主張

医療介護改悪法案

行き場をますます奪うのか

 安倍晋三内閣が、消費税増税と社会保障「改悪」路線を具体化した医療・介護改悪法案を国会に提出しました。地域での医療と介護の「総合的な確保を推進する」とうたう法案には、患者・利用者に大幅なサービス利用制限と負担増を強いる内容が次々と盛り込まれました。安心して医療や介護を受けて暮らすことを願う高齢者・家族の切実な思いに逆らうものです。老後の安心を壊す法案を強行することは許されません。

要支援を締め出す

 医療・介護改悪法案は、“患者追い出し”につながる病院機能再編などの医療法改定と、利用制限・負担増の介護保険法改定など、本来なら別々の法案として審議すべきものをひとまとめにした異例の法案です。国会の十分な審議を確保するうえからも、きわめて乱暴なやり方です。

 政府は、昨年の国会で強行した社会保障改悪プログラム法を根拠に、医療関係は今年10月、介護保険関係は来年4月から順次施行の構えですが、日程先にありきで強行すべきではありません。

 なかでも介護保険法改定は、2000年に制度発足以来、初めてとなる大改悪が目白押しです。要支援1、2の高齢者が利用する訪問介護や通所介護を、国の基準とする介護保険サービスの対象から切り離し市町村ごとの事業に移すことは、どこでも平等に介護サービスを受けられる国民の権利を覆すものです。訪問・通所介護が市町村の事業になれば、自治体の財政状況などに左右され、いまと同じサービスを受けられない地域が出ます。居住地域によって格差が広がることは介護保険への不信を高める結果しか生みません。

 年金収入280万円以上の単身高齢者などのサービス利用料を1割負担から2割負担に引き上げる改悪は筋が通りません。対象は高齢者の5人に1人にのぼります。月々の保険料で収入による負担を求められたうえ、いざサービスを利用するときにまで収入で差をつけられることは保険の建前に反します。医療は1割負担なのに介護は2割負担という人も生まれることも不条理です。病気やけがが治れば基本的に治療が終わる医療と違い、介護はほぼ一生続きます。負担は計り知れません。

 いまでも高い利用料負担でサービスを断念する事態が後を断たないのに、それに拍車をかけるものです。特別養護老人ホームの入所を「要介護3」以上に限定することは、入所を待ち続ける高齢者・家族にとってあまりに過酷です。

 法案の狙いは、「軽度者」の利用を削減・抑制して公的介護保険にかかるお金を抑え込むことです。しかし、サービスから締め出された「軽度者」の重度化は、公的費用をさらに膨張させます。目先の“費用抑制”による改悪は制度の将来も揺るがすものです。

切り捨て路線転換こそ

 医療・介護改悪法案は、国民・家族に「自助・自立」の名で自己責任を迫る社会保障改悪の危険な姿を浮き彫りにしています。

 高齢者や家族から「サービスを切られたら生活が成り立たない」「認知症の患者と家族の願いに反する」と怒りが噴出し、地方自治体からも異論が相次いでいます。政府は改悪法案を撤回し、安心の医療・介護の再生・充実に向けた制度づくりに転換すべきです。