主張

生活保護改悪「修正」

「安全網」破壊の暴走をやめよ

 生活困窮に陥った人たちの生活保護からの締め出しにつながる改悪案について、自民、民主、公明、みんなの4党が、申請の条件を厳しくする政府案の「修正」で合意し、今国会で成立させる動きを一気に加速させています。4党の「修正案」は、保護が必要な人の権利を制限する改悪案の危険な本質を変えるものではありません。国民の生存権を保障する生活保護の理念を破壊する大改悪を強行する暴走は絶対に認められません。

危険な本質変わらず

 1950年施行の生活保護法の本格改定は今回初めてです。安倍晋三政権が提出した改悪案は、60年以上にわたり国民の最低生活を守り支える役割を果たしてきた生活保護の本来のあり方を大本からゆがめ、掘り崩す重大な内容です。

 その象徴が、収入の道が断たれて福祉事務所に救いの手を求めてきた人たちを追い返すことを合法化できる条文の新設です。現行法では、保護が必要な人は口頭でも申請できたのに、改悪案では申請者が通帳や給与明細などを提出しないと申請すら受け付けないとしたのです。

 いま全国各地の福祉事務所では、さまざまな理由をつけて申請書を渡さない違法な“水際作戦”が横行しています。この違法を「合法」に転化する改悪案に、日本弁護士連合会や貧困者支援に取り組む市民・法律家の批判が集中したのは当然です。

 4党の「修正案」は、書類提出を義務づける改悪案の本質をなんら変えていません。「特別の事情」のある人だけを例外にするという規定を設けただけです。「特別の事情」にあたるかどうかは、福祉事務所の判断に委ねられることになるため、「あなたは書類を出せるだろう」と一方的に決めつけられ、申請が拒否される危険があることは明らかです。

 「修正案」では、扶養義務者にたいする福祉事務所の調査権限強化の条文は一言一句修正されていません。保護を望む人が「親兄弟に迷惑かけたくない」と申請をあきらめてしまう事態はますます広がりかねません。こんな「修正」を加えただけで、大改悪に同調する民主党などの責任は重大です。

 生活保護法改悪案とセットで提出されている生活困窮者自立支援法案は、生活保護受給者を無理やりに抑制する手段に使われかねないもので、強行は許されません。

 この2法案と同時に審議されている「子どもの貧困対策法案」は、子どもの貧困対策のために必要な措置を国に講じることを求める意義ある法案です。しかし、子どものいる困窮世帯までも制度から締め出しかねない生活保護法大改悪とは絶対に相いれません。実効性ある「子どもの貧困対策法」実現のためにも、生活保護法改悪案は廃案にすべきです。

生存権保障の充実こそ

 生活保護受給者が210万人を超えたことをもって政府は保護費削減と受給者減らしを叫びますが、本末転倒です。受給者が増えたのは財界・大企業のすすめる雇用破壊や、低賃金、低年金など政府の失政がもたらした結果です。200万人以上の命と暮らしを支えている「最後の安全網」をお荷物扱いする国に未来はありません。憲法25条が掲げる生存権が名実ともに保障される制度へ充実・改善を求めるたたかいが急がれます。