主張
社会保障解体方針
「自己責任」論で暮らし壊すな
安倍晋三内閣が閣議決定した経済財政政策の基本となる「骨太の方針」と「改訂成長戦略」には、国民が安心できる社会保障の土台を掘り崩す政策が次々と盛り込まれました。医療、介護、年金、生活保護などの大幅な給付減と負担増の強化ばかりでは、暮らしはとても成り立ちません。お金のない人が必要なサービスを受けられなくなる「営利化」の方向も露骨です。国民生活を壊す「骨太の方針」と「改訂成長戦略」の具体化を許さないたたかいが急がれます。
「公助」を消し去る
社会保障費の削減・抑制方針を列挙したのが「骨太の方針」です。高齢者人口の増加などにともない必要となる社会保障費の「自然増」までも「聖域なく見直し」「徹底的に効率化・適正化」することを容赦なく宣言しています。
社会保障費の伸びを無理やり抑え込む政策は、2000年代前半に小泉純一郎政権が強行し、日本中に「医療崩壊」「介護難民」などの事態を引き起こしたものです。深刻な傷はいまなお残されたままなのに、またも過酷な削減・抑制路線に突き進むことは、逆行そのものです。国民の命と健康、暮らしに甚大な被害を与えかねない危険きわまりない方針です。
昨年の「骨太の方針」にはあった「自助、共助、公助のバランス」という記載が、今年の「骨太の方針」では消し去られたことは重大です。代わって強調するのが「自助・自立のための環境整備」です。なりふり構わぬ社会保障費削減路線を推進する安倍政権の姿勢を象徴しています。先の通常国会で強行した医療・介護総合法に盛り込んだ「軽度」の要介護者を公的制度から締め出すなどの仕組みづくりをさらに加速するものです
国の責任を大きく後退させ、個人や家族に負担と犠牲を強いる“自己責任による社会保障”の考えを前面に掲げたことは、憲法25条にもとづく国民の生存権保障や社会保障の向上・増進にたいする国の責任放棄に等しいものです。
公的な社会保障を解体することと一体で、社会保障を「産業化」「営利化」の舞台に塗り替える方針を掲げたのが「改訂成長戦略」です。「公的保険外のサービス産業の活性化」「ヘルスケア産業を担う民間事業者等が創意工夫を発揮できる市場環境の整備」など健康・医療・介護関連企業が大もうけできるための手厚い対策が書き込まれています。民間企業が行う健康・疾病予防サービスの利用者を増大させる具体策などを掲げています。社会保障の分野で「世界一企業が活躍できる」条件づくりであることは明らかです。
高額な治療費が支払えないと受診できない「混合診療」の拡大に道を開く危険のある仕組みの導入も提言しました。お金の有無にかかわらず、必要な医療を受けられる「国民皆保険」原則を突き崩すことは、許されません。
国民を優先する政治こそ
国民の安心・安全を支える公的な社会保障の仕組みを壊して、財界・大企業のもうけの場として差し出そうとする安倍政権の政策は、異常というほかありません。
大企業の大もうけを保障するために、国民の生活を痛めつける政治では日本経済そのものも成長できないことは明らかです。国民の暮らしを最優先にする政治への転換こそが必要です。