事故原因器を納入
放射性物質漏れ事故を起こして廃炉が決まった米カリフォルニア州のサンオノフレ原発に、事故原因となった蒸気発生器を納入した三菱重工業が、巨額の賠償を求められています。米原発会社側は、契約の上限約138億円(約1億3700万ドル)を超え、損害全額の責任も負うべきだとしており、原発輸出に前のめりになっている安倍政権の姿勢を改めて問い直すものとなっています。(藤沢忠明)
安全無視の「安倍戦略」
同原発を運営する電力会社のサザン・カリフォルニア・エジソン社(SCE)は、三菱重工に対し、蒸気発生器の供給契約上の責任上限を超えて多額の損害賠償を請求する意思を記載した「紛争通知」を送付。原発停止中の代替電力確保にかかわる費用や、発電できないままの原発の維持費用などの支払いなども求めているとされます。その額は、数十億ドルにのぼると報道されています。
SCEによると、同原発は約140万世帯分の電力をまかなってきましたが、事故後の調査や対策費用だけですでに1億4000万ドル以上を支出したといいます。
これに対し、三菱重工は、「契約上の当社の責任上限は約1億3700万米ドルであり、代替燃料コストを含め間接被害は排除されている」と強調、「必要な対抗措置を取ることも検討する」としています。
東京電力福島第1原発事故後、安倍首相は、東芝や日立など日本の原発メーカーと一体となって、原発輸出のトップセールスを進めています。三菱重工についていえば、トルコを5月の連休に訪問した安倍首相が、同国首相との首脳会談で、三菱重工と仏アレバ社の合弁会社が開発した最新鋭の炉型の採用を前提とした「シノップ原発プロジェクト」の推進で合意しています。
しかし、地震国のトルコで、原発が地震で被災し、大きな事故を起こせば、輸出した責任はどうなるのか―。今回のアメリカでの事態は、事故が起きた場合、巨額の製造物責任を問われかねないことを意味し、原発輸出に大きなリスクがあることを浮き彫りにしました。
福島事故 GEに製造者責任も
東電福島原発事故では、被害者への全面賠償には、東電とともに米ゼネラル・エレクトリック社(GE)などの製造者責任も問うべきだ、と国会で取り上げられたことがあります。
事故後まもない2011年5月27日の衆院経済産業委員会で追及したのは、日本共産党の吉井英勝議員(当時)。1958年発効の日米原子力協定では、アメリカの要求で、米国側が提供した核燃料の加工、使用などによる損害については、第三者に対する責任を含め「その責任を免れさせ(る)」とした免責条項が盛り込まれていた問題を取り上げました。
吉井氏は、福島第1原発は、1号機はGEがつくり、2号機以降もGEと東芝などがつくったことを指摘。外務省の武藤義哉審議官から「88年の現協定では旧協定の免責規定は継続されていない」という答弁を引き出し、GEなどに対して、免責はなく、製造物責任を問うていくことはできるという立場を確認しました。