主張

2013国民春闘

賃上げする国への転換を

 ことしの春闘はどうなるのか。賃金は上がるだろうか―。労働者と家族の強い期待をうけて2013年の国民春闘が始まります。

 深刻なデフレ不況から抜け出し、経済と企業の健全な発展をはかるために、春闘で賃金引き上げを求める声がかつてなく高まっています。財界からは「きびしい国際競争で企業も苦しい」「賃上げなど論外」などと、労働者をあきらめ気分にさせる宣伝がさかんに流され、攻防が激しさを増しています。

家計にモノを買う力を

 日本の経済が低迷している最大の問題は、大企業が260兆円もの内部留保をため込み、まともな使い道も考えられずに金余り状態にある一方、労働者の賃金が減りつづけ、家計が物を買う力を失っているゆがんだ状態になっていることです。国税庁の民間給与実態調査でも2000年から11年の間に労働者の年収が52万円も減っています。これが消費を落ち込ませ、企業も商品が売れず、景気がよくならない原因になっています。

 労働者と家族の暮らしのためにも、経済と産業・企業のまともな発展のためにも、賃上げ、雇用と労働条件の改善がいまほど求められているときはありません。

 ILO(国際労働機関)は昨年12月の「世界賃金報告」で、労働生産性が上がったのに賃金が上がらなかった国として日本をあげ、労働分配率も低下が顕著だと指摘しています。「報告」は、労働分配率の低下は「家計消費をむしばみ、総需要抑制をひきおこす」といい、多くの国で賃金カット競争を実施し、労働分配率の「底辺への競争」がすすめば、世界の総需要を冷え込ませることになると警告し、賃金増加策をとるべきだとのべています。

 この点で注目されるのは、ドイツのたたかいです。ドイツでは、企業の競争力を高めるとして長い間、賃金の抑制傾向にありましたが、昨年、20年ぶりの高率と言われる4・3%の賃上げに労使が合意しました。これがドイツの内需を活性化し、欧州経済へのプラス要因になるとも見られています。

 この高賃上げは、ドイツ労働組合総同盟と、そのもとにある金属産業労組などが、「賃上げがあってこそ景気が上向く」と、警告ストを決行して経営側と対決し、たたかいとった成果です。日本の連合と、自動車、電機などの大手労組が加入している金属労協が、今春闘でもベースアップを要求していないのと対照的な姿勢です。この極端な労資協調主義でいいのかどうか、労働組合としての存在意義が問われています。

 今春闘は、賃上げ、雇用と労働条件の改善をかちとるためにも、安倍晋三政権と財界による大企業の利益を最優先する経済政策と対決し、国民の所得を増やして景気を回復する政策への転換をはかることが焦点です。大企業の巨額の内部留保のごく一部を社会的に還元すれば、道が開かれます。

大企業利益優先策と対決

 消費税増税と社会保障改悪、原発再稼働・新増設、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加、憲法改悪・歴史見直しの反動化の動きなどとの国民的なたたかいも重要になっています。

 このなかで全労連をはじめたたかう労働組合が、一致点による国民的共同の発展に大きな力を発揮することが強く期待されます。