全日本空輸(ANA)は19日、客室乗務員を採用する際の雇用形態を、契約社員から長期雇用の正社員に改めると発表しました。2014年度から全員が正社員採用され、13年度も一部が正社員として入社予定です。
全日空は1995年度以来、客室乗務員を1年更新の契約社員として採用し、3年経過してから正社員にしていました。
正社員採用に改める理由について、全日空広報部は「航空業界の競争が激化しているので、品質向上のため優秀な人材を確保したい。客室乗務員は保安要員でもあり、長期雇用で採用することで、はじめから高いところを目指して働いてもらいたい」としています。
正社員となることで、当初から産前産後・育児休暇や育児期間中に勤務日を減らす制度などを利用できます。
契約制客室乗務員は95年度以降、全日空や日本航空など航空各社で人件費削減を目的として導入されました。航空労組連絡会の専門部として客室乗務員やその労働組合でつくる客室乗務員連絡会(客乗連)は、空の安全を守るには長年働き経験を積み重ねることが必要だとして、正社員採用に戻すよう訴えていました。
雇用が安定してこそ安全・サービス向上
全日空のボーイング787型機が1月、バッテリートラブルで緊急着陸した際に、乗客の速やかな避難を誘導したのは、客室乗務員です。客室乗務員を正社員採用に改めたことは、空の安全を守るために重要です。
客室乗務員は1994年までは全員が正社員採用でした。ところが、日本航空や全日空など航空各社は契約社員を導入し、3年で使い捨てにしようとしました。
日航客室乗務員組合(現キャビンクルーユニオン)はじめ客室乗務員連絡会は、空の安全を守るには、正社員として長年働き、経験を積み重ねることが必要だと訴えました。当時、「スチュワーデスはアルバイトでいいのか」という合言葉が話題になりました。
この問題を国会で追及したのが日本共産党です。高崎裕子参院議員(当時)は95年3月、国会質問で契約3年以降は無条件で正社員化するようただし、亀井静香運輸大臣(当時)が「3年はいわば試用期間。新たに採用試験をうけることなく、身分を(正社員に)切り替える」と約束。正社員化の道を切り開きました。
契約社員導入から18年、全日空が正社員採用に戻したことは、客室乗務員の雇用が長期的に安定してこそ、安全もサービスも向上して乗客の信頼を得られ、会社にとっても利益になることを示しています。
一方、日航では20代の契約社員をパワハラのすえに雇い止めにする事件が起こり、裁判になっています。また、正社員化のたたかいや、育児しながら働き続けられる環境づくりの中心となってきたベテラン客室乗務員の解雇が強行され、撤回を求めて裁判が続いています。
空の安全を守るためには、日航での不当な雇い止めや解雇が撤回され、すべての航空会社で「雇用は正社員が当たり前」が実現されることが重要です。 (田代正則)