主張

消費増税点検会合

増税の中止こそ議論すべきだ

 安倍晋三政権は週明けから消費税増税の影響を検討する「集中点検会合」を開き、来年4月からの増税実施についての議論を本格化させます。「点検会合」は6日間にわたって開かれ、麻生太郎副総理・財務相、甘利明経済財政政策担当相らが60人もの経済学者や財界人などから意見を聞く、異例なものです。安倍政権の経済政策「アベノミクス」でも経済が立て直せていないことを浮き彫りにするものですが、鳴り物入りの会合の結果が、結局増税を強行するとなるのでは、国民を欺くことにしかなりません。消費税増税に頼らない方策をこそ議論すべきです。

増税実施に自信がない

 「集中点検会合」は、増税法で消費税増税の実施は「経済状況等を勘案して」となっており、実施に消極的な意見も出だしているため、安倍首相が開催を言い出したものです。9月8日に発表される今年4~6月期の国内総生産(GDP)改定値などと合わせて、10月ごろまでに安倍首相が、予定通り増税するかどうかを決めます。

 最終的に消費者に負担が押し付けられる消費税の増税は、国民の購買力を奪い、中小業者などの売り上げを減らして、景気を悪化させます。来年4月の5%から8%への増税と、再来年10月からの8%から10%への増税で国民の負担増は合わせて13・5兆円にのぼります。国民の暮らしと経済への打撃はまさに壊滅的です。

 自民・公明と民主の3党が1年前の8月に成立を強行した増税法で実施のさいの条件を付けたのもその懸念が否定できなかったためですが、「経済再生」を最優先した安倍政権の経済政策にもかかわらず、国民の所得や雇用は伸び悩んでいます。12日に発表された4~6月期のGDP速報値も、経済成長が予想を下回り、設備投資や住宅投資はマイナスでした。いまだに安倍首相が増税実施を決めきれず、「点検会合」を開くことになったのも、もくろみ通り進んでいないことを示すものです。

 「増税点検会合」には経済学者や各分野の有識者が招かれていますが、参院選後の世論調査でも57・4%が来年4月から予定通り消費税を引き上げるべきとは「思わない」(「産経」20日付)というような、国民の世論を反映しているわけではありません。主催する側の麻生副総理も「(増税を)考え直さなければならないような情報はない」と、最初から増税実施の結論は見えているとの態度です。

 それでも安倍首相の周辺には増税の実施時期や上げ方を見直す意見がありますが、たとえ消費税増税の実施時期を多少遅らせたり、増税幅を一度に3%引き上げるのではなく1%ずつにしたからといって、増税には変わりません。経済と暮らしを本気で心配するなら小手先のごまかしではなく、消費税の増税は中止すべきです。

1997年以上の打撃に

 実際、1997年に消費税の税率が3%から5%に引き上げられたときには、よくなり始めた景気が落ち込み、長期にわたる不況になりました。今回の場合、国民所得の落ち込みが続いており、国民生活と経済への打撃はより深刻との声が強まっています。

 いまこそ消費税増税を中止し、国民の所得を増やす景気対策に転換して、消費税増税に頼らない財政再建の道に踏み出すべきです。