主張

派遣制度の見直し

財界のいいなりでない議論を

 労働者派遣制度の見直しについて有識者による研究会報告書が出され、これから厚生労働省の労働政策審議会での議論が始まります。6月に出た政府の規制改革会議答申と今回の有識者の報告は、いまの派遣制度を根本から転換しようとするものです。正社員を派遣に置き換える障害を取り払い、財界が求めている便利で安上がりに労働者を使える制度への変更です。低賃金で身分が不安定な非正規雇用の拡大が、国民のくらしを困難にし、景気回復の足を引っ張っているいま、派遣労働の拡大は、明らかに逆行するものです。

根本改悪くい止めるため

 労働者派遣は、派遣会社が労働者を別の企業に派遣して働かせる「間接雇用」という不安定な働かせ方です。派遣を受け入れる企業は正社員の代わりに使用してはならないという「常用代替防止」を原則にしています。業務も「臨時的・一時的業務」に限るとされ、「専門業務」に指定された通訳など26業務以外の「一般業務」は使用期間が原則1年(最長3年)に制限されています。

 実際には製造業の大企業を中心に、労働コスト削減のために正社員のリストラをすすめ、基幹的な業務に派遣など非正規雇用を導入する違法・脱法行為が横行しています。低賃金で、景気の良しあしで簡単に「派遣切り」する非人間的な扱いが問題になり、企業にたいする規制強化と派遣労働者の保護が課題になっていました。

 政府の規制改革会議や今回の研究会報告は、企業の規制どころか、「常用代替防止」という企業をしばる原則を見直し、業務による派遣期間規制を労働者個人の規制に代えるという重大な変更を提起しています。派遣会社との雇用契約が有期の労働者の場合だけ「3年」という制限がありますが、労働者を入れ替えれば問題なく無期限使用が可能になります。こんな変更を許せば、企業は正社員を切り捨てて、安上がりな派遣に置き換える動きをいっそう強めることは目に見えています。

 労働者派遣法の根本改悪をくい止め、派遣労働者の非人間的な労働実態を改善する抜本改正のたたかいの強化が急がれています。

 その第一は、労働者派遣はあくまでも臨時的・一時的業務に限り、常用代替としてはならないことを法律の目的に明記することです。また規制を業務から個人に代えることに反対し、製造業への派遣は全面禁止、専門業務の内容も真に専門的な業務に制限することです。違法派遣があった場合、派遣先企業に期間の定めのない契約で直接雇用されたとみなす「みなし雇用」規定も重要です。

 賃金など労働条件で派遣先労働者との均等待遇、派遣先企業が団体交渉に応じる義務の明記など、これまでの運動でつくられてきた一致点の実現へ共同を大きく広げることが求められます。

教訓をしっかり生かし

 2008年秋の「リーマン・ショック」での大量「派遣切り」で20万人を超える労働者が職を失い、住まいも失った悲惨な状況を繰り返してはなりません。いま必要なのは、「雇用の調整弁」として人間を企業の使い捨て自由にすることがいかに深刻な事態を引き起こすか、教訓をしっかり学び、企業の規制と派遣労働者を保護する法改正への世論を高めることです。