主張
TPP交渉大詰め
脱退以外に「国益」は守れない
環太平洋連携協定(TPP)交渉が大詰めを迎えています。12月上旬にシンガポールで開く閣僚会合がヤマ場で、条件を整えるため首席交渉官会合が週末にかけ米国で開かれています。交渉を主導する米国は「年内妥結」実現のため、各国の要求を踏みつぶすブルドーザー外交を強行しています。「例外なき関税撤廃」が原則のTPP交渉に参加すべきでないと、日本共産党と農業者や消費者ら広範な国民が主張してきたことの正当性が浮き彫りになっています。
関税撤廃を迫る米国
「すべての目が日本に向いている」―フロマン米通商代表は先の日米財界人会議でこう述べました。「(野心的な)交渉を妥結させる政治意思を示す時だ」と述べた直後のことです。交渉の成否がかかっていると、日本を名指しして態度変更を迫ったものです。
安倍晋三政権は、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の5項目は関税を撤廃しない「聖域」とし、「国益は守る」として交渉に突き進みました。日米首脳が2月の共同声明で農産物関税を交渉次第としたことで、「聖域なき関税撤廃が前提でない」と強弁しました。
ところがフロマン代表は、TPPは「原則として全品目の関税を最終的に撤廃するものだ」と強調し、「長年困難とされてきた『頑固問題』を俎上(そじょう)にのせるべきだ」と畳み掛けました。先月には甘利明TPP担当相への電話でコメ以外の関税撤廃を求めたばかりです。日米並行交渉のために来日したカトラー次席代表代行は、全品目について関税撤廃を協議するよう迫っています。
安倍政権は米国の圧力を前に関税表の細目を見直し、日本が提示する自由化率を当初の「80%」程度から「95%」近くまで引き上げたとされます。5項目の関税を残した場合は93・5%となることから、政府はすでに5項目の自由化にも踏み込んでいます。
安倍政権が、自らが決めた交渉参加の前提条件を放棄する公約破りの姿勢を強めていることはきわめて重大です。しかも米国は、譲歩を重ねる安倍政権の姿勢をみながら、「100%」を迫っています。米国は、安倍政権が金科玉条にする日米同盟をテコに使うだけでなく、TPPが「アベノミクスの第3の矢」に沿うと強調する周到さです。TPP交渉が、安倍政権の宣伝したように「強い交渉力」で「国益」を守れるようなものでないことは明らかです。
「関税全廃」を迫る点では、日本の財界も同じです。経団連の米倉弘昌会長が共同議長を務めた日米財界人会議は共同声明で、若干の品目では期限に「柔軟性」が必要としただけで、日米が「関税全廃」で指導性を発揮すべきだと主張しています。
経済に壊滅的打撃
農家1戸当たりの耕作面積が、日本の100倍の米国、1500倍の豪州などと「公正な競争」は成り立ちません。関税が撤廃されれば、食料自給率は政府試算でも、39%から27%に劇的に落ち込みます。その影響は農業や食品産業にとどまらず、全国の地域経済が壊滅的打撃を受けます。
交渉に「聖域」など存在しないことははっきりしています。交渉自体が「国益」に反する以上、自民党自身が公約したように、交渉から「脱退」すべきです。