主張

14年版防衛白書

集団的自衛権の矛盾あらわに

 防衛庁(防衛省の前身)と自衛隊発足から60年、刊行から40回を迎える「2014年版防衛白書」が閣議に報告されました。白書は、集団的自衛権の行使を容認した安倍晋三内閣の閣議決定(7月1日)について「わが国の平和と安全を一層確かなものにしていくうえで、歴史的な重要性を持つ」と力説しました。しかし、それは、日本を「海外で戦争する国」にするものであり、白書自身がうたう「憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならないとの基本理念」に真っ向から反していることは明らかです。

専守防衛明記するが

 集団的自衛権について、昨年の白書は「わが国が直接攻撃されていないにもかかわらず他国に加えられた武力攻撃を実力で阻止することは、憲法第9条のもとで許容される実力の行使の範囲を超えるものであり、許されない」と断言していましたが、今年の白書は一転、行使容認の閣議決定を詳しく紹介しています。

 一方で、「専守防衛」について「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使し、その態様も自衛のための必要最小限にとどめ」るという「憲法の精神に則(のっと)った受動的な防衛戦略の姿勢」と説明し、「わが国の防衛の基本的な方針」としています。

 閣議決定は、「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、…他国に対する武力攻撃が発生」した場合でも、「武力の行使」を認めたものです。「国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」といった条件が付いていても、「相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使」するという「専守防衛」から逸脱していることに変わりはありません。政府が「明白な危険」を勝手に解釈することが可能であり、自衛隊派兵が際限なく広がる危険があります。

 「他国に脅威を与えるような強大な軍事力を保持しない」との白書の記述も説得力はありません。集団的自衛権の行使は、他国に対する武力攻撃を「排除」できるだけの軍事力を保有することが前提だからです。実際、集団的自衛権をこれまで行使してきた国をみると、米国、旧ソ連、英国、フランスといった軍事大国です。すでに世界有数の軍事力を持つ日本は「軍事大国にならない」という約束をさらに形骸化させることになります。

 白書は「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵」についても「憲法上許されない」と述べています。ところが安倍首相は、武力行使にほかならない機雷掃海を中東のホルムズ海峡で行うことまで狙っています。閣議決定では他国部隊への支援で、戦闘が起こり得る地域への自衛隊派兵を可能にし、攻撃を受ければ反撃することも想定しています。

閣議決定の撤回こそ

 白書が矛盾した記述になるのは、従来の防衛政策に真っ向から反する集団的自衛権の行使を認めたにもかかわらず、反対世論を意識し、従来の政策と変わらないかのようにごまかそうとしているからです。

 日本の平和と安全を確かにするどころか、青年、国民の命まで危険にさらす歴史的な重大性を持つ閣議決定は、撤回しかありません。