主張

TPP事前協議

対米追随で「国益」守れない

 環太平洋連携協定(TPP)への日本の参加に向けたアメリカとの事前協議で、自動車の輸入問題でも保険や食品の安全基準など非関税障壁の問題でも、安倍晋三政権がアメリカに大幅譲歩する内容で合意したことに、懸念と批判が高まっています。TPPの交渉に参加しても、日本が交渉力を発揮すれば「国益」は守られるという安倍政権の主張は、早々に破綻しています。不当な「入場料」を払ってまでTPP交渉に参加する企ては、きっぱりと中止すべきです。

アメリカ要求に全面譲歩

 アメリカとの事前協議は、TPP交渉に参加するにはすでに交渉に参加している国の同意が必要なことを口実に、行われてきたものです。アメリカは自動車輸入などの要求を突きつけ、文字通り高い「入場料」を日本に払わせようとしました。明らかになった合意内容は、まさにアメリカの身勝手な要求への譲歩そのものです。

 自動車貿易は、日本がアメリカから輸入する場合はほとんど関税をかけていないのに、アメリカは日本からの輸入車には関税をかけ、TPPで認められるもっとも長い期間、維持すると合意しました。TPPに参加し、関税が撤廃されれば輸出が増えるという安倍政権の主張は、破綻しています。

 アメリカは自国の保険会社の利益のため、日本のかんぽ生命の業務拡大に反対しており、安倍政権はこれを受け入れ、当面新規事業を認めないことを決めました。合意ではTPP交渉と並行して、保険や食品安全など非関税障壁についての日米交渉も行うと約束し、アメリカの要求にさらに譲歩する余地さえ残しています。

 安倍政権は「例外なき関税撤廃」が原則のTPP交渉に参加する言い訳として、農産物などを「聖域」とし「例外扱い」を認めさせると主張してきました。今回の合意には、2月の日米首脳会談での双方の「センシティビティ」(重要品目)合意についての確認があるだけで、具体的に踏み込んだ内容は一切ありません。

 アメリカ側の発表文では日本の農産物さえ明記されておらず、逆に日本に「例外なき関税撤廃」を求めていることを強調しています。ニュージーランドなどアメリカ以外の参加国も「例外なき」を要求しており、交渉しだいで「聖域」が守られるかのようにいう安倍政権のいいのがれが通用しないことは、いよいよ明らかです。

 重要なのは、こうした対米追随的な事前協議の合意を閣僚会議で確認するにあたって、安倍首相がTPPは、「安全保障上の大きな意義がある」と強調したことです。どんなに経済的不利益をこうむっても、「安保のため」ならやむをえないという論理にたてば、どんな経済的譲歩も正当化されます。安倍政権にはもともと日本の農業など「国益」を守る基本姿勢はなかったというしかありません。

交渉参加は中止しかない

 日本の交渉参加が米議会などに認められれば、安倍政権は7月からでもTPP交渉に参加する意向です。安倍政権の異常な前のめりの姿勢はきわめて危険です。

 TPPが日本の農林水産業に壊滅的な打撃を与えることは各道県が相次いで発表している試算でも明らかです。TPP交渉参加をやめさせるため、世論と運動を強めるべきときです。