についても研究をしています。日本化学会情報化学部会誌の論文を以下に紹介します。
    「化学教育における化学ソフトウェアの可能性
    Vol.33 (2015) No.4,p.90-

    https://www.jstage.jst.go.jp/article/cicsj/33/4/33_90/_article/-char/ja/

    今回の講座では,Wavefunction社の教育用iPadアプリ,waterとsubstanecesを利用しました。いずれもApp Storeで購入可能です。値段も安いので,個人での利用もしやすいと思います。

    3-1 waterをつかおう
    waterは,水分子の固体,液体,気体における分子の状態を表す教育用アプリです(図7)。

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    図7 waterで示された96個の水分子(左)水蒸気,(右)水

    教科書では,水蒸気と水の間の状態変化における,分子同士の距離の変化は大きくないように見えます。しかし,それは絵としてのわかりやすさを優先したものです。図7の立方体の大きさは,おなじ96個の水分子の広がりを表しています。96個の水分子を,水から水蒸気に状態変化させると,その体積は大きく変わっていることがわかります。たとえば,水18 gで考えると,18 mLの水が,水蒸気になると244551 mLになります。約1400倍に大きく体積が変わるのです。この体積変化は水が消火につかわれる理由でもあります。

    合わせて,自作した分子模型をつかって水の状態変化を確認していきました(図8)。


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    図8 分子模型をつかって確認しよう

    また,waterでは,分子を動かすこともできます。水蒸気と水は,ともに水分子が動いていますが,水蒸気は水よりも速く分子が動きます。「熱」や「温度」と私たちがよんでいるものは,分子の「運動エネルギー」として考えることもできるのです。ICTをつかって,分子をイメージすることで,私たちに身近な現象を科学することができるようになっていきます。では,水と氷ではどうでしょうか(図9)。


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    図9 waterで示された96個の水分子(左)水,(右)氷

    水と氷の場合は,やはり教科書とはちがっていて,96個の水分子の入る立方体の大きさはほとんどおなじです。では,どちらが大きいのでしょうか? 水でしょうか,それとも氷でしょうか。ここで,図8の青い線を見てみましょう。青い線は,いずれも1 nm(0.000000001 m)を表しています。この青い線の長さと,立方体の一辺の長さの比をとってくらべれば,どちらが大きいかわかりそうですね。言われてみればなるほどと思う話かもしれません。しかし,これを考えつくかどうかが科学者としては重要です。太陽の周りを地球が回っているとか,月の満ち欠けは地球の影だという知識は「当たり前」だと思うかもしれません。しかし,これが「当たり前」ではなかった時代に,思いつくかどうかが重要なのです。今回の講座では,小学生が実際にこの方法で水と氷の立方体の大きさをくらべました(図10)。こうした発想の転換が,科学においてもっとも重要な研究テーマをあたえてくれるのです

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    図10 実際に比をとってくらべてみよう

    3-2 substancesをつかおう

    waterは,水分子についてあつかったものでしたが,substancesは,私たちに身近ないろいろな物質の構造を分子の視点から教えてくれます(図11)。

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    図11 substacesで空気をイメージしよう

    substancesで,空気を表すと,窒素分子や酸素分子がすばやく動き回っていることがわかります。そして,よく見ると,ひとつだけ青い球があることもわかります。この青い球は,どの分子なのでしょうか。酸素や窒素は,原子がふたつつながった二原子分子になっています。一方で,青い球は他の原子とつながっていない,たったひとつの球です。これは,単原子分子です。単原子分子は,きわめて安定な原子で,他の原子と一切化学反応しません。海外では「貴族のようにお高くとまって,誰ともなれ合わない」原子としてnoble gasとよばれています。私にとって,なくては生きていけない空気も分子の視点から見ると,いろいろなことがわかってきます。
    その他に,受講生が分子模型を作成したメタン(Natural gas)やレモネード(砂糖水),お酢などについて観察しました。とくに,レモネードやお酢では,分子の間に働く力について考えました。


    4 分子の形を立体的にイメージは,どう変わったでしょうか?
    実施後に,開始前に行ったのとおなじ分子の立体的なイメージについて聞いてみました(図12)
    質問「氷(固体)・水(液体)・水蒸気(気体)のときの粒子の様子(ならび方や粒子の距離)をノートに記入してください。下のように,大きめの四角を書いて,氷,水,水蒸気を粒子で表してください

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    図12 図1の記述をした中学生の水の三態変化のイメージ

    ICTと分子模型をつかって考えることで,分子のイメージが具体的になって言っているようです。科学のなかでも化学は,原子や分子のイメージがとても重要です。そして,生物でも現在は分子のイメージがないとわからなくなっています。しかし,目に見えないものを,どうやって具体的なイメージにするかは難しいものです。化学者は,それを分子模型をつかって行ってきました。そして,現在ではICTがつかわれるようになりました。原子や分子のイメージがハッキリすれば,私たちの世界が不思議にあふれる複雑で豊かな世界であることがわかります。私たちは,まだまだ何も知りません。原子や分子をイメージして,そのおもしろさにふれてみませんか?

    5 水ロケット打ち上げ試験のつづき
    小学生チームと中学生2チームが打ち上げ試験を行いました。残念なことに強風でロケットが真っ直ぐ飛びにくいという問題がありましたので,記録は40m台になりましたが,設計について新しい結果は得られたようです911日の工作課題発表に向けて,がんばっていきます。

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    図12 水ロケット打ち上げ

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