タックスヘイブン(租税回避地)につくったペーパーカンパニー(幽霊会社)を利用した多国籍企業の課税逃れが各国で問題となる中、経済産業省が2014年度「税制改正」要望で、タックスヘイブン税制のいっそうの緩和を求めていることが明らかになりました。財界の求めに応じてペーパーカンパニーを野放しにするもので、世界的な規制強化の流れに逆行しています。
タックスヘイブン税制は、日本に比べ法人税率が低い国につくられた日本企業の子会社を対象にしたものです。子会社に企業としての実態がなく、課税逃れのためにつくられたペーパーカンパニーと判断した場合、子会社の所得を親会社の所得と合算し、日本の法人税率を適用します。
10年までは、税率25%以下(トリガー税率)の国につくられた子会社が対象でした。中国、ベトナム、マレーシア(いずれも税率25%)、韓国(同22%)への日本企業の進出が加速する中、経団連が引き下げを要求。10年の「税制改正」で11年から20%に引き下げられました。日本共産党の大門実紀史参院議員は当時、国会でこの問題を取り上げ、税率引き下げはペーパーカンパニーを野放しにし、「税逃れを助長する」と批判しました。
財務省が大門議員に提出した資料によると、11年のタックスヘイブン税制適用企業は3897社(親会社の資本金1億円以上)。10年比で573社減りました。中国、ベトナム、マレーシア、韓国で事業を展開する企業への適用数も、同61社減の363社となっています。08年以降毎年、2倍以上に伸びていた4カ国でも、減少に転じました。トリガー税率を引き下げた結果、低税率国につくられたペーパーカンパニーの多くが制度の対象外となった形です。
経団連は9日に発表した提言で、トリガー税率の18%への引き下げを要求。経産省も「税制改正」要望に税率の引き下げを盛り込みました。
国際的な取り組みに逆行
大門実紀史参院議員の話 今月ロシアで開かれた20カ国・地域首脳会議の宣言は、各国が多国籍企業の税逃れを許さず、応分の税を支払うための国際的な取り組みを提起しました。多国籍企業の税逃れを許さない仕組みこそ必要なのに、経産省や経団連の姿勢はこの宣言に逆行しています。
庶民には消費税増税を押し付けようとしながら、トリガー税率をさらに引き下げ、大企業の課税逃れの道具となっているペーパーカンパニーを野放しにすることは全く道理に合いません。