主張

TPP交渉

やっぱり撤退以外に道はない

 環太平洋連携協定(TPP)交渉は、成否を左右しかねない次回閣僚会合を今月下旬に開催することがほぼ固まったとされ、一段と緊迫しています。安倍晋三首相は「国益を守る」と言いながら、交渉が厳しさを増すなかでも推進の立場に固執しています。交渉を主導する米国のオバマ政権は農産物輸出に拍車をかけており、TPPが日本農業に壊滅的打撃を与える危険が高まっています。「国益」を守る道は、交渉から撤退する以外にないことがますます明らかになっています。

米産農産物の輸出拡大

 「『メード・イン・USA』の印がある農産物をもっと外国に売れるよう、私は新たに『メード・イン・ルーラル・アメリカ(米農村製)』構想の立ち上げを指示した」。オバマ大統領は7日、改正農業法の署名にあたって、米国の農産物輸出がかつてなく高い水準にあると胸を張り、さらなる拡大を公約しました。

 その姿勢は、米議会に提出されている大統領貿易促進権限(TPA)法案にも貫かれています。日本共産党が国会で指摘したように、同法案は農産物貿易交渉の眼目を米国と「同等」の条件確保だとし、相手国の関税は「米国と同等かそれを下回る水準」に引き下げると明記しています。

 これによれば、日本の関税率はコメで1キロ341円から約1円に引き下げられます。農家1戸当たりの耕地面積が日本の100倍近い米国との「同等」な競争などそもそも成り立ちません。米国の主張からは、TPPが「例外なき関税撤廃」を原則とし、米国をはじめとした農産物輸出国の利益確保が狙いであることが鮮明です。

 一方で、TPPを推進する市場原理主義の立場は、米国内でも厳しい批判にさらされていることもみる必要があります。「従来の通商協定のもとで雇用喪失、環境・保健関連法への攻撃、安全でない食品の大量輸入を数十年も経験したいま、アメリカは新たな通商政策をたてなければならない」―米労働総同盟産別会議(AFL・CIO)をはじめ550を超える団体が、TPA法案に反対する声明に賛同しています。

 賛同団体の多くはオバマ大統領と与党・民主党の支持層です。こうした世論を背景に、上院民主党トップのリード院内総務が法案への反対を表明し、早期成立が見込めない事態になっています。オバマ大統領は「身内」を説得すべきだとする声が、野党・共和党をはじめTPPを推進する勢力から上がっています。追い込まれた格好のオバマ政権が、農産物の輸出拡大という目に見えて即効性のある課題に力を入れる構図です。

“落としどころ”の危険

 日本のTPP推進勢力の間でも、米議会の状況などを前に、次回の閣僚会合で交渉進展の動きが鮮明になることが重要で、さもなければ交渉は「漂流する」との“懸念”が強まっています。

 焦点となっているのが日米交渉です。日本共産党の紙智子参院議員は予算委員会で、「日本が交渉をまとめようとすれば米国の主張に乗るしかない」と警告し、安倍政権に交渉からの撤退を迫りました。米国との交渉で安倍政権が進めている“落としどころ”を探るやり方は、国益に反するものとなることが明らかです。