主張
「エネルギー計画」
「原発ゼロ」の決断こそ先決だ
安倍晋三政権が進めてきた「エネルギー基本計画」の策定作業が、参院選のあと動きだしています。東日本大震災後、民主党政権はそれまでの原発に大幅に依存した計画を「白紙」で見直すとしていたのに、安倍政権はそれを撤回し、原発依存を復活させた計画をつくろうとしてきました。しかし、原発の新増設はもちろん、運転休止中の原発の再稼働さえ見通しが立たないなかで、エネルギー計画の策定も難航しています。見通しが立たず、安全性が確立されていない原発からの撤退を決断し、太陽光や風力など自然エネルギーの開発にこそ力を注ぐべきです。
原発復活ねらう安倍政権
「エネルギー基本計画」は、石油や天然ガス、原子力などを使って電気などを起こし、産業や国民生活に不可欠なエネルギーを確保する国の基本計画です。かつての自民党政権は石炭から石油への転換を進め、民主党政権もいったんは原子力に大幅に依存した計画をつくりました。しかし、2011年3月の東日本大震災と東京電力福島第1原発などの重大事故でその計画は破綻、民主党政権は「白紙」から見直すとして、菅直人政権はいったん「2030年代原発稼働ゼロ」の目標を持ち出しました。ところが、その目標は財界などの反対で正式に決めることができず、昨年暮れの安倍政権の復活のあと「ゼロ」から見直すとして原発依存を復活させたものの、いまだに計画策定のめどが立たないままになっています。
安倍政権は、「エネルギー基本計画」は決めないまま原発「活用」の方針を打ち出し、「安全性」が確認された原発は再稼働させるなどと原発依存を推進しています。しかし、東電福島事故も収束していないのに原発を再稼働させる計画が国民の支持を得られるはずもなく、このままでは年末に計画をまとめるにしても電源をどのぐらい原発に依存するかは示せないのではといわれています。
技術的に未確立で福島原発事故が示したようにいったん事故が起きれば取り返しのつかない重大な被害を及ぼす原発の危険性を直視すれば、原発への依存はやめ、「原発ゼロ」を決断することこそ重要です。安倍政権が、「エネルギー基本計画」の策定のため、原発の推進派を中心に編成した総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会が先週開いた初会合では財界などから原発を再開しなければエネルギーが不足するなどの発言が相次ぎましたが、いまでさえほとんどの原発が止まっていても電力は足りています。原発を再稼働させれば行き場のない使用済み核燃料(死の灰)がたまり続け、その処理に巨額の資金が必要になることひとつ見ても、原発は再稼働せず、廃炉に向かうべきです。
自然エネルギーへの転換
原発に代わって注目されているのは太陽光、風力などの自然エネルギー(再生可能エネルギー)です。南北に連なる日本列島は、太陽光、太陽熱、風力、水力、地熱、波力など自然エネルギーの宝庫です。今はその一部しか利用されていませんが、原発から撤退し、原発のための資金や技術を集中すれば大きく伸ばすことが可能です。
自然エネルギーは温暖化ガスを出さないので環境にも効果的です。原発からの撤退を自然エネルギー転換への好機にすべきです。